外房のヒラマサキャスティング&ジギングを楽しむなら「春」に注目! 外房の「春」は秋と並び、多くの船長や常連アングラーがフォーカスする激アツシーズン。本記事ではマスターアングラーのひとり、椙尾和義さんの実釣を通し、春の外房、ヒラマサキャスティング攻略術を探ってみたい。
外房ヒラマサキャスティング&ジギングの魅力とは
▲ソルト用ジグやペンシル、ポッパーなどをリリース、コアなファンに熱い支持を得ているルアーメーカー、サプライズを主宰する椙尾和義さん。釣獲力の高さは各方面から折り紙付きだ。
はじめに本記事の主人公、椙尾和義さんについて紹介しておこう。椙尾さんはルアーメーカー「サプライズ」を主宰、オフショアのルアーフィッシングをメインに展開しているアングラーだ。
近年のメインターゲットはクロ&キハダを問わずのマグロ、 東京湾のタチウオ、相模湾のシイラ、カツオなどなど。太平洋側がメインフィールドで、年に数回は 遠征釣行にも出向く。外房ヒラマサとの付き合いは長く、近年は外房でのSLJ釣行も多くなっている。
外房ヒラマサの魅力は、やはり難度が高いところですね。
釣る人は釣る、という海で、腕の差がすごく出やすいフィールドです。そこは面白さのひとつでもあると思います。ちゃんとやれば答えてくれるけど、少しでもなにかが合わないと ダメっていうことが多い。それはキャスティングでもジギングでも変わらないと思います。
外房ヒラマサは釣り人からはブランド化されていたり、一目置かれていたりしますね。自分もサイズ関係なく釣れたら本当に嬉しいですし、釣れないときは1kg、2kgの可愛い魚でも、ありがとうってなります。
九州北部などに比べると狭い範囲しかできないですし、 時間も午前、午後と別れてしまうのであまり遠くには行けない。そういうこともあって、独特なフィールドだなと思いますね。
首都圏に近いフィールドならではの激戦区。攻め続けられるフィールドならではの難しさ、反面の面白さがあるのが外房だ。
▲外房沖と言えば北は太東沖、南は江見沖までを指すことが多い。全体的には浅く、広く根が点在する地形が多いのが特徴だ。
常連さんはポイントごとの攻め方、水深などを知っているので、やはりチャンスは増えると思います。探見丸を使ったりもする手もあるので、より細かく情報を集めることも可能ですし。
経験で得られる情報以外にも潮の流れを把握して、飛んでいるトリを見て、といったように目で見える情報もプラスしていくことも大切です。やり込み要素はたくさんあります。そうしないとなかなかヒラマサの顔を見ることは出来ないですからね。
技術、テクニックを向上させることによって、よりヒラマサに近づくことは可能。しかし、それだけでは足りないのが外房ヒラマサでもある。
潮が変わると状況がガラッと変わる、こんなことは外房ではよくある話です。
でも、 魚は釣りに行かないと釣れません。希望を持って出掛けて、ベストを尽くしてやり倒すことが大事ですよね。
根性論じゃないですけど、 しっかり基本に忠実にやり続けることはすごく大切だと思います。
▲大型船の両舷に乗船して楽しむのが外房スタイル。ドテラ流しを基本に片舷でジギング、反対側でキャスティングを行うことが多い。
外房ヒラマサキャスティングは20kgオーバーが狙える海
外房では1回の出船でキャスティングとジギングを同時に楽しむことができる。椙尾さんにとって、外房ヒラマサの、とりわけキャスティングの魅力とはどこにあるのだろうか?
ジギングで釣れない、ということはありませんが、大型のヒラマサはキャスティングに分があると思います。やはりキャスティングの魅力はサイズです。
関東に住んでいる人にとっては身近なフィールド。そんな身近な海で 20kgオーバーはもちろん、40kgオーバーまで狙えるというのは魅力ですよね。世界記録のヒラマサが釣れている海ですから。
他のヒラマサフィールドにくらべて繊細な攻略が求められるとも言われる。
そういう部分もありますが、決めつけ過ぎには注意したいですね。
たとえばプラグのサイズなどは外房では16~18cmが基本とされていたりしますが、僕自身はそのときどきのベイトの種類によって変えるようにしています。いつも12cmから20cmくらいまで用意しています。
エサの種類で効果的なルアーサイズは全然違うと思いますし、デカいベイトが入っていれば大きいプラグを使うほうが有効だと思います。反対にスモールベイトパターンのときとかは小さいプラグしか喰わないときもあります。 そこは決めつけずに行こうかなと思っています。
▲取材日は前日まで気配濃厚だったサンパク、ワラサがいまひとつ。椙尾さんもジギングでは釣果が得られなかった。
春シーズンの外房ヒラマサに挑む
取材釣行を敢行したのは4月中旬。宏昌丸の吉清良輔船長によれば、冬の海から春の海への移行期で、暖かい潮が入ってきてにわかに活気づいてきている、とのことだった。
当地でサンパクと呼ばれている2kgクラスのブリ、ワラサの数が増え、ヒラマサは大小まじりでキャッチされていた。20kgクラスと思われるヒット、バラシも多発していたが、まだ春本番とまでは言えない。良かったり、悪かったりを繰り返している、という状況だった。
サンパク、ワラサが釣れているみたいなので、まずはこれをジギングで抑えておきたいですね。
季節が進行して、多少暖かい潮も入ってきている感じですよね。サンパク、ワラサだけでなくショゴやシイラも釣れたりしているので期待したいですね。
実釣は午前、午後を通しての乗船。ワンデイでのトライだった。水深60mラインでのジギング。サンパク、ワラサ狙いからスタートした。
宏昌丸からのアドバイスでは、潮がとても速いので200g以上のジグを用意。ときには60mラインでも300gが欲しくなるほど潮が速いという前情報だった。
しかし、取材日は海が大きく変わっていた。水深60mのポイントで150gのジグを使っても何回もボトムタッチが出来た。それほど潮の流れは緩くなっていた。船中ノーヒット。沈黙の時間が流れ続けた。
▲直進性に優れ、たわみを低減。感度にも優れるアバニ ジギングPE10×10 マックスパワーPE X9は、外房の速潮下でその威力を発揮することが期待されたが…。
これはヤバい? そんな雰囲気に包まれた船上で最初にロッドを曲げたのはキャスティングを繰り返していた椙尾さんだった。小型ではあったが上がってきたのは待望のヒラマサ。船中を活気づけるには十分な1本だった。
微妙にスローシンキング、水面に出切らないプロトタイプの15cmのペンシルを使って、水面直下を引いていました。
1回チェイスがあって、次のキャストでドスンっとヒット。全然、キャスティングに出るような雰囲気ではなかったんですけどね。
続けざまにジギングでもサンパクがヒット。吉清船長でさえ「来たの?」と思ったというくらいの、わずかなチャンスだった。午前船ではこの一瞬のチャンスを生かした者だけが魚を手にすることができた。
▲午前船での貴重な1本を仕留めた椙尾さん。わずかなチャンスをしっかりモノにしたのはさすが!
ヒラマサのキャスティング用ラインに求めるのは強さ、耐久性、トラブルレス
数日間好調だった状況が悪い方向へと変わっている。午前の乗船者は誰もがそう感じたことだろう。午後も厳しい釣りになるかも知れない。しかし、急に好転するかも知れない。外房には天国も地獄も同じ日に存在している。午後船でもスタートから午前と同様の静かな時間が流れ続けた。
キャストを繰り返す椙尾さんに、ヒラマサキャスティングでラインに求める性能について聞いてみた。
強度はもちろんですが、キャスト回数が多い釣りなので、 耐久性はとくに重視します。
長時間ファイトに求められるような擦れ、摩擦熱に強い耐久性ではなく、キャストでバタバタ叩かれ続けるような使い方に対する耐久性です。
トラブルレス性能も重要。具体的にはガイドへの絡みのなさですね。リーダーは強さに加えてノットの締めやすさと柔らかさを重視しています。
以上のような条件をクリアするメインラインとして、椙尾さんが実際にヒラマサキャスティングで使っているのはアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]だ。
▲椙尾さんはGTやヒラマサキャスティングのようにキャスト回数が多い反面、ファイトタイムがそれほど長くならない釣りではアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]を多用している。
発売当初から使っているのでもう10年以上、よく覚えていないくらい前から使わせてもらっています。
ヒラマサ、GT、40kg未満までのマグロといった短時間勝負できる魚にはアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]、大型のマグロにはアバニ キャスティングPE Si-X X8と使い分けています。
SMPはとにかく強い。色落ちしないところも気に入っています。かなり長期間使っても色が変わりにくい。ケバ立ちも少ないと思います。5号を使用して130kgのクロカワカジキも釣っています。
魚体に対してはかなりのライトタックルだったので何回も走られましたが、それでも十分に耐えてくれました。こうした経験を重ねながら長年使っているのでとても信頼しているラインです。ノットも組みやすいですよ。
▲外房のヒラマサキャスティングではアンダーハンドキャストが基本となる。トリッキーなキャストになりがちなのでメインラインの傷みには通常以上に配慮している、とは椙尾さん。
外房ではアンダーハンドキャストが求められる。船の四隅ではオーバーヘッドキャスト、サイドハンドキャストが可能なときもあるが、基本的にはアンダーハンドキャストがレギュレーションと考えてよい。アンダーならではの注意点もある、とは椙尾さんだ。
アンダーハンドキャストだと、動作がクイックになったり、スピードが急に変わったりと、トリッキーなキャストになりやすいのが特徴です。その分、オーバーヘッドキャストに比べてラインが傷みやすくなる気がします。
対応策のひとつとして僕はメンテナンススプレー『PEにシュ!』を使っています。スプールに巻いたラインに吹くのはもちろん、1番ガイドなどに吹くのもトラブル防止に効果的だと思います。
できれば、前日などに吹いて乾かしてから持っていくのがおすすめです。リールのハンドルに付くと滑りやすくなってしまうので、ラインに近づけてシュッと吹くのが大切です。
現場で吹くと取れやすいですし、デッキなどにかかってしまうとすごく滑りやすいですから注意してもらいたいですね。
急変した海況、チャンスを逃さずに大マサをキャッチ!
ストップフィッシングまで1時間ちょっと、というタイミングで、突如、海が表情を変えた。潮の流れと風が逆、という状況は変わらなかったが、潮の流れが速くなり船が風に逆らってグイグイと流れ出した。
吉清船長からもチャンス到来と同時にラインチェック、ノットチェックを促すアナウンスが入った。直後、派手な水飛沫とともにロッドを曲げたのは椙尾さんだった。
▲Mパワーのロッドで大マサと渡り合う椙尾さん。タックル全体の能力を最大限に生かしたファイトを展開するところはさすが!のひと言。
潮と風が逆でやりづらかったんですが、正面に投げてしっかりルアーが水を噛むように考えながら引いてきました。しっかり投げて、しっかり泳ぐように、ミスアクションがないようにと集中してキャストしていました。
一回、なんかモアっという感じでチェイスがあって、あっ!と思ったらヒットしました。たぶん別の魚が喰いに来てヒットしたんでしょう。近くを流していた船もヒットさせていたりと雰囲気がよくなってきていました。
根の周りをヒラマサが小さな群れになって捕食回遊している感じ。トビウオも少し跳ねていました。朝に釣ったときもトビウオが跳ねていたので、チャンス!と思っていましたね。
やり取りに危なさは感じなかったが、それでも少しの時間を要した。それだけの相手だった。ミヨシからオオドモまで移動してネットに収めたヒラマサは船上計測で17~18kgの大マサだった。
▲リリースするため揺れる船上のみでの計測となったが結果は17~18kg。精悍なスプリンター、ヒラマサの魚体は美しかった。
▲取材日、椙尾さんが2匹のヒラマサを仕留めたのはいずれもプロトモデルのシンキングペンシル。製品化は?気になるところだ。
ヒットしたときに自信を持って戦える状態にあることが大切
終日キャストし続けて、ほとんどノーバイト。そして最後にドンッと来る魚がデカい。まさに痺れるような展開の一日だった。しかし、外房では常にある現実だ。タックルをセットしたときではない。ヒットしたときに自信を持って戦える状態にあるのか?ここがとても重要だ。
椙尾さんは1日を通して何か違和感があれば、ちょっとしたケバ立ちなどがあれば、迷うことなくノットを組み直した。小さなヒラマサを釣った後もすぐにノットをチェック、大丈夫と確信すればリーダー先端をカットしてルアーを結び直した。
いつ20kgオーバーのヒラマサがヒットしても大丈夫、と胸を張れる状態で釣りを継続する。これが外房で大マサを「キャッチ」するために求められる条件だ。「ヒット」させるためではない。「キャッチ」するための条件だ。
椙尾さん使用の外房ヒラマサキャスティングタックル
椙尾さんが外房ヒラマサ用に使用しているキャスティングタックルは下記のとおり。
タックル | 詳細 |
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ロッド | SHIMANO/ オシアプラッガー フレックスドライブS83MH、S83M オシアプラッガー リミテッドS83M オシアプラッガー ライトコンセプトS76ML |
リール | SHIMANO/ステラSW&ツインパワー SW14000XG、10000HG、8000HG |
メインライン | 【VARIVAS】 アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー] 6号、5号、4号 |
リーダー | 【VARIVAS】 プロトモデル30号、40号 オーシャンレコードショックリーダー80LB |
ルアー | プロトモデル シンキングペンシル150mm、185mm、スギペン フローティング160、185、別注平政145F、160F、190F、ヘッドディップ140F、175F |
▲ジギング、キャスティングともに準備が必要。椙尾さんは取材日、5セットを持参していた。
▲これと決めつけることなく、幅広いサイズのプラグを用意、ベイトの種類や状況によって使い分けていくのが椙尾さん流だ。
外房で夢の大マサを求めるならベストを尽くすこと
夢の大マサを求めて外房へと向かうなら、ぜひベストを尽くしていただきたい。
「キャッチ」するためにベストと思えるライン選びを前提に、船上でのたゆまぬラインチェックとこまめなラインシステムの作り直し、ノットの結び替えが夢を叶えてくれる。地味にも見えるこうした所作こそが、膝に乗せるに値するヒラマサを手にすることにつながっている。