相模湾でキハダキャスティングが楽しめるようになってから20年近くになる。その間、攻略パターンは年々アップデート、進化を続けている。
近年注目を集める冬季のサンマパターンもそのひとつ。ここでは池上日明さんの釣行を通して、キハダキャッチへの道を探ってみた。
相模湾のキハダキャスティング、サンマパターンとは?

▲キハダが跳ねる! トリの真下、ベストと思われるスポットに着水したルアーにヒット!? ナブラ撃ちのキャスティングゲームは非常にエキサイティングだ。
近年、関東近県の海域ではサンマパターンによるキハダマグロ(以降、キハダ)キャスティングが注目を集めている。

うちで冬場にサンマを喰っているキハダをしっかり狙い始めてから3年くらいになると思います。
年々、サンマの量が濃くなって、シーズンも長くなっている気がしますね。今季は12月初旬くらいからサンマパターンになってきました。
最初はイワシパターンと両方まじっていましたが、だんだんサンマだけになってきた感じです。
釣れるエリアもいろいろと変わっています。
(長井港「かねい丸」嘉山翔船長)


▲近年、盛り上がりを見せているサンマパターン。取材日、追われていたサンマは20~30cmクラスが中心だった。水面上に姿を現しているのは約20匹。この群れの後方には間違いなくキハダがいる。
サンマパターン最大の特徴は「足が速い」ことだろう。イワシがベイトのときのように広範囲で沸いたり、ダンゴに固められることはまずない。
直線的に逃げていくサンマを、サンマ同様に直線的に追うキハダを狙ってキャストするのが基本。ナブラ撃ちのキハダキャスティングのなかでもキャストチャンスが少ないのはサンマパターンの特徴のひとつでもある。
相模湾のキハダキャスティングは身近なビッグゲーム


▲東京湾、そして相模湾を舞台に5隻のボートでシーバス、サワラ、青物系をターゲットに楽しませてくれるアンリミテッド。池上日明さんはガイドであり経営者。アングラーとしても活躍中だ。
今回、サンマパターンのキハダキャスティングに挑戦したのは東京湾と相模湾で遊漁船「アンリミテッド」を経営、自らもガイドとして活躍する池上日明(イケガミ アキラ)さん。
多くのメーカーからサポートを受けるアングラーとしても多彩なメディアに登場している。



マグロはキハダ、クロマグロを問わず、プライベートでずっと続けている釣りで、大好きな釣りのひとつです。
乗合船で最初のキハダを釣ったのは、もう15年くらい前になると思います。
キハダキャスティングの面白さはやはりナブラ撃ちですね。これはクロも同じですけどね。
クロマグロみたいに規制が入っていないので、 釣行が中止になることがないのもいいですよね。
それに相模湾は首都圏のアングラーにとっては近場のフィールド。遠征しなくても行けるのは魅力です。
自分自身、キハダに関しては相模湾中心です。
サンマパターンの冬の魚はサイズがデカいのも魅力。50、60kgクラスも普通ですからね。
釣行取材は1月下旬の2日間に敢行した。関東エリアの冬季は強い西風に見舞われることも多い。予定通りに出船できれば、ファーストラックを得たと言っていいだろう。
お世話になったのは長井港「かねい丸」。池上さんが定期的にキハダキャスティングを楽しんでいる船でもある。はじめに今釣行に対する池上さんの意気込み、攻略プランを訊ねてみた。



サンマパターンって、とにかく足が速いんです。
キハダのサイズはいいですけど、ゴリゴリのヘビータックルというより、ある程度キャスティングが決まるようなタックルセッティングで挑むことが大切かな、と思っています。


▲船上では常に臨戦態勢。トリを探し、サンマを探し、キハダを探す。数少ないキャストチャンスをモノに出来るか否かが、釣果をはっきりと分けてしまう。



船長さんと息を合わせることも絶対に大事。
船長が投げてほしいタイミング、いまは我慢してというタイミングになるべく合わせるように心掛けています。
いいところに船をつけてもらえなかったら、なかなか釣れません。
そういったことを踏まえて、船長と息を合わせながら釣る、ということが大切だと思っています。
チームワークに加えるならあとはキャスティング。やはり技術が問われる釣りなので。
キハダの進行方向をしっかり読み、タイミングよく、精度よくキャストを決める。そこをしっかりやっていきたいですね。
サンマを追うキハダを捕えるためのトライ&エラー


▲釣行初日、早朝の海は賑わっていた。寒さを感じさせないほどの熱いキハダの捕食シーンが各所で展開されていた。
「いるいる!」「あそこ!あそこ!」
「10時(方向)で飛んだー」
釣行初日はポイントに到着した瞬間から船上はヒートアップした。そこかしこでサンマが追われ、キハダが飛沫を上げていた。僚船もせわしく走り回っていた。
しかし、気配が濃厚だからといって投げれば釣れる、というわけではもちろんない。
キャストチャンスは大きく分けて2つある。サンマを追うキハダの進行方向を狙ってキャストするパターン。もうひとつは単発で跳ねたキハダの近くでキャスト、ステイしてバイトを待ったり、誘い出しを試みるパターンだ。
前者はビシッとキャストが決まればヒットの確率は高い。後者はソナーを駆使してキハダの姿を捉えていたとしても、喰ってきたらラッキーという感覚が強いかもしれない。
サンマを追うキハダを見つけてはこれを追い、単発でキハダの跳ねを見つければその周囲にキャストした。あと少し届かなった。あと少し遅かった、を繰り返した。
サンマパターンでのキハダキャスティングはトライ&エラーを繰り返していくしかない。そのなかでチャンスが訪れた。



サンマが追われて水面からどんどん出ていて、ドルフィンみたいな感じで追われていました。
船長もソナーにキハダが映っているよ!って感じだったので、追いかけていたら一発バーンッて出たんです。
それでその先 10mぐらいにキャストしました。
ちょうど追われているサンマとクロスするような感じでルアーが入ってくれて、その瞬間ドカーンッて出たんですけどね。


▲我々の目には単発で跳ねているように映るキハダも、間違いなくサンマを捕食している。手を焼くパターンだが、射程内であれば一投の価値はある。
初日の最大のチャンスだった。「ツンッとルアーには触れた」と池上さん。ジジッという感じで少しドラグも鳴った。
息を吞む瞬間だったが、残念ながらフックには掛からなかった。その後も時間いっぱいトライ&エラーを繰り返したが、ストップフィッシングとなってしまった。



チャンスは1回ありましたから、悔しい気持ちが残りますね。
でも、やっていることは間違っていない。キハダキャスティングは1回のチャンスを獲るか獲らないかの釣りになってきますからね。
でも跳ねているだけでもよかったと思います。
何もないという日もキハダキャスティングでは普通なんで。ルアーにも触っていますし。
あとちょっとのところまでは追い詰められている感じです。



2日目はきっちり決めるしかないですね。明日は最初から今日握ったメインタックルですね。
朝一、チャンスが多かったんで、出船時間もちょっと早めていただきました。開始2時間が 勝負かなって思ってます。
持ち込んだタックルは3セット。メインはHクラスのロッドとPE6号


▲池上さんが船上に持参したタックルは3セット。キャスト性能を重視したPE6号、8号タックルで組み立てた。
池上さんが用意したタックルについて触れておこう。船上に持参したのは3セット。PE8号タックルが1セット、PE6号タックルが2セットだ。



キャスト精度高く、シュパッとキャストできるセッティングを考えて組みました。
冬のサンマパターンではキハダのサイズがいいので最低6号にしました。PE8号と18000番も念のため用意しました。
もし、イージーな感じだったら大きいリールで掛けた方が楽ですからね。
キャスティングの距離も欲しいので、ロッドはちょっと長め。
基本的にみなさん8ft前後だと思うんですけど、 ちょっと長めのロッドをチョイスして少しでも飛距離を稼ぐことを意識しました。
ペンデュラムキャストでしっかりとキャストするイメージです。


▲今回、池上さんが使用したルアー。ガチペン200、ガチペンスイマー180、ガチポップ トゥリーパ180(すべてブルーブルー)。プラウラ―190(ジャクソン)。
初日、一日釣りをした結果、メインタックルは絞り込めた、と池上さん。



メインタックルはPE6号、リールは14000XH、ロッドはHですね。
ルアーもいろいろ投げたんですけど、ウエイトがあまり重たいとキャストがブレちゃって。
ある程度フルスイングでしっかり安定させられる、フックを入れて70g前後のウエイトのルアーがいいかなって思っています。
ルアーもあまり変えないで。信じて投げようかなって思っています。具体的にはブルーブルーのガチペンスイマー。初日、唯一ヒットしたルアーです。
跳ねているサンマが同じぐらいのサイズで、色もばっちりでした。動きもいい感じ。
サンマパターンでの使い方では、誘い出しのときのように泡がどうとかっていう感じの要素の違いは大きくはないと思っています。
追われているサンマにどれだけ寄せられるかが分かれ目になると思います。そういう意味でもガチペンスイマーに行き着いたって感じです。
メインラインはアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8


▲キハダ、クロマグロともに池上さんが絶大な信頼を置いているメインラインは、アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8。
キハダキャスティングにおけるメインライン、池上さんのフェイバリットはアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8だ。



基本はSMPです。セレクトしているシンプルな理由として強いということは大前提として、コーティングが強いってことも大きいです。
また僕はキハダキャスティングではショートリーダーを使います。
GTとかヒラマサ狙いみたいにキャスティング回数が多いビッグゲームだったら、ノット部が指に当たるぐらいまでリーダーを長くとりますが、キハダの場合はキャスティング回数が少ないのでラインの傷みが少ないと考えているからです。
リーダーの長さはひとヒロ半、約2m強です。
タラシを出した状態でシステム部がトップガイドから3個目のガイドの間にあるくらいのイメージでセットしています。



ショートリーダーにしているのはなるべくノットのコブをガイドに当てたくない、という理由も大きいですね。
ノットのコブがガイドに当たるとキャストがブレるし、飛ばなくなるしでいいことはありません。
ナブラを撃つ場合、常に揺れる船上でキャストしなければいけないのでフルスイングできないことも多いんです。
テイクバック取ってキャスト、ということが出来ず、そのままスタンディングキャストしなければいけないことも多い。
そんな理由もあってショートリーダーにしているんですが、指をPEに掛けなければいけない点は気になります。
摩耗を考えると、やはりコーティングが強くて毛羽立ちにくいSMPの信頼性は高いですよね。
僕のスタイルにはすごく合っていると思います。


▲キャストトラブル、キャスト回数の少なさなどを考慮してショートリーダーを採用するのが池上さんのスタイル。それゆえに微妙に位置をずらしていくなど、キャスト時に指を掛けるメインラインの傷みには最大限の配慮をしている。
最もライトなMHのロッドを使用したPE6号タックルのメインラインにはアバニ キャスティングPEマックスパワーX8をセットしていた。



マックスパワーはしなやかなんですよね。
今回も、もしベイトが小さくて、小さいシンキングルアーしか通用しない感じだったら、柔らかくて、しなやかで飛ばしやすいラインがいいかなって思って、ライトなタックルにセットしておきました。
リーダーのポンド数も100lbに落としています。
サブタックルとしても、リールに巻いてあるラインの色を変えるとすごく分かりやすいんですよね。
ライトタックルは奥の手、といったところだろう。池上さんはラインに関しては一家言あり。品質の均一性、信頼性にはことのほかこだわっている。



信頼性ということでは、マックスパワーもSMPも切れたことがいままでにありません。
デカい魚を掛けてない、と言われたらそれまでですが(笑)、SMPの6号でクロマグロの80kgぐらいは普通に取れていますし、不安なこともなかったです。
意味分からないとこで切れるとか、リールに最初に巻き込んでいる途中にもう毛羽立っているとか、そういったことが一切ない。
そんなことがあったら使用するラインを変えるなどの対策をしているはずですが、これまでのところ何もトラブルがなく信頼して使い続けています。


▲ラインを信頼できなければ勝負は出来ない。やっと掛けたキハダ、ブレイクによってテンションが失われる絶望感を味わったことがあるアングラーなら、ライン選びの重要性がより理解できるはずだ。



これから始めたい、という方がライン選びをする際には、とにかくチャンスが少ない釣りということを意識してほしいですね。
ラインって価格がそのまま性能として出ちゃうんです。
価格の安いラインは、メーカー各社さんからいろいろ出ていると思いますけど、それがダメというわけではありません。
もしかしたら300mのうちの一部分、10mとかの強度は、価格が高い糸も安い糸も一緒かもしれない。
でもラインってムラが出やすい道具なんです。だからこそ品質の均一性が大切なんです。
価格の高いラインはちゃんと品質管理をしています。だから高いんですよ、っていうことを理解してほしいですね。
これから始める方でも、そこだけは注意してほしいですね。デカいキハダが掛かっても切れちゃったら意味ないですからね。


▲2025モデルとして登場予定のアバニ ショックリーダーSMPナイロン 。フラッグシップモデルとしての高い品質に注目が集まっている。
ショックリーダーは2025年の新製品となるアバニ ショックリーダーSMPナイロン を今釣行で初めて使用した。



これまではオーシャンレコードショックリーダーを使っていました。
オーシャンレコードショックリーダーにしても、今回のアバニ ショックリーダーSMPナイロン にしても、ノットが組みやすいことが一番いいですね。
まだ、1回の釣行だけなので多くのことは語れませんが、SMPナイロンはより伸びて粘るリーダーということなので、僕みたいにショートリーダーを使う人には、最後の魚の突っ込みなどに対して、ドラグを締めて勝負かけなければいけないときに頼れそうです。
伸びて耐えてくれるということなので、自分のスタイルには合っているかも知れませんね。


▲伸びて耐えるというアバニ ショックリーダーSMPナイロンの特性に、ショートリーダー派の池上さんは大きな期待を抱いていた。ちなみに池上さんのラインシステムはFGノット、スイベルとの結節はラーノットだ。
正確なキャストと飛距離、 船長さんとの息の合わせ方が一番大事
期待を込めて臨んだ2日目だったが、前日のような早朝の盛りあがりはなかった。それでも、「なんで喰わない!」というチャンスもあった。
しかし、残念ながらストップフィッシングまでにロッドを曲げるまでには至らなかった。


▲ライトなオフショアゲームのイメージも強い池上さんだが、ヘビータックルを使用したキャスティングも安定感抜群。精度の高いキャスティングは何度もヒットを予感させたが…。



朝だけ、ちょっとだけチャンスがありましたけど、基本的に魚の動きが早くて間に合わなかったですね。
サンマも前日より跳ねていなかったので、状況的には少し悪化した感じだったかなって思います。
船長さんはよく走って探してくれましたし、僕としてもやるべきことはやりましたが、それでもダメなのがマグロ釣り。
だからより一層、釣れた時は嬉しい魚なんですよね



繰り返しになるかもしれませんが、やはり正確なキャストと飛距離、 船長さんとの息の合わせ方が最終的には一番大事になってくると思います。
一日で何百投もする釣りではありません。ほんの一瞬に魂を込めて投げるっていう釣りですからね。
その魂の一投を繰り返す。掛けるまでは日頃の行い(笑)。そこからは技術かも知れませんが、最後はもう根性論ですよね(笑)


▲2日間、ミヨシに張り付いていた池上さん。残念ながらキャッチまでは至らなかったが気力、体力を注ぎ込んだ2日間をやり切った満足感はあったようだ。
キハダキャスティングを続けているアングラーなら、今日こそ絶対釣るぞ!と思ってはいても、今日は絶対に釣れる!と確信する人はいないだろう。それだけチャンスが少ないのがキハダキャスティング。
キハダの動きと船長の操船、そして自らのキャスト。すべてがハマったときに初めてヒットは生まれる。
わずかなチャンスを確実にモノにするためにも、自身でコントロール出来ることは完璧にしておきたい。
池上日明さんの相模湾キハダキャスティング使用タックル
池上日明さんが今回の釣行に使用したタックルデータをご紹介。
タックルデータ1
タックル | 詳細 |
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ロッド | ジャクソン/ オフショアトライブ83H |
リール | シマノ/ ステラSW18000HG |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPE SMP [スーパーマックスパワー]X8 8号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 140lb |
タックルデータ2
タックル | 詳細 |
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ロッド | ジャクソン/ オフショアトライブ83H |
リール | シマノ/ ステラSW14000XG |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPE SMP [スーパーマックスパワー]X8 6号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 120lb |
タックルデータ3
タックル | 詳細 |
---|---|
ロッド | ジャクソン/ オフショアトライブ83MH |
リール | シマノ/ ステラSW14000XG |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPEマックスパワーX8 6号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 100lb |
取材協力
(TEL 046-874-4030)


▲ときに双眼鏡を手にキハダの気配を探し続けてくれた「かねい丸」の嘉山翔船長。エサ釣りの割合が多く、キャスティングでキハダを楽しむアングラーは常連さんが多いというが、キャスティングへの理解度は高く、安心して楽しむことができる。