東京湾タチウオジギング攻略法を北村秀行さんに訊く。タックルやジグ選び、求められるライン特性について

関東圏のアングラーから多くの支持を得る、東京湾のタチウオジギング。

長い歴史を誇る人気の釣りでありながら、いまだ進化の過程にある釣りでもある。その黎明期からシーンを見続けてきたのがチャーマスこと、北村秀行さん。

ビッグサイズに照準を定めて楽しむ、独自のタチウオジギングスタイルを紹介しよう。

目次

東京湾のタチウオジギング、その全体像

▲水深20m、浅場のポイントで仕留めたメーターオーバーのタチウオ。近年の東京湾では浅場のポイント開拓が進んでいる。

東京湾のタチウオジギングはいつ頃始まったんですか?

チャーマス

スタートしてから40年くらいになると思うよ。最初の頃は専門の船もなかったし、あまり知られていなかったと思うけどね。

タチウオジギングの乗合船ということでは、30年くらい前からじゃないかな。

当時はまだナイロンラインでの釣りが主流だった。数は釣れたけど大きくても800gから1kgくらいまでの魚ばかりだったな。

トレブルフック1個だけセットするスタイルで、ラインを切られることも多かったね。

▲撮影でお世話になった金沢八景の太田屋。タチウオジギング船としては老舗のひとつで、近年の3年ほどは周年出船している。

タチウオジギングフィールドとしての東京湾の特徴は?

チャーマス

東京湾の特徴を簡単に言うと、デイゲームが主流ということじゃないかな。

たとえば駿河湾では潮がクリアなので、太陽光線が入るとタチウオが深く潜っちゃう。だから浅場にタチウオ入ってくるナイトゲームが中心になっている。

東京湾は濁りが強いから、昼間でもタチウオが深場に落ちて行かない。デイゲームに適しているフィールドだよ。シーズンが長いのも特徴だろうね。

以前は東京湾も春から初夏までと、晩から始まって2月、3月くらいまでの2つがシーズンだった。最近は1年中釣れるようになっているよね。

東京湾のタチウオジギング、その魅力と攻略の基本

▲繊細な攻略が求められる東京湾で腕を磨けば、どこのフィールドに行っても通用する、と北村さん。

東京湾のタチウオジギングの魅力や面白さについて教えてください。

チャーマス

大きいのがかかると、ドラグが鳴ってラインが出るくらい爆発力があるのがタチウオの魅力。掛かってからバックする魚はタチウオくらいしかいないよ。

関東近県では東京湾はサイズがいいほうだと思うけど、それでも2.5kgくらいが限度かな。2kgを超えたらもうスーパークラスだ。でも、全体的にサイズは悪くない。

ただ、オスの群れとメスの群れがいて、オスの群れに当たっちゃうとサイズが小さいオスが中層に浮いていて、それが釣りの邪魔をするんだよ。

チャーマス

フィッシングプレッシャーの高い東京湾や相模湾で釣りを覚えると、世界中どこに行ってもその技術が通用すると思うよ。

ただ、東京湾や相模湾で釣りを覚えると、タックルがライトになりがち。いざ大物を相手にすると切られてしまうこともあるので注意したいね。

東京湾では「タチウオが釣れないな」って感じているときに、ブリがかかることがある。でも獲れる人は少ないんだよね。

▲東京湾名物、タチウオ船団。ルアー船、エサ釣りの船が入り乱れ、ときに他船のアングラーとオマツリするほど密集する。

東京湾のタチウオを攻略するために重要なことは何ですか?

チャーマス

東京湾のタチウオを攻略するためには、潮の動きをしっかり見極める必要がある。

優先して考えることは潮の流れの速さ、向き、あとは透明度だ。

下げ潮で濁りが入るといい反応があるけど、上げ潮のときに透明度が高い潮が入ってくると魚がいても喰いつかないことが多い。「今日はいい反応があったけど、喰わなかったね」っていうのはよくある話。

船長たちはその理由を知っているんだろうけど、なかなか教えてくれない。自分で考えていかないとね。

▲満船状態の太田屋船上。これで潮が走り出せばオマツリを始め、多くの釣りにくさが生じてくる。東京湾特有の対応策が求められるケースのひとつだ。

北村流・東京湾タチウオジギング用タックル

▲ジギング用には0.8号と1号のベイトタックルを用意。シャローエリアを釣る可能性あり、というときはスピニングタックルも準備する。

北村さんが東京湾のタチウオジギングで使用するタックルについて教えてください。

チャーマス

ジギング用としてメインで使用するのは、0.8号と1号のベイトタックル。

これにプラスしてワーム用の0.8号と0.6号のスピニングタックルを、広く横方向に探るタックルとして用意することもある。

東京湾は潮流が速くなることが多く、通常は1号で対応できるけど、潮が速いときは0.8号を使用しないと対応が難しい場合がある。

ラインをまっすぐ立てることを目的に、潮の状況に応じて、どちらのタックルを握るかを決めている。

同船者だけでなく周囲の船に乗っているアングラーのラインとの接触を避けることも重要だ。

とにかくラインをしっかり立てることを第一に考えなければならないね。

東京湾タチウオジギング用のジグ選びとは

▲北村さんは一般的に使用されているジグよりもやや重め、大きめをセレクト。ビッグベイト=ビッグフィッシュが信条だ。

ジグの選び方はどのようにしていますか?

チャーマス

ジグのウエイトは基本的に100gから200gを使っている。一番軽いもので100gだが、ほとんど使わない。150g程度が基本と考えている。

重めのジグで大物を狙うことが多いのは、ビッグベイト=ビッグフィッシュという考え方をしているからだ。

少し大きめのジグを使うと、小さなタチウオがちょっかいを出してくることを避けられるし、口にかかる確率も高くなる。

状況次第でマッチ・ザ・ベイトも考えるけどね!

▲近年、東京湾ではタングステン製のジグが人気。だが、タングステン一辺倒も考え物。北村さんは鉛製ジグと併用し、適材適所で使っていた。

チャーマス

最近はタングステン製のジグが人気だけど、タングステンジグを使う意味を考えたいよね。

自分自身、わざわざタングステンを使う意味があるのかと思っていたんだけど、マダイを狙い出してから少し考え方が変わったよ。やはり結果が出ることが多いからね。

ただ、タチウオの場合はロストが多いから考えちゃうよね。要はシルエットが小さくできる点が有利、マッチ・ザ・ベイトってことだね。

でも、鉛でもいいんだよ。ラインを細くしないとダメだし、沈める技術が必要だけどね。お金持ちはタングステンのジグを積極的に使えばいいと思うよ。

鉛よりも海や環境に優しいしね。

東京湾タチウオジギングで使用するPEライン

▲東京湾タチウオジギング用のメインラインとして北村さんが選んでいるのはアバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9。その直進性によるたわみの少なさ、水切り性能、感度…、タチウオジギングにおける利点は数多い。

タチウオジギングのライン選び、PEラインを選ぶ際に注意していることは?

チャーマス

釣りにおいて最も重要な要素を魚側から考えるとフックだ。その次に重要なのがハリスで、ルアーを使用する場合にはリーダーがその役割を果たす。

道糸、つまりメインラインも非常に重要で、とくに東京湾のタチウオジギングでは、潮負けの問題がある。潮負けとはラインが潮流に流されてしまうこと。潮に取られずにまっすぐに立つライン、しかも強度が高いラインが有利だよね。

昔はおおざっぱにやっていても釣れたけど、最近ではプレッシャーの影響でそう簡単にはいかない。ラインの選び方についてもしっかり考えたいよね。PEラインも進化しているからね。

俺はアバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9を使っている。

アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9は進化した9本撚りのPEラインで、真ん中に芯が入っている。一般的なPEラインとは異なる特性を持っているラインだよね。

アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9のタチウオジギングにおける優位性

▲「潮負けするようなラインはダメだ」と北村さん。素早くジグをフォールさせ、タチウオのレンジにジグを送り届けることができるか否かはラインの性能による部分も大きい。

東京湾のタチウオジギングにおいて、アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9が発揮する優位性はどういったところですか?

チャーマス

アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9は水切り性能が高いので、とくに東京湾のような潮流の影響が強い環境や、北風が吹いて表層だけ流れて二枚潮になりやすいフィールドにおいてはとくに使いやすさを感じると思うよ。要は潮負けしないってこと。

感度が高くて、細くても強度が十分なので信頼して使える。

乗船者が多くて潮流の速いことが多い東京湾ではオマツリの原因になってしまうから、潮負けするようなラインは出来るだけ避けたいよね。

チャーマス

基本的に0.8号くらいの細いラインは水切りがいい。だからシャクっていてジグが軽く感じることもあるけど、反対に重いなと感じるときは潮流に押されているときだね。

アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9は水切り性能が高く、感度が良いからなおさらこの違いを感じることができるよ。

掛かったのはタチウオなのか違う魚なのか?口に掛かったのかスレなのか?というようなことも含めて、いろいろな水中の情報を得るには、アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9の感度の良さはとても助かるよ。

タチウオジギングに限らず、イカ釣りにおいても非常に効果的だったし、ヒラマサジギングでもよかったよ。

▲常にジグを投入する方向を考慮していた北村さん。ラインをまっすぐ立てる。タチウオに限らず、船を立てる釣りでは重要な基本だ。

チャーマス

アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9は直進性が高いのでジグのフォールスピードも速い。

東京湾のタチウオジギングではラインがどっちに流されているのかをよく見て投入するのが基本だけど、どうしてもコントロールしきれないときもある。

使っているラインの水切りの性能がよければコントロール性能が上がるし、ラインが真下に立つ確率もアップする。

ある程度の経験がある釣り人がアバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9を使ったら、いろいろな面でこのライン凄いな、って感じると思う。

ただ、安いラインではない。東京湾のタチウオジギングなら1号以下が基本。強いと言っても細いラインを使うわけだからラインの点検が重要。

ちょっとした傷が命取りになることもある。よくチェックしたいよね。

ショックリーダーはフロロカーボンとナイロン、素材で使い分ける

▲リーダーを素材で使い分けている北村さん。大きな基準はシーズン。夏はフロロカーボン、冬はナイロンだ。

リーダーの選び方を教えてください。

チャーマス

以前、タチウオジギングでリーダーを使わずにPEラインに直結してやったことがある。そのときは他の人が7本釣る間にやっと1本釣れた。リーダーのあるなしでは、そのくらい差が出る。

リーダーの良し悪しで釣果が大きく変わってしまうこともある。リーダーの選び方もリーダーの長さも時期や潮の透明度で考えることだね。

魚には線視力っていうのがある。太いか細いか、長いか短いか、丸いか四角いかを一瞬で判断する視力能力のことだ。

人間だとヨウジの頭が丸いか四角いか、一瞬では分からない。でも魚だったらそういうのを一瞬で見分ける能力がある。線視力は調べようがないってサジを投げちゃう学者もいるし、否定する学者もいるけどね。

魚はほとんど近眼だけど、モノを見るときにピントを合わせる時間がものすごく早いのは確かだと思うよ。近くを見ることに能力を集中しているのかも知れない。

だから、タチウオジギングではリーダーの太さには注意したいね。俺は通常は30lbで、潮が速い時は25lbリーダーにしている。

細いほうが釣りやすいし、有利だが、大型の抜き上げに注意が必要になるね。

▲スピニングリールのスプールからコイル状にリーダーが飛び出すトラブルは、多くのアングラーが経験しているだろう。ナイロン製のリーダーを使うだけでこの現象は大きく減少する。

具体的に使用している製品は?

チャーマス

リーダーはフロロカーボンとナイロン、と素材で使い分けている。具体的な製品名としてはショックリーダー [フロロカーボン]ショックリーダー [ナイロン]だ。

使い分けの基準は気温や水温が基本。冬はフロロカーボンが硬くなりやすく、結び目が切れやすくなる。

それに冬にスピニングリールにロングリーダーを巻き込むとスプールから飛び出すトラブルが起きやすい。ベイトでも巻き癖が取れにくくなる。

だから冬はナイロンを使うことが多くなる。フロロカーボンとナイロンの使い分けは、フィールドの条件や狙う魚の種類によって決めるべきだね。

チャーマス

季節以外にもヒットレンジが狭い場合は感度に優れるフロロカーボン、ヒットレンジが広くて追い喰いしてくるようなときはナイロンのほうがアタリが出やすいように思うね。

どちらの長所も分かっている人は、ケースバイケースで試してもいいけど、どっちがいいですか?と聞かれたら冬はナイロン、夏はフロロって答えるよ。

ナイロンでもフロロカーボンでも俺は3ヒロ(約4.5m)くらい長さを取っている。

タチウオジギングでは1ヒロくらいあれば十分なんだけど、傷が入ったらどんどんカットしていくから、短くなることを考えて長めにしているんだ。

北村流のラインシステム、結節方法は?

▲江戸っ子的なべらんめえ口調!?に反し、すべてにおいて几帳面で繊細なアプローチをする北村さん。ノットへの配慮も数多い。

PEラインとリーダーの結節、リーダーと接続金具の結節は、どうしていますか?

チャーマス

ラインシステムはビミニツイストでダブルラインを作って、オルブライトノットで結節しているよ。

どんなやり方でもいいけど、なるべく小さく仕上げたいね。ここをタチウオやフグに噛まれてブレイクすることもあるからね。

船上は風があることも多くてやりにくいからラインシステムは出来るだけ家で組んで、現場では組まないようにしている。

船上でリーダーを組み直さなくてもいいように、ということもあって少し長めのリーダーを使ってもいるんだ。

もちろん、替えスプールも用意してトラブルに備えている。

スイベルとの結節はダブルクリンチノット。丁寧に締め込まないとリーダーがチリチリになりやすいから注意が必要だけど結節強度は95%出るノットだよ。

PEにシュッ!は欠かせない。基本的には自宅で新品のラインを巻くときや釣行後に吹く。ライン以外にも防水効果が欲しいガイドやラッピングなどにも吹いている。

北村秀行流・東京湾タチウオ用タックル

ジギング用にはベイトタックル、ジグヘッド&ワーム用にはスピニングタックルを使用している。それぞれご紹介しておこう。

▲撮影時に持参したのはベイト2、スピニング2の計4タックル。

東京湾タチウオ用ベイトタックル1

タックル詳細
ロッドテイルウォーク/
シールス X48 XC62 class120
リールテイルウォーク/
エラン ワイドパワープラス71R
メインライン【バリバス】
アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9 1号
リーダー【バリバス】
ショックリーダー[フロロカーボン] 25lb
ジグテイルウォーク/ヤミージグTG
デュエル/ブランカ
スミス/メタルフリッカー
など

東京湾タチウオ用ベイトタックル2

タックル詳細
ロッドテイルウォーク/
シールス X48 XC68 class80
リールテイルウォーク/
エラン ワイドパワープラス71R
メインライン【バリバス】
アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9 0.8号
リーダー【バリバス】
ショックリーダー[ナイロン] 25lb
ジグテイルウォーク/ヤミージグTG
デュエル/ブランカ
スミス/メタルフリッカー
など

東京湾タチウオ用スピニングタックル1

タックル詳細
ロッドテイルウォーク/
シールス X48 XS65 class80
リールテイルウォーク/
スピーキー3500HGX
メインライン【バリバス】
アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9 0.8号
リーダー【バリバス】
ショックリーダー[ナイロン] 25lb
ジグヘッド&ワームグーバーオリジナル/ジグヘッド33g&38g
エコギア/パワーシャッド

東京湾タチウオ用スピニングタックル2

タックル詳細
ロッドテイルウォーク/
シールス X48 XS65 class80
リールテイルウォーク/
スピーキー3500XGX
メインライン【バリバス】
アバニ ジギング10×10マックスパワーPEX9 0.6号
リーダー【バリバス】
ショックリーダー[ナイロン] 25lb
ジグヘッド&ワームグーバーオリジナル/ジグヘッド33g&38g
エコギア/パワーシャッド

▲撮影釣行で最大魚を仕留めたのは実はジグヘッド&ワーム。広範囲に探るべく、着底させてからただ巻きを繰り返し、ヒットさせた。「シャローレンジ、水深20m前後で表層の潮に濁りがあるときは広範囲を探る釣りが面白い!! ジグで探るとスズキもバイトしてくる」、と北村さん。

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