伊勢湾サワラキャスティングが盛り上がっている。
サゴシの数釣りが楽しめたり、良型のサワラが何本も登場したり。近年流行中のブレードジギングだけでなく、ハンティングのようなミノーキャスティングゲームをたっぷり楽しめたりもする。
ここでは多彩な魅力を秘めた伊勢湾のサワラに挑戦した、上屋敷隆さんの釣りをレポートする。
伊勢湾サワラキャスティングとは?

▲四日市を拠点とする人気船「シーチャレンジャー」。矢野広樹船長は自らもキハダやクロマグロを追いかける、熱きオフショアアングラーだ。
人気の伊勢湾サワラキャスティング、まずは実釣取材でお世話になった人気船、シーチャレンジャーの矢野広樹船長に全体像を聞いた。

シーチャレンジャーの出港地は四日市です。
マリーナから航程1時間ほどで狙える、いわゆる伊勢湾奥エリアを得意としています。
三重県側では南は鈴鹿沖、北は四日市港内、愛知県側では知多半島船先端から名古屋港に向けてのエリアが中心です。
サワラキャスティングで攻める水深の目安としては最大で30m。
伊勢湾自体が遠浅なので、5mくらいのシャローエリアを狙うことも多いですが 、平均すると10mくらいになると思います。


▲写真は今回サポート役を務めてくれた、ローカルアングラーであり上屋敷さんの友人でもある小平直樹さんが2021年にキャッチした6.74kgのサワラ。こんなビッグサイズの期待が高まるのは春と晩秋だ。



サワラキャスティングのシーズンは秋と春。
春はサイズが良いですが難しい。一番盛り上がるのは9月から12月初旬ぐらいまでのだいたい3か月半。
真冬は湾奥エリアからは抜けちゃって、伊勢湾のなかでも鳥羽沖の深い方に落ちてしまいます。この魚はジギングで狙うイメージですね。
秋の伊勢湾奥でのサイズ的な特徴としては、前半はサゴシサイズ、中盤から後半は出ればほぼサワラサイズという感じです。
ブリをメインとした青物もここ5年くらいでかなり増えています。今年はちょっと少ないんですけど、去年は10kgくらいのブリがかなり獲れました。
今年もハマチは多いんですけどね。これからに期待ですね。
伊勢湾サワラキャスティングの魅力


▲伊勢湾は基本的に浅い。フラットな海でナブラやトリヤマを見つけ、ランガンしていくキャスティングスタイルはとても人気が高い。
伊勢湾はミノーを使ったキャスティング、ジャーキングの印象が強いが?



近年はサワラ用タックルの進化もあるし、遊漁船もかなり増えました。
釣り方もミノーのジャーキングから沈めてのブレードジギングまで幅が広くなり、水深があるところも狙えるようになりました。
それでも伊勢湾のサワラキャスティングは、他のフィールドほどブレードジギングで狙う割合は多くないと思います。
とくにうちは小型船なので、なるべくミノーで楽しんでもらうようにしています。トリヤマがあればやはり行きたいですからね。
どうしてもサワラが浮かない日や魚探の反応に当てていくようなとき、水深が10m、20mというときは、ちょっとブレードジギングもやってみたら、という感じでは勧めています。


▲トリヤマを追い、トリヤマに翻弄される。サワラキャスティングの醍醐味のひとつでもある。



サワラはライトタックルで釣れるのが魅力。よく引いて、よくバレて、 たまに切れる。それで熱くなるって感じです。
ブレードジギングが登場したおかげで、見えない深場を狙うような釣りもできますしね。
食べて美味しいっていう点も大きな魅力でしょう。鳥羽の手前にある答志島で水揚げされた魚のうち、一定の基準を満たしたサワラは、「トロさわら」と呼ばれるブランドものです。
うちで釣っているエリアでも漁師が釣って答志島に持ち帰って水揚げしています。魚は同じですからね。
東京湾をホームとする上屋敷隆さんが伊勢湾に挑む!


▲東京湾、相模湾がサワラキャスティングでのホーム、と上屋敷さん。出来ればミノーをキャスト、ジャーキングして釣りたいという、根っからのサイトフィッシング好きだ。
今回、伊勢湾のサワラキャスティングに挑んだのは上屋敷隆さん。サワラキャスティングとしては東京湾、相模湾をホームとしている。



伊勢湾でサワラをやるのは初めてです。小平さんから伊勢湾のサワラ、面白いよ、という話は聞いていました。
3年ぐらい前からかな。うちのミノーやロッドを使ってくれたりして、これだけ釣れました、と画像を送ってくれたりしていました。
タイミングを合わせて行きたいなとは思っていたので、今回実現出来て嬉しいですね。
2日間で、出来ればハネを見つけて、ベイトを喰っているサワラに遭遇したいですね。
もし跳ねていれば、その近くでブラインドでもいいからミノーをキャストして 1匹釣りたいと思います。自分のサワラキャスティングは、そういうスタイルから始まりましたしね。
僕はこのフィールドについては全然詳しくないですけど、まだまだミノーキャスティング、ミノージャーキングが主流というイメージがあるところが嬉しいですね。


▲実釣取材では小さなトウゴロウイワシを追うサゴシが多かった。そうしたなかでもカタクチイワシを追う良型のサワラがいたことも事実だ。



近々の状況としては、東京湾と一緒でサゴシが多いらしい。ベイトも小さいトウゴロウイワシなどがメインで厳しい感じの情報です。
ただ、そのなかでもしっかりとしたサイズのカタクチイワシを喰っているサワラもいるみたいなので、うまくそこに当てたいですね。
ミヨシに張り付いて、しっかり偏光グラスして、船長だけに頼らず、 少しでも変化を見逃さないように釣っていこうと思っています。
上屋敷流・伊勢湾サワラキャスティング用タックル


▲上屋敷さんが伊勢湾用に用意したタックルセット。ミノーキャスティングに寄せたタックルセッティングが特徴だ。
伊勢湾サワラキャスティング用タックル、上屋敷さんがセレクトしたラインから紹介していこう。



ミノー用としてはアバニ キャスティングPEマックスパワーX8を使っています。
このラインはしなやかで扱いやすいのが特徴。何よりも見やすいホワイトカラーがお気に入りです。
25mごとにマーキングが入っている点もいいですよね。赤と紺色が交互に入っているので、距離感が分かりやすいんですよね。


▲ミノーキャスティング用にはアバニ キャスティングPEマックスパワーX8をセレクト。安定した強度と視認性の高いホワイトカラーがお気に入りだ。



シイラやカツオ狙いにも使っているので2号を一番よく使っています。
これ以上の太さになるとアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]を使いますが、2号までを使うライトなキャスティングゲームではこのラインにお世話になっています。
発売してからずっと使わせてもらっているので、20年以上使っていると思います。
とにかく強度が安定しています。変な切れ方をしたりしないし、トラブルもほとんどない。
今回は1.5号と2号を使っています。



アバニ キャスティングPEマックスパワーX8はルアーをイレギュラーに動かしてもトラブルが起きにくい。
もしエアノットが出来ても、いきなり引っ張ったりせず軽くほぐしていけば、するするとほどける。
キャスト回数が多かったり、風の影響を受けたり、激しいジャーキングを繰り返したりすると、 巻き始めで緩く巻き込んでしまうときがあるんですよね。
それで次のキャストのときに、フワッと出ちゃうことがある。そうしたときはトラブルが起きやすいから要注意です。
いくらラインが高性能でも釣り人側でしっかり注意しないと、絡まっちゃったりしますからね。


▲ブレードジギング用にはアバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9の1.5号をセレクト。上屋敷さんは水中でのたわみの少なさ、水切れの良さによる、ブレードジグの操作性の良さを高く評価している。



ブレードジギング用にはアバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9の1.5号を使っています。
このラインは斜め方向に水中に入っている状態での操作感がとても良いんです。すごく扱いやすいラインだと思います。
とにかく水切れが良い。潮流を受けてたるんでしまうと感度も鈍りますからね。
ブレードジギングには使いやすくておすすめできます。タチウオのジギングにも使いやすいと思いますよ。
リーダーはミノーキャスティング用にはナイロン製のオーシャンレコードショックリーダー、ブレードジギング用にはフロロカーボンショックリーダーをセットしています。


▲ミノー用にはオーシャンレコードショックリーダー、ブレードジグ用にはフロロカーボンショックリーダーをセットするのが上屋敷さんのフェイバリットだ。



用意したタックルは全部で4セット。
ミノーのキャスティング用が3セット。ブレードジギング用が1セットです。
ミノーキャスティング用のロッド2本は一緒で、もう1本は飛距離を出すために長いやつを1本忍ばせています。
サゴシはキャッチ成功! サワラは残念ながら…。


▲ファーストヒットはハマチ。狙えば釣れるけどいいですよね?という船長の問いに全員が即答でイエス! あくまでも狙いはサワラだ。
実釣は1日半。初日は日の出から日没まで。2日目は午前中だけのトライ。まずはローカルアングラー、小平直樹さんにミノーキャスティングの基本パターンをお聞きした。



ジャーキング系ミノー、ヘビーシンキングミノー、フローティングミノー、いずれのルアーであっても早めのリーリングで使っています。
僕の場合はアピール重視。
とくに注意していることは、ボイルを撃つときは変に動かさずストレートに引いてくること。リーダーを切られずにヒットに持ち込めるよう、アクションを入れるとしてもちょっとしたトゥイッチくらいにしています。
反対にブラインドで広範囲に釣るときには結構大きく動かして釣ることが多いですけどね。
とくにナブラ撃ちでは好スポットに入れば釣れることも多いので、とにかくピンポイントに入れることだけに集中したいですね。


▲初日、上屋敷さんは3本のサゴシをキャッチ。最後にキャッチしたのは良型のサゴシだが、やはりサワラと呼ぶには抵抗あり!?
小平さん、矢野船長にアドバイスを受けながらも得意のミノージャーキングを展開した上屋敷さん。事前情報の通り、スタートから小さなトウゴロウイワシを追うサゴシの気配が濃厚。なかなかヒットまでは持ち込めない状況が続いた。
それでも上屋敷さんはハマチのヒットに続き、なんとか1本目のサゴシをミノーのジャーキングでキャッチ成功。
それからは上屋敷さん、小平さんともにポツリポツリと数を重ねていくことが出来たが、残念ながらすべてがサゴシ。
日が傾きストップフィッシングが迫るなか、サイズアップを期待しキャストを続けた2人に、チャンスが到来した。
一気にサワラの活性が高まり、カタクチイワシを追い回すサワラのナブラがそこかしこに出た!
なんとかナブラを捉えることはできたが、2人ともに痛恨のラインブレイク!
無念のストップフィッシングとなってしまった。さらに釣行2日目は初日以上に難しい展開に…。
時間の限りキャストを続けたものの、ノーフィッシュに終わってしまった。


▲初日のクライマックス! 日没が迫ると一気にサワラの活性が上がった。上屋敷さん、小平さんともにヒットしたが、なんと2人ともルアーを呑まれてカットされてしまった。
伊勢湾での実釣を終えたアングラーたちの思い


▲上屋敷さんと小平さんの交流があって実現した今回の釣行。出会いはモルディブのGTゲーム。2人とも根っからのキャスティング好きだ。
伊勢湾サワラキャスティングへのチャレンジを終えた上屋敷さんに、率直な印象を尋ねた。



事前情報としては小さいトウゴロウイワシがメインベイトになっているとのことで、苦戦するなとは思ってはいました。
1日半釣りをするなかでサワラのチャンスといえる状況は非常に少なかったかな、という印象です。もう少し撃ち込める 機会があれば、もっと喰わせることができた気がします。
ただ、初日の夕方にサワラの活性が上がって、ベイトを喰い荒らす光景を見れましたし、ルアーを呑まれて切られもしました。
ワンチャンスを活かし切れなかったのが悔しいですね。



伊勢湾は地形的には東京湾と違って、だだっ広いフラットな地形が多いようで、そこに河川が流れ込んで、ベイトが溜まり、サワラも浅場に入り込んでいるイメージです。
そうすると、やはり表層、水面付近で喰うチャンスは必然的に増えるから、ミノーキャスティングで楽しめる状況が多いのかな、という印象はあります。
結構大きい魚もいるみたいなので、また機会を作ってしっかりサワラに照準を合わせて狙ってみたいですね。


▲小平直樹さんは、キャリアの長さと釣行日数の多さに裏付けされた豊富な経験、知識、テクニックを持つマスターアングラーだ。
2日間の実釣に同行し、サポート役を務めてくれた小平さんにも伺った。



これがサワラ釣り、っていう感じでした。しかも、悪い方の日に当たってしまいました。
反省点としては、とくに初日、サワラに照準を絞ったストロングスタイルを貫き切れなかった部分があります。
小さいベイトに翻弄されて小さいルアーを使ってしまうと元気なサゴシが先に喰ってきてしまうことがあったと思います。
そういう面では自らサワラのチャンスを潰しに行ったところもあると思うので、強い釣りをやり続けた方が良かったかな、と。
やはりビッグベイト=ビッグフィッシュという面はありますからね。ただ2日目は強い釣りを通しましたが気配がなく…。
でも、これがサワラ釣りですよね。
日ごとに状況が変わるのがサワラキャスティングの常。実際に釣行翌日にシーチャレンジャーに乗船した小平さんからサワラキャッチの報が連続して届いた。
全体的に状況は良い。
しかし、そうした状況下での上下は常にある。それを覚悟したうえで遭遇するザ・デイを夢見て、釣り人たちは伊勢湾に通い続けるのだろう。
空振りの次の日に大釣りがある。そしてその次の日には沈黙がある。それがサワラキャスティングなのだから。


▲翌日もシーチャレンジャーに乗船した小平さん。サワラ、キャッチしました!と送ってきてくれた画像がコレ。1日違うだけで天と地。これがサワラキャスティングだ。
上屋敷隆さんタックルデータ
上屋敷隆さんのタックルデータは以下のとおり。
ミノーキャスティング用
タックル | 詳細 |
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ロッド | マングローブスタジオ/ ブラックヘラクレス722S-L/TZ |
リール | シマノ/ ステラ4000MHG |
ライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPEマックスパワーX8 1.5号 |
リーダー | 【バリバス】 オーシャンレコードショックリーダー 35lb |
ルアー | マングローブスタジオ/ストライクジャーク120S マングローブスタジオ/アトゥーラ90、120 メガバス/X-80マグナム |
タックル | 詳細 |
---|---|
ロッド | マングローブスタジオ/ ブラックヘラクレス722S-L/TZ |
リール | シマノ/ ステラC5000XG |
ライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPEマックスパワーX8 2号 |
リーダー | 【バリバス】 オーシャンレコードショックリーダー 40lb |
ルアー | マングローブスタジオ/ストライクジャーク120S マングローブスタジオ/アトゥーラ90、120 メガバス/X-80マグナム |
ブレードジギング用
タックル | 詳細 |
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ロッド | マングローブスタジオ/ ライトジギングロッド6.6ftプロトモデル |
リール | シマノ/ ステラ4000M HG |
ライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 1.5号 |
リーダー | 【バリバス】 フロロカーボンショックリーダー 30lb |
ルアー | シャウト/ブレードショーテル40g、50g シマノ/メタルショットTG32g、40g シマノ/タングマンブレード40g、50g |


▲上屋敷さんセレクトのミノー。


▲上屋敷さんセレクトのブレードジグ。
小平直樹さんタックルデータ
小平直樹さんのタックルデータは以下のとおり。
ジャークベイト用
タックル | 詳細 |
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ロッド | メガバス/ 空海ガルプCKG-77MS |
リール | シマノ/ ステラ4000XG |
ライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPEマックスパワーX8 1.2号 |
リーダー | 【バリバス】 ナイロンショックリーダー 30lb |
ルアー | マングローブスタジオ/ストライクジャーク120S DUO/レアリス ジャークベイトSW LIMITED130S シマノ/サイレントアサシン120F |
ブレードジグ&ヘビーシンキングミノー用
タックル | 詳細 |
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ロッド | マングローブスタジオ/ ブラックヘラクレス722S-L/TZ |
リール | シマノ/ ツインパワー4000 XG |
ライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 1.2号 |
リーダー | 【バリバス】 フロロカーボンショックリーダー 30lb |
ルアー | ジャクソン/ ピンテールサゴシチューン |
ブレードジギング用
タックル | 詳細 |
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ロッド | シマノ/ グラップラー タイプ ブレードS66-0 |
リール | シマノ/ ステラSW5000XG |
ライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 1.5号 |
リーダー | 【バリバス】 フロロカーボンショックリーダー 30lb |
ルアー | コーモラン/メタルマジック D-CRAW/デイビー D-CRAW/己ジグショート |


▲小平さんセレクトのジャーキング用ミノー。


▲小平さんセレクトのブレードジグ。
取材協力
■四日市「シーチャレンジャー」(090-3556-7425)