チャーマス北村秀行、キハダジギングは夢があるからやめられねぇ!

オフショアジギングの第一人者、「チャーマス」こと北村秀行さんが、キハダジギングに挑戦。釣りの舞台は、伊豆諸島(伊豆七島)沖。

60kgオーバーのキハダマグロを目指し、伊豆半島の南部にある手石港(静岡県南伊豆)から出船。合計4日間の熱い釣行に密着した!!

北村 秀行(きたむら・ひでゆき)

ソルトルアーフィッシングの黎明期からメディアで活躍し、国内はもちろん、世界の荒海で大物を仕留めてきたプロアングラー。仲間たちは、敬愛の念を込め「チャーマス」と呼ぶ。

国内におけるオフショアジギングは、1980年代初頭、チャーマスが初めてそのスタイルを持ち込んだのがはじまり。フィッシングクラブ『CLUB BIG ONE’S』の総大将として、ラフな海でいまもヘビージグをシャクり続ける。VARIVASフィールドスタッフ。

目次

伊豆諸島のデカいキハダマグロを絶対獲る

「ジギングでデカいキハダを獲る」。これはVARIVAS×チャーマスが、この5年来掲げていた目標のひとつだ。しかしここ数年は、世界的な感染症の流行による釣行の見合わせなどで、なかなかスケジュールが合わず挑戦できずにいた。

そして2024年の初夏。ついにチャーマスがキハダジギングに挑む。

キハダジギングといえば、沖縄や紀伊半島(熊野灘)が有名だが、今回実釣の舞台に選んだのは伊豆諸島だ。伊豆諸島を選んだ理由は以下のとおり。

関東からのアクセスが至便なこと。そして近年は黒潮大蛇行の影響もあるのか、デカいキハダの釣果報告が多数あることだ。

お世話になる遊漁船は、南伊豆の手石港から出船する恵丸(けいまる)。歴戦のジギングアングラーから絶大な信頼を集める、良川福一船長が舵を握る。

チャーマス

船長に話を聞いたら、普段は13〜17kgのキメジが中心なんだけど、3日に1度くらい60kg級が掛かるらしい。

もちろん、ナギがよく出船できた日に限っての話だから、いくらキハダが通年狙える伊豆諸島とはいえ、デカいのが掛かるチャンスはそう多くない。

まずはしっかり道具を選ぶこと。デカいのに備えておかなきゃ、釣れる魚も釣れないからな。

そうだな、60kg……いや100kgだって狙えるだろう。世界の暖流にいるマグロ属は8種。そのうちキハダは200kgを超える。

大物は絶対数が少なく、日本近海は漁獲圧も強いから、そりゃ難しいんだけど……可能性はゼロじゃないよ!!

▲厳選したタックルを船に持ち込む。「3タックルくらいあればいろんな状況に対応できる。あまり持ち込みすぎても荷物が増えるしいざというときに混乱してよくないとは思うけどね」とはチャーマス談だ。

ロッドは臨機応変に対応できる7ftオーバーをセレクト

まずはチャーマス流のタックル選択から。初夏の伊豆諸島を攻略するにあたり、いったいどんな道具を使うのか。

チャーマスは3セットを用意。ロッドは、ジギングモデルではなく、青物やマグロのキャスティングモデルをセレクト。果たしてその狙いはどこに?

チャーマス

サバ科(=マグロ属)はフォールで食うことが多いから、実際はメタルジグを投げて釣ることはあまりない。

ただ、現場では何が起きるかわからない。デカいナブラが立つことだってある。

そんなとき、何でもできるロングロッドはラクなんだ。何でも臨機応変に対応できなきゃダメだな!!

▲チャーマスの愛竿は、自身が監修したtailwalkのMBスプリントスティック。同72M、同711H、プロトMLロッドを用意し、それぞれtailwalkのステルス8000/14000を組み合わせた。

チャーマス

ステルス8000/14000は、ハンドル1回転でラインが114cm巻き取れる。

指示ダナをねっちり誘ったり、ちょんちょんシャクリをやるときは、ハンドルの回転(巻き取り量)を自分なりに調整しながら操作する。

ちなみに、あまりギア比が高いものは、速巻きしたときに疲れちゃうな。

▲2017年から続いている黒潮大蛇行。八丈島あたりにいた魚が、この大蛇行に乗って伊豆諸島を島伝いに北上してくる。「今回攻めるエリアは本当に狙い目だよな」とチャーマスは語る。

PEは指示棚へ早く、正確なアプローチが期待できる「アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9」3号を選択

PEラインは、2024年春にVARIVASから発売されたアバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9(通称エックスナイン)をセレクト。高い直進性をもつX9は、潮の速い海域でも指示棚へ素早く正確なアプローチが期待できる。

また、構造特性による形状の差と新しいコーティングの恩恵から水切れが良く、ジグのシャクリ重りを軽減してくれる。チャーマスにとってもX9は武器になると語ってくれた。

チャーマス

ステルス8000番には3号300m、14000番には3号600mがぴったり巻けた。

X9は、同じ強度なら、従来の8ブレイドに比べて明らかに細く感じる。指でスーッと撫でるだけで、その違いがわかるほど。

沈みが速いから、これまでなら潮負けしていた場面でも、最後までシャクり続けられる。潮負けしない、シャクリが軽いってのは大きなアドバンテージになる。

リーダーは定番の大物ハリス(ナイロン)。キハダを狙うなら下限は60lbかな。もちろんキメジを釣るなら50lbでもいいけど。

最近の流行はもっと細いんだな。ドラグを緩め、魚を驚かせず、竿を曲げず、リールを巻き上げて釣るから。

それに対し、俺は竿を絞る。竿を曲げる。ベンドを維持して魚を浮かせるスタイルだ。糸の太さの違いは、そのままスタイルの違いだろうな。

低伸度PEラインにナイロンハリスを組むことで、タックル全体のバランスを取るのがチャーマス流のテクニックだ。

▲PEラインはビミニツイストでダブルラインを組み、オルブライトノット+エンドノットでリーダーを接続。リーダーはおよそ4ヒロ。スイベル(メタルジグ)はダブルクリンチノットで結束する。

チャーマス

魚には「線視力」という能力がある。糸の太さを瞬時に見分ける力だな。

当然ながら細いほうが食わせやすいんだけど……でもだからといって大物を想定せず、細い糸を組んじゃうと、不意に大きいのが食ってきたときに一瞬で切られる。

つまり大きいのが釣りたいなら、大きいのに備えておく必要がある。自分がどんな釣りをしたいのか、ちゃんとわかってないとダメだな。

▲チャーマスは、何か違和感を覚えたらすぐさまリーダーやルアーを結び直し、ファイト中の糸切れを防止する。基本中の基本だが、その基本を怠らないことが最も大切なのだ。

手石港・恵丸で出船、朝イチに狙いのキハダがヒット

朝4時に手石港を出船し、約2時間で新島の北西10kmにある「高瀬」の北に到着。水道の向こうに利島の急峻な島影を見ながらの釣り。

早朝は北東が吹き、海面がウネり、時折ヨタ波に襲われる。水深120〜130m。まずは230gを投入する。

チャーマス

太陽光線が横から差し込んでいて、潮の透明度も高い。この時間はオールシルバーのメタルジグがいいかもね。水中でかなり光るはず。

と語りつつチャーマスはゲームスタート。すると、ミヨシでジグをシャクるチャーマスに、いきなり魚からのアンサーがあった。

キハダだ。船中に緊張が走る。Mパワーのロングロッドが、くの字にググッと絞り込まれる。竿を曲げて堪えながら、胴の間へと降りるタイミングを見計らう。ヨタ波で船首が持ち上げられたかと思えば、ドンと海面に叩きつけられる。

波が小さくなったところで胴の間に降り、魚の突っ込みを抑えながら体勢を立て直そうとしたとき、フッとテンションが抜けた。痛恨のフックアウト……。

チャーマス

いまのは完全に俺のミスだった。本来は3kgに設定すべきドラグを2.5kgにしていた。

朝のうちは海がラフだったから。キハダが掛かったまま、波のちからで船首が持ち上げられると、その勢いで糸が切れることがある。それを防ぐための2.5kg設定だった。

でも、それをやるならミヨシで堪えて、しっかりフックアップさせてから胴の間に降りるべきだった。

もうひとつ、ヨタ波で大きく揺られたときに、リールハンドルから思わず手を放したのもフックアウトの一因だったな。

ラインの瞬間的な弛みに対応できなかった。どんなときもリールから手を放しちゃダメだ。

▲2キロ級のマトウダイ。「最近はこのサイズも珍しい。マトウダイが釣れるってことは潮が止まってるんだろうな」とチャーマス談。

この日はキハダらしいアタリが2回あるも、いずれもフックアップに至らず。そしてそのまま沖上がりの時間を迎えてしまった。

2日目。朝から北東が吹き、波は前日より高い。チャーマスが「かなり揺れるから気をつけて」と取材スタッフに声をかける。この日、沖で見かけた遊漁船は、片手で数えられるほどしかいなかった。

そんななか、オオドモでシャクっていたチャーマスのロッドが曲がる。5kg級のカツオだ。

チャーマス

掛けたあとに一瞬だけ潜ったから、もしかしたらキメジかなと期待した。潜るカツオは少ない。ただ、そのあとに横走りしたからカツオとわかった。

船長いわく、今日は前日の10分の1しか反応がないらしい。反応があるところに船を付けてくれるんだけど、そのたびに消えちゃう。

ただ、それでも何かの拍子で食うはず。そのタイミングを逃さずに竿をシャクっていれば、釣れる可能性はきっとある。

沖上がりが近づいてきた昼前、僚船からフカセで35kgのキハダを獲ったと無線が入った。

やはりキハダはいるのだ――。そのときだった。

船の右舷で推定60kg超と思われるキハダがもじり、デカい波紋を作った。そしてさらにその沖で、今度は20kg級が大きく跳躍した。目の前に現れたキハダは、まるで釣り師を、いや人間をあざ笑っているかのようでもあった。

こうして2日目も、キハダを手にできないままタイムアップを迎えてしまった。

チャーマス

これはフクシュウだな。フクシュウといってもリベンジじゃない。復讐は返り討ちに遭うことがあるからさ(笑)。

今回の結果を踏まえたうえで、しっかり復習して現場に戻ってくる。そして釣る。近いうちにまた来るよ!!

復習ばっちりのキハダジギング再チャレンジ in 伊豆七島

「近いうちにまた来るよ」。その言葉どおり、チャーマスがフィールドに戻ったのは3週間後。今回も2日間の釣行予定だ。初日は恵丸、2日目は第8寿広丸にお世話になる。

チャーマス

手石港といえば、昔は銭洲の遠征基地のようなイメージだったけど、いまじゃすっかりマグロの港だな。

6時半過ぎに伊豆大島の南、大室ダシのエッジに到着。朝は北東5mで、昼が近づくにつれて風が強くなる。

チャーマス

海が騒いでいるときは、数は出ないかもしれないけど、デカいのがドンと釣れたりする。

これだけ海が荒れると、プレッシャーは抜けているかもしれないな。

朝のうちは、カンパチを釣りながら、時折交じるキメジを狙おうと船長の提案。

開始から1時間ほどは潮があまり動かず、船中でアカヤガラが上がるなどしたが、何度か船を付け直しているうちに、やがて潮を手元に感じられるようになってきた。

しばらくして、船中でヒレナガカンパチのラッシュがあった。サイズは2〜3kgと小ぶりながら、強めの突っ込みでアングラーを楽しませてくれる。

誰かが1尾を掛けると、その1尾につられて群れが競うように食ってくる。チャーマスも、連続シェイキングでバイトに持ち込んだ。

昼前にポイントを移動し、今度はデカいキハダを狙う。魚探に映るわずかな反応を追うも、しかし船を付けているうちに魚の影が消えてしまう。

残念ながら、この日は期待したキメジの回遊にも遭遇できずに終わってしまった。

▲「海がガチャガチャで、潮が素直じゃないから、糸がC字だのS字だのにならないように釣る。こんなとき、沈みの速いX9は使いやすいね」とチャーマスはいう。

▲「キハダは1日平均24〜25回餌を求めて急浮上/急潜行を繰り返す。何がきっかけかはわからないけど、そのタイミングでシャクっていれば食わせるチャンスがある。だから『今日は釣れねえ』なんて寝てちゃダメなんだよ(笑)」と経験豊富なチャーマスは語る。

第8寿広丸でヒョウタン瀬を攻略、キハダの気配は濃厚ムンムン

最終日は、同じ手石港の第8寿広丸(三俣隆徳船長)で出船。

目指すは式根島の西約10kmにある「ヒョウタン瀬」。その名のとおり、ヒョウタンのような形をした浅瀬だ。古くからのヒラマサ、カンパチの漁場で、近年はキハダジギングの実績もある。

朝イチは水深150〜160mからスタート。すると2回目の流しでバイトがあった。チャーマスがドスッと合わせを入れる。

チャーマス

フックアップした。でもキハダじゃねえな。

竿の曲がりを維持しながら、魚と対等に渡り合う。水面に顔を見せたのは、5kg級のハガツオだった。

船長から、魚探の情報が逐一アナウンスされる。ベイトのうえにキハダの影が映っているという。これは食い気がある証拠だ。

「いまがチャンスだな」とチャーマス。ロッドはMBスプリントスティック72M、リールはトルク重視のステルス14000、ラインはX9の3号600m。リーダーはナイロン70lb。しかし――。

チャーマス

船長の指示ダナをこれだけ通しているんだから、キハダもジグを見てるはず。それでも食ってこないということは、何かが違うんだろうな。

その答えはすぐにわかった。フロントフックに1kgを超えるゴマサバが食ってきたのだ。

チャーマス

キハダがこの太さのサバを食べているなら、確かにジグには振り向かないかもな(笑)。

象はピーナッツを食べるけど、わざわざ探しには行かない。その話と一緒だな。体を維持するだけなら、この太ったサバを1匹か2匹食べればいい。あえて細いジグを追う必要はない。

ただ、だからといって諦めちゃいけない。気圧なのか、光量なのか、何かはわからないけど、キハダが口を使うタイミングはある。

デカい魚を釣るには、その瞬間にジグを指示ダナに入れている必要があるんだよ。

そして、ついに沖上がりの時間を迎えた。計4日間の釣行だった。いずれの日も風が吹き、海が荒れたなかでの釣りとなった。

カツオ、ヒレナガカンパチ、ハガツオといった多彩なゲストに恵まれた。本命キハダのバイトを捉えるも、しかしキャッチには至らなかった。

チャーマス

初日の早朝、ウネリのなかでキハダを掛けただろ? あれで『今回は反応がいい。楽勝だな』と思ったのが間違いだったな(笑)。油断しちゃった。

キハダジギングの魅力は、魚を手にしたときの達成感だろうな。すぐに獲れる人もいれば、なかなか獲れない人もいる。

釣果は大切だけど、もっと重要なのは通うことだろうね。通い込んで獲った1尾には価値がある。しかもそれが60kgだったりしたら……ロマンがあるだろ?

最近はメディアに呼んでもらうと、『レジェンド』と呼ばれたりするんだけど……俺はレジェンドなんかじゃねえ(笑)。1946年生まれで、ただこれからもずっと釣りがしたいだけなの!!(笑)。

今回は魚が出なかったけど、次は出るかもしれない。そう思わせる魅力がこの釣りにはある。また挑戦したいね。これだからキハダジギングはやめられねぇ!!

そういって、チャーマスは顔をクシャクシャにして笑った。関東から日帰りで楽しめる伊豆諸島のキハダジギング。これからの季節、さらなる盛り上がりを見せること間違いなしだ。

オフショアジギングの第一人者、チャーマスのタックル&メタルジグ

チャーマスが使用していたタックルとメタルジグをご紹介する。

チャーマス タックル①

タックル詳細
ロッドtailwalk/
MBスプリントスティック72M
リールtailwalk/
ステルス8000/14000
メインライン【VARIVAS】
アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9
3号 300m/600m
リーダー【VARIVAS】
大物ハリス 50〜70lb

チャーマス タックル②

タックル詳細
ロッドtailwalk/
MBスプリントスティック711H
リールtailwalk/
ステルス14000
メインライン【VARIVAS】
アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9
3号 300m
リーダー【VARIVAS】
大物ハリス 70lb

チャーマス タックル③

タックル詳細
ロッドtailwalk/
プロトMLロッド
リールtailwalk/
ステルス8000
メインライン【VARIVAS】
アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9
3号 300m
リーダー【VARIVAS】
大物ハリス 50lb

メタルジグ

名称詳細
C1ロングライドCB ONE/
200g、230g
CB.ナガマサSMITH/
230g
ヒラジグラロングSPORTS SAURUS/
200g
紫電改SL誠ジグ/
190g
紫電改誠ジグ/
250g、300g
サーベルモーションBRIDGE/
200g

写真左/北村秀行さん、写真中央/第8寿広丸・三俣隆徳船長、写真右/恵丸・良川福一船長

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