サンライズ・田代誠一郎が語る玄界灘ヒラマサゲームのいま、そしてこれから

右肩上がりの人気を誇りながら、成熟の度合いを増してきた玄界灘のヒラマサゲーム。サンライズの田代誠一郎は常に先頭に立ち、黎明期からシーンを牽引し続けてきたフロントランナーだ。

2023年になっても田代はその歩みを止めない。それどころか加速しているようにも見える。そんな田代にいまの、そしてこれからの玄界灘ヒラマサゲームを語ってもらった。

▲撮影釣行でも見事に20kgオーバーをキャッチした田代。しかし、いつでも出会える簡単な相手ではないのも現実だ。

目次

2023年、20kgを超えるようなヒラマサがこれまで以上にキャッチされている印象ですが、いかがでしょうか?

田代誠一郎

僕は1、2月を冬、3、4、5月初旬までを春と捉えていますが、3月以降、春に関しては大型が多く、例年よりも20kgオーバーのキャッチ率が高い気はしますね。

うちでは3月下旬までで20kgオーバーを28本キャッチしています。例年であれば1年で15~25本くらいというのが平均ですからたしかに数は多いと思います。

ただし、ムラがあるのも特徴でした。デカイ魚の群れがいるときにバタバタっと釣れている印象。翌日はゼロとかは普通。2日間で20kgオーバーが5本出たときもありました。これまで、そういう釣れ方はあまりなかったかと思いますね。

どのような状況で20kgオーバーがヒットしてくることが多かったんですか?

田代誠一郎

とくに3月中はナブラが出る状態での釣りが多かったですね。イワシナブラ、ボラナブラが中心。海の中が活気づいているような状況で大型をキャッチできることが多かった。

例年、春はヒラマサがいろいろなものを捕食している傾向があります。イワシ以外にもサンマ、サヨリ、マダイ、クラゲなどなど。本当にいろいろです。

今年に特徴的なことと言えばボラナブラでしょうね。例年、春はボラはあまり見ないんです。でも今年は大きいボラが捕食されていたから大型プラグへの反応がよかったですね。

▲マイワシやボラなど大型のベイトフィッシュ中心のナブラ撃ちが多かった2023春シーズン。大型ヒラマサを獲りやすい状況も多かったようだ。

田代誠一郎

くわえて今年はマイワシがすごく多い。いつもはカタクチイワシやウルメが中心で、マイワシがこれだけいるのは久しぶりです。

サイズ的に大きいマイワシとボラが多かったので、大きめのルアー、太いラインで勝負できる状況が多かった。このことが20kgオーバーのキャッチ率に影響していると考えています。

ほかにもいろいろなことが進化していることが、大型ヒラマサのキャッチ率を上げているのではないかと思います。

いろいろなことが進化しているとは具体的にどんなことですか?

田代誠一郎

本当にすべてが進化していますが、なかでもタックルの進化が目覚ましいですね。

ロッドに関しては、軽さ、飛距離、アクション、ファイトと4つの要素はハイレベルで兼ねそろえたものが多くなってきました。リールもハイギア、ローギアともにドラグ性能や巻きの軽さは本当に凄い。キャストトラブルも少なくなって、本当の意味の最高クラスになっている印象です。

ルアーの進化も凄いですよ。攻略困難な状況にも対応するべく多種多様のルアーが出てきています。新しい世界が広がることに期待してしまいますね。

▲タックル、テクニック、アングラーの意識…、すべてがレベルアップしてヒラマサシーンが進化している。

田代誠一郎

タックルのなかでも、とくに目立った進化を遂げているのはラインだと思います。まず、飛距離が以前より出せるようになりました。

具体的にはアバニ キャスティングPE SMP ヒラマサチューン X8(以下、ヒラマサチューン)を使うことで僕自身は飛距離を伸ばせているし、お客さんでも伸ばしている人が多いです。飛距離にこだわっている人は使ってみて飛距離が伸びることを実感してもらえていると思います。

ライントラブルが少なくなったのでチャンスタイムも増えていると思います。ガイド絡みやダンゴ(エアノット)も少なくなっています。

僕が使っている分には本当に何も問題はないです。魚はしっかりキャッチできているし。大型のヒラマサは僕自身で40kgをはじめ何本もキャッチしています。紫色も格好いいですしね。

▲良型ヒラマサを1本キャッチしたり、気になるところがあったら、すぐにシステムを組み直す田代。繊細な配慮が大型キャッチを確実にする。

田代誠一郎

ライントラブルだらけでずっとシステムばかり組んでいる、という人が意外に多いんです。こうしたトラブルが少なくなったことは直接的に釣果を押し上げていると思います。ここ!というタイミングでルアーをキャストできることにつながっていますからね。
 
通常通りに使ってもらえば、なんのトラブルもなく大型ヒラマサがキャッチできていると思います。飛距離が伸びたかどうかは個人差もあるし、耐久性がアップしたかなどもいろいろな人がいろいろな使い方をしているのでまだまだ検証の余地があります。

でもはっきり言えることは多くの大型ヒラマサが実際にキャッチされていること。だからOKだろう、という感じですね。結果がすべてを物語っていますね。

僕の中でラインはかなり大事な存在。ロッドがよくても、リールがよくても、よく釣れるルアーであっても、強靭な体があってもラインが切れたらすべて終わりになってしまう。これは常々、お客さんにも伝えていることですけどね。

▲田代とバリバスがタッグを組んで生み出したヒラマサチューン。リリースから約2年、その真価が各地のフィールドで存分に発揮されている。

100点満点ということでよろしいでしょうか?

田代誠一郎

いやいや、まだ先は分からないですよ。現時点ですべてのアングラーが完全に満足しているわけではないと思います。これから改良点が出てくるかもしれない。

そういった点をさらに見つけて、よりよいラインを生み出していけたら、と思いますね。

ユーザーにラインに関しての使用上のアドバイスなどはありますか?

田代誠一郎

すべての方に同じアドバイス、というのは難しい部分もあります。なぜなら、どのタイミングでラインを巻き替えたらいいのか、ラインシステムを組み直したらいいのかは個人差があるからです。

人によって投げ方が違うし、投げるスピードも違う。意識の違いというか性格の違いもあります。半日で不安になって組み直す人がいれば、2日間そのまま通してしまう人もいますからね。

ただスプールに巻き込む形状には注意してほしいですね。ベストなテーパーとしてはまっすぐ。形状さえしっかりしていれば多少巻き量が多くてもトラブルにはなりにくい。逆に形状が悪ければ巻き込む量が少なくてもトラブルにつながりやすい。要注意ですね。

▲ヒラマサゲームにおいてキャスティングは非常に重要。飛距離はもちろん、トラブルなく快適に投げ続けるため、タックルにはさまざまな要求が課せられる。

田代誠一郎

軽いルアーを使うときも注意したいですね。

ヘビータックルで軽いルアーを使うとうまく飛んでいきません。初速は速いけれど重みがないので、空振りみたいな、空を切っているようなキャストになりがちです。

ロッドもブレます。それがガイド絡みにつながりやすい。重いルアーのほうが安定してラインを引き出してくれますから。

結論的にはバランス。タックルバランスには注意してほしいですね。バランスが取れていればトラブルにはなりにくいですから。

▲リリース直前、20kgクラスを慈しむように抱く田代。どの瞬間を切り取ってもヒラマサ愛に溢れている。

タックル以外の進化についてはいかがでしょうか?

田代誠一郎

アングラーの意識はすごく上がっていると思います。ヒラマサゲームがスタートしてからそれなりに時間が経っているので、慣れてきたこともあるんじゃないですかね。

たとえばスプールへのラインの巻き形状。これまで気にしなかったゆえにいろいろなトラブルが起こっていましたが、近年は調節する人が増えています。ラインシステムにしても劣化を気にして何回も組み直す人が増えてきました。
 
大きなヒラマサはワンチャンス、ということを意識するようになったのでは、と思います。実際、チャンスはそれほど多くないですからね。バイトしてきた魚はラインブレイクしないでしっかり取りたい、という高い意識のアングラーが増えた気がします。僕のガイドとしての獲らせたい気持ちとアングラーの獲りたい気持ちが一緒になることが多くなっています。以前はチグハグなときもあったんですけどね。
 
SNSの写真に上がっている大きなヒラマサを獲りたい! という気持ちを持ったアングラーも増えています。極端なことを言えばSNSに載せるためのヒラマサを釣りたい、というくらい(笑)。大きなヒラマサをキャッチするためには何をすればいいのか、という情報も多い。みなさんよく勉強していますよ。
 
これまでヒラマサゲームをやったことがあってもなくても、自分のできることはしっかりやっておこう、という意識の人が増えています。たとえばドラグテンションなどに関しても変なミスが少なくなった気がします。上手な方が多くなったと思いますね。

▲大型ヒラマサのチャンスはとても少ない。まぐれでヒットしても、まぐれではなかなかキャッチできない。そうした事実を理解しているアングラーが増えている。

2023年2月、サンライズの船が新しくなりました。いままで以上に大型になり、安全性や快適性が格段に向上した「新海Ⅲ」。どのような思いで造られたのですか?

▲2023年の2月に就航した「新海Ⅲ」。全長72ft(約22m)、全幅4.5m。「新海Ⅱ」に比べ、長さが3m、幅が70cm長くなり、より安全、快適な釣りを楽しめるようになった。

田代誠一郎

玄界灘のヒラマサゲームでは少し荒れ気味の日によく釣れることが多いのが特徴です。潮波の中を流すことも普通なので、船が揺れることが前提の釣りになってきます。

船体が大きくなることでより安全な航海ができますし、快適さの提供にもつながると考えています。より安全、快適な釣りを楽しめるように、これまで以上の大型船にしたいと思っていましたので、実現できて満足していますね。

▲ベストポイントでのベストタイミング、そしてヒラマサが高活性のときはラフコンディションであることが多い。大型船のアドバンテージは計り知れない。

▲遊漁船では類まれな広さと快適さを誇る「新海Ⅲ」のキャビン。気のおけない仲間との釣行は最高の時間となるはずだ。

田代誠一郎

広い船で3、4日間にかけて7~8人で一緒に過ごすと、おのずと一体感も生まれてくると思います。単なる釣りというよりも旅に近いところがあると思いますね。

釣れた、やった、デカい、という声はもちろん嬉しいです。でもそれ以上に帰るときに「あ~あ、現実の世界に戻らなければいけないな」という声をもらったりするとすごく嬉しかったりしますね。船の中で生活すること自体が非現実的なことですよね。慣れない人にとって船の生活には不安と緊張もあると思います。

でも、楽しかったと言って帰ってもらえることが多いので、いまのところは安心しています。まだ少ししか時間が経っていないので早いかも知れませんが、船を大きくして良かったなあと思っています。お客さんに喜んでいただけていると実感できていますので。

常連さんも多いお客さんに喜んでいただけているということは、新艇になったことでよりガイド全体の質も上がっているということだと思います。田代さんがガイドをするうえで一番大切にしていることは何ですか?

田代誠一郎

安全です。これを一番に心掛けていますね。釣果よりも何よりも優先しています。

だから失礼を承知で結構厳しく言うこともありますよ。たとえば船の後ろのデッキの外で小用しないでください、とか、シケているときにベッドルームの方に行かないでください、とか。

うるさいな、と思われることがあるかもしれませんが、ケガしたらすぐに帰らなければいけません。ましてや海に落ちたら釣りどころではありませんからね。

▲最も大切にしていることは?との質問に「安全」と即答した田代。土台が万全だからこそアングラーは安心して釣りに集中できる。

黎明期から玄界灘のヒラマサゲームを牽引してきた田代さん。これからのヒラマサゲームをどのように展開していきたいと思っていますか?

田代誠一郎

玄界灘でヒラマサゲームを楽しませてくれる船はとても多くなっており、敷居が高い釣りではなくなっていると思っています。

反面、フィールドに与えるプレッシャーが増えているとも思いますね。キャッチした魚に関しては、たとえば食べる分だけ持って帰るとか、一定のルールを作って守っていかなければといけないと思います。

これだけの船がやっているのですから魚が減るのは早いでしょうし、スレてくるのも確かだと思いますからね。

▲ただ釣るだけでは…、という時代になっている。より永く楽しむにはリリースなど、一定のルールが必要不可欠だ。

▲キャッチしたら即、ヒラマサの口にホースを突っ込んで放水、蘇生をはかる。魚のケアには細心の注意を払っている。

田代誠一郎

リリースするならしっかりケアをして逃がしてあげてほしいと思います。うちでは可能な限り元気で海に帰ってもらえるように努力してきましたし、これからもやっていきます。

これを多くの船、できれば全船で、みんなの意識としてやっていけたら、と思います。そうなるための発信は続けていきたいです。必ずしも自分がベストなことをやっているかは分かりませんが、ベストと思えることを続けていきたいと思っています。

タグ&リリースをした魚が採捕されると、リリースした魚はしっかり生きているということが分かります。そうすればリリースについての発信にも説得力が増してくると思います。

そんなにすぐ大きくなるんだったら逃がしておけば20kgを超えちゃうな、なんてことも知ってもらえると嬉しいです。そうやって1匹1匹を大事にしていきたいですよね。

▲データを取って、タグを打ち込みリリース。いまは興味が優先というタグ&リリースだが、将来はヒラマサの生態の把握に大きく貢献するかもしれない。

田代誠一郎

一例ですが、玄界灘の生月島近くでタグ&リリースしたヒラマサが韓国の済州島で採捕されことがあります。これには感慨深いものがありました。

海はつながっているんだから当たり前といえばそれまでですけど、おそらく中国とかにも行っていると思います。単純に凄いなあと思いましたね。

自分がリリースした魚がどこまで行っているのか。タグ&リリースに関しては、いまはこの興味が大きいですね。

夢があるなあ、と思っています。いろいろ知りたくて勝手にやっている、という感じですけどね(笑)。でも、その結果が何かにつながるかも知れないという期待もあります。

最近はお客さんも船長たちもリリースに対する意識はとても高いと思います。船長も若い人がすごく増えていますし。20代半ばから30代の船長も多く、その世代はリリースに抵抗がない人が多い。とてもいいことかなと思いますね。

▲大型ヒラマサをキャッチすると嬉しさ半分、申し訳なさ半分という表情を見せる田代。どちらかといえば10kg以下のほうが本気で喜んでいるように見える。

リリースの定着傾向にも見られるように、成熟の度合いをより深めている玄界灘のヒラマサゲーム。2023年の春は大型のキャッチにも湧いています。反面で20kgを超えなければ胸を張れない、という風潮もあるように思います。

田代誠一郎

20kgオーバー、30kgオーバーがそこかしこでキャッチされています。実際に釣ったことがある人は少ないとは思いますけど、SNSなどで見慣れてしまっている感があるのも確かです。

だからといって、自分が釣った魚が8kg、10kgくらいだったときに「なんだ、こんなサイズか」という感じにはなってほしくないですね。8kgでも10kgでも立派なヒラマサじゃないですか。

釣果がすべてではない。そういった意識を大切にしてほしい、ということを伝えていければ嬉しいですね。

だからこそ、うちでは旅なんです。自分自身、釣ったヒラマサの大きさが何kgでも楽しい。釣果だけではない部分も含めて楽しんでほしいな、と思っています。

もちろん全然、釣れなかったらちょっと悲しいですけどね。こうしたことが一番大事かな、と考えています。

ヒラマサゲームを取り巻くすべてを丸ごと楽しんでほしいということでしょうか?

田代誠一郎

1匹の価値を高める、と言葉に出すのは簡単です。でも、これは個々のアングラー次第、それぞれの価値観によって異なってくることでもあります。

どうしても大型を求めてしまうのもしょうがない。でも、いつまでもこの釣りを楽しんでいだきたたいし、自分も楽しみたいです。

なぜなら自分がヒラマサという魚に出会って、これほど充実した日々を過ごせるようになるとは、この釣りをスタートした17、18年前には思ってもいなかったからです。

ヒラマサを追い続けてきただけで、多くのお客さんと知り合えました。あらためて凄い魚だなと思います。それぞれのお客さんがヒラマサと出会って、それぞれに受けるインパクトは異なると思います。

ヒラマサと付き合っていくにしたがって趣味の世界が変わるし、もしかしたら仕事になってしまう人もいるかもしれません。そんな素晴らしい力を持ったヒラマサという魚をみんなで大事にして、みんなで永く楽しんでいけるといいですよね。

▲1日の釣りが終わり、船が走り出すと一末の寂しさが訪れる。いつまでもヒラマサゲームを楽しむためには、我々、釣り人の努力も大切な時代になっている。

田代誠一郎の玄界灘ヒラマサキャスティング基本タックル2023

最後に、田代誠一郎さんが使用している基本的なヒラマサキャスティングタックルデータをご紹介いたします。ヒラマサをターゲットにされる際の参考になれば幸いです。

10号タックル (シャローエリアでのガチンコファイトを前提としたヘビータックル)

タックル詳細
ロッド SHIMANO/オシアフレックス エナジーS710XH
リールSHIMANO/ステラ 14000XG
メインライン 【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE
SMP ヒラマサチューン X8
10号
リーダー 【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー 150LB.

8号タックル (登場機会がもっとも多い標準タックル)

タックル詳細
ロッドSHIMANO/オシアプラッガー リミテッドS83H
リールSHIMANO/ステラ 14000XG
メインライン【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE
SMP ヒラマサチューン X8
8号
リーダー【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー 150LB.

6号タックル(やや深場、狙っているサイズが小さめのときのタックル)

タックル詳細
ロッドSHIMANO/オシアプラッガー リミテッド
S83H、S83MH
リールSHIMANO/ステラ 14000XG
メインライン【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE
SMP ヒラマサチューン X8
6号
リーダー【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー 120LB.

4号タックル(50~70mといった水深のあるポイントで、小型のベイトを捕食している、15kgくらいまでのヒラマサを狙うときのタックル)

タックル詳細
ロッドSHIMANO/オシアプラッガー リミテッドS83M
リールSHIMANO/ステラ 8000H
メインライン【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE SMP
[スーパーマックスパワー]
X8
リーダー【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー 80LB.
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