蒼井さやのレコードチャレンジ 玄界灘のヒラマサキャスティング編

「さあや」こと蒼井さやさんが各地のフィールドに赴き、自身のレコード更新にチャレンジする連載企画「蒼井さやのレコードチャレンジ」。

今回は自身のヒラマサキャスティングのホームグラウンドという玄界灘が舞台。21.5kgを超える大型ヒラマサを狙った釣行の模様をレポートする。

目次

玄界灘ヒラマサキャスティングの雄、サンライズ田代船長の蒼井さん評

▲ルアーアクションのお手本を見せる田代誠一郎船長。蒼井さやさんとのヒラマサを通した交流は15年以上になる。

今回の「蒼井さやのレコードチャレンジ」、舞台は玄界灘。相手はヒラマサだ。玄界灘のヒラマサキャスティングと蒼井さんの関係は短くはない。玄界灘ではここでしかヒラマサキャスティングをしたことがない、という船が佐賀県呼子の「サンライズ」。

ヒラマサ界? では知らぬ者はいないだろう、船長でありアングラーとしても著名な田代誠一郎さんが語ってくれた。

田代誠一郎

最初にサンライズに来てもらってから15~16年くらい経っていると思います。最初からすごい釣り運を持っていましたよ。

それ以降、あれよあれよという間にヒラマサはもちろん、マグロ、GTなどの大きな魚を釣っています。

街で見かけたら到底大物釣りをするような女性には見えないですが、たしかマグロは400kg、カジキも130kgくらいの大物を釣っています。彼女のヒラマサのレコード、21.5kgもうちで釣ってもらいました。

掛けるまでも掛けてからも諦めない女性です。朝から晩まで投げ続けますし、ファイトに関してはもうベテランなので、必ず獲ってくれると思っています。あとは魚を引き出すだけですね。

▲2022年にキャッチした蒼井さんのヒラマサレコード、21.5kg。文句なしの巨大ヒラマサだ。

田代誠一郎

今回はすごく状況がいいと思います。ただ、1年を通してヒラマサを追いかけているわけではないので、ベイトフィッシュの種類だったり、ルアーの大きさだったり、潮流のスピードだったりなどは、こちらで説明して、彼女の感覚に合わせていく感じでサポートできたらいいな、と思っています。

玄界灘ヒラマサキャスティングでのレコードは21.5kg

今度は蒼井さんにとっての玄界灘のヒラマサキャスティングを、彼女の口から語ってもらおう。

蒼井さや

ヒラマサは青物の王様って言われているぐらいの魚だけに、私の中ではけっこう緊張感を持って挑む相手です。他のフィールドでの経験もありますが、私にとってヒラマサキャスティングといえばやはり玄界灘がホームグラウンド。

縁もゆかりもある船ですし、田代船長とのお付き合いも長いです。釣らせてくれる船長なので、いつも期待させてもらっています。

船長としてはもちろんですけど、人として尊敬できるんですよね。そうしたこともあって、毎年必ず足を運んでいますし、多い年は3、4回は乗船しています。

▲緊張感を持って挑む魚、というのが蒼井さんのヒラマサ評。相手にとって不足はないスプリンターだ。

蒼井さや

ヒラマサキャスティングでのレコードフィッシュは、一昨年にキャッチした21.5kgです。でも、簡単に釣ったわけではありません。

16.25kgを釣ってから6~7年掛かって19.5kg。そのあとに17kg、19kgと足踏みしてから21.5kg。時間が掛かったこともあって本当に感動しました。実は21.5kgを釣ったときはかなりラッキー要素が強かったんです。

水深が8mと浅く、ギリギリのファイトで怖かったんですが、ルアーを丸飲みしていた、という幸運もあって獲れた感じです。今回もラッキーを取り入れたいですね(笑)。

運も腕のうち。大物釣りをやっているからといって、必ずしも大物を釣っているとは限らないのが現実だ。蒼井さんのすさまじいばかりの釣り運は、彼女がキャッチしてきた数々のレコードフィッシュが証明している。

その釣り運を現実のものとして残すことができるのは、信頼できるタックル、ラインがあってこそ。彼女自身のラインへの信頼はどのようなものなのだろう。

蒼井さや

自己記録の21.5kgのヒラマサをかけたとき、自分が思っていたよりドラグの設定が緩かったので…、というより、想定外の大物がヒットしたと言っていいと思うんですが、ヒットした瞬間からすごい勢いでドラグ音が鳴ったんです。

『ただ者ではない感』を肌で感じて頭が真っ白になったんですが、すぐに気を取り直して以前の失敗を思い出し、真剣に相手との一騎打ちに挑みました。

ファイト中にドラグを締めることは加減を間違えれば、二度と巻き戻すことの出来ない一瞬を後悔することになります。

そのときは自分でビックリするくらい冷静にドラグを調整していました。こうした行動を取れるようになるまでには少し時間がかかりました。

でも、なんとか出来るようになったのは幾度となくメモリアルフィッシュを釣らせてもらえた、信頼のおけるラインを使っていたからだと思います。

▲トリが絡んだナブラも多く、誰もがアガる! そんな状況がほぼ終日続いた釣行初日。

ナブラがそこかしこで弾ける! レコードチャレンジにはベストな状況

取材釣行は2024年4月の上旬に敢行。2日間の釣行だ。田代船長の事前情報によると状況はかなりいい、らしい。

田代誠一郎

マイワシが接岸しています。ボラもいるようです。日並みによってムラはありますが、沸く日に当たれば高確率で大型ヒラマサがヒットしてくる状況です。

ラッキーなのは浅いところはもちろんですが、30mから60mくらいの深いところまで幅広くマイワシが湧くことです。それほど強いドラグテンションをかけなくても獲りやすい場所でのヒットが望める可能性があります。

女性がかけても獲りやすい水深、状況ですから、レコード更新の魚を狙うにはすごくいい条件だと思います。沸いている魚はだいたい15kgから35kgくらい。小さい魚は少ないですね。デカい魚がいつ出てもおかしくはない状況で本当に油断できない感じです。

それだけにラインシステム、リーダーやラインのチェック、傷がないか、団子が出来ていないか、といったところは注意してほしいですね。ひとつミスしてしまうとすべてが台無しになってしまいます。そこは徹底してやってほしいと思います。

▲とにかく投げ続ける!男性でもキツい終日に渡ってのキャスティング。蒼井さんの華奢な体から溢れるエネルギーには驚くばかり。

田代さんも太鼓判、という状況だった。実際、初日に入ったポイントでは、そこかしこでナブラが沸いていた。しかも水柱がデカい。ゆっくりとスタートしたので、ポイントに着いたときにはすでに6~7隻の遊漁船が広く散り、キャストを繰り返していた。大型ヒラマサの気配は濃厚。

しかし、簡単にヒットしてくるのか? と問われれば答えはノーだった。ヒラマサも多いがベイトも多い。ナブラも多いが散発的でパターンは読みにくい。広範囲で捕食回遊しているため誘い出しでは出しにくい。

突如沸くナブラにタイミングを合わせた、精度の高いキャストが要求される状況だった。潮は朝一番から下げ始めていた。そして、4時間ほどキャストを繰り返していた蒼井さんのルアーに、出た!

▲数々の経験と慣れが現れている、タックルの能力を使い切るような見事なファイトスタイル! 

水面まで浮いた巨大ヒラマサがネットイン直前でフックアウト!

脇抱えのままリールを巻き続けてフッキング完了。タイミングを見てギンバルファイトに移行。ときおりキャスティングレールに体を打ち付けられそうになりながらも、しっかり腰を沈めて相手にプレッシャーを掛け続けた。水深が40m近いこともあって落ち着いてやり取りをしているのが分かる。

しかし、相手は小さくはない。危なげないファイトで水面に浮かせた魚体はやはりデカかった。田代船長が差し出すネットに収まるか、と思ったその瞬間にフックアウト。船上の全員が息を吐き、蒼井さんはその場にへたり込んだ。レコード更新の可能性もあった巨大なヒラマサだった。

▲フックアウト!まさにその瞬間。20kgオーバーと思われる巨大なヒラマサは去っていった。

しばらく打ちのめされた後、意を決して立ち上がった蒼井さんは、ラインシステムを組み直し、伸ばされていたルアーのフックを交換した。30分ほどキャストし、またヒットを得た。スムーズなファイトでネットインしたのは10.5kgのナイスサイズだった。

しかし、満足していないのはその表情からも読み取れた。さらに小さなヒラマサを1本追加して、釣行初日は幕を閉じた。田代船長の仲間の船からは何本もの20kgオーバーをキャッチした、という報告が入っていた。

▲10.5kg。十分に立派なサイズのヒラマサだが、蒼井さんにとっては役不足?

▲悔しさを噛みしめながら、伸ばされたフックを交換し、ラインシステムを組み直す。

蒼井さや

逃した魚は大きいな、という感じですね。ライン、リーダーの号数やポンド数は自己記録の21.5kgをキャッチしたときとほぼ一緒ですが、今回も水深や船長の指示によって号数の違うタックルを持ち替えています。

惜しくも逃がしてしまったときはヒラマサチューンをセットした5号タックルだったので内心ヒヤヒヤでした。

船べり近くでフックアウトしてしまいましたが、5号であそこまでのファイトができることを再確認し、さらに私のバリバスラインへの信頼度が増しました。ただ、今日、実際にキャッチ出来たのは10kgクラスまで。

それなりの引きではありましたし、嬉しい魚ではあるんですけど、どうしても大型を逃したばかりだったので…。いずれにしても初日は終了です。レコード更新とはいきませんでした。でも、まだ1日あります。明日に賭けたいと思います。

▲苦戦のすえキャッチした見事な17kg。奇しくも2023年の外房でのレコードチャレンジと同サイズ。レコード更新のハードルは高い!?

バイトシーン、凄かったです。ベイトが水面で散らばって。ド迫力でした!

蒼井さや

昨日は悔しい思いをしたので、今日こそあの魚、いやそれ以上の魚をぜひキャッチしたいですね。

釣行2日目も前日と同じポイントを釣った。ナブラはほとんどなくなっていた。だからといって魚がいなくなっているわけではない、と田代船長はポイント移動することはなかった。

田代誠一郎

春はよく通っているポイントです。釣れていなくても必ず様子をみるところです。今日もボラとイワシを捕食しているのを見たので、必ずどこかでボラパターンやイワシパターンで出ると信じています。

でも、たぶんほんの一瞬だと思います。いくら沸いていても引いているルアーに出るとは限らないし、船の近くで沸いたとしても、自分がどこかに投げていたら攻めることはできないので難しさはあります。

ただ、その一瞬をモノにすることができれば、20kgクラスのヒラマサを手にする確率はものすごく高い状況です。

だから僕はかなり緊張しています。緊張しながらガイドしているし、蒼井さんの動きをよく見ています。

田代船長は静かな海に少し落胆気味の蒼井さんを鼓舞するようにキャストを促した。

スタートから2時間ほどキャストを繰り返していた蒼井さんのルアーを、派手な水飛沫が襲った。デカい! 約20mの水深での攻防だったが、蒼井さんは落ち着いて、ロッドをしっかり曲げ込んだ。

女性でここまでタックルのポテンシャルを使い切ってファイトするアングラーはなかなかいない、そう思わせる見事なファイトだった。ヒラマサは船上計測で17kgだった。

▲満面の笑みではしゃいでもいいサイズのヒラマサだが、蒼井さんの表情はいま一歩。どうしても前日にバラした魚が頭をよぎる!?

蒼井さや

着水したルアーを半分くらい引いてきたところで出ました。バイトシーン、凄かったです。バッと出たときにベイトが20匹くらいですかね、水面で散らばって。ド迫力でした。

そこからの引きは覚えていないくらいの強さでした。水深が浅かったのでハラハラしましたけど、船長も的確なアドバイスをくれて助かりました。これだからヒラマサは面白い。さあ、次に行きましょう。

どうしてあれほどの、自信に満ちたファイトを展開できるのだろうか?尋ねてみた。

蒼井さや

正直、毎回、毎投、自信はないです。ただタックルについての絶対的な信頼はあります。自信がないのは、私自身の未熟な腕と経験の部分です。

魚がヒットし、ファイトが始まると、途中で掛かりどころが悪くフックアウトしそうだな…という感覚に陥るときがありますが、それ以外はとくに不安はないです。

不安より先に『絶対に負けない(自分に)』『釣りたい』欲の方が勝ちますね。

ただ、蒼井さんは17kgの大マサにも満足できてはいなかった。超えるべきハードルは21.5kg。しかも、そのサイズを超えるヒラマサが十分に期待できる状況だった。

▲ラスト1時間。万全を期すためにラインシステムを組み直す蒼井さん。次は必ず獲る!

ラスト1時間。来た魚は絶対に獲るという思いでやってほしいと田代船長

残された時間は1時間。レコードチャレンジの目的は言うまでもなくレコード更新。だから蒼井さんとしてはどうしても21.5kgを超える魚を釣りたい。あらためて田代船長に教えを乞うた。

どうすれば21.5kgを超える魚と出会えるのか?

田代誠一郎

ずっと頑張って継続して投げ続けてはいますよね。魚がいることは間違いないですし。昨日より少し不利になったのが、釣れやすかった潮の動きが緩んで、止まってしまっていることです。

捕食しづらい時間帯になっているのは確かですが、これを打開する一番の方法は投げ続けること。少し前の時間よりもルアーが動きやすい状況にあるので、スピードをちょっと落としたりとか、より丁寧に動かしたりとかの工夫をしたほうがいいでしょう。

昨日みたいにバンバン出てくる状況ではないので、バイトはそれほどはないと思います。

でも出てきたら多分デカい。一発ドンッと出てくる場面があると思うので、この一発を誘い出すように頑張ってほしいですね。

▲とにかく投げ続ける。力の限りにキャストする。そうしなければ見えてこない世界がある。

田代誠一郎

一発が出たときに根ズレしないように心掛けてほしいですね。あとはラインのチェック。

投げ続けていて釣れない時間が長くなると、ラインやリーダーそのものやラインシステムのチェックを怠たりがち。

釣れないから替えなくていいやと思いがちですけどそういうときこそ、一発ガンっときたときに勝負ができるようにしておきたい。ラインシステムだったり、リーダーのチェックだったりに注意が必要です。

ラインシステムも組み替えて、最後の1時間は自分の中でベスト、というくらいの態勢で、来た魚は絶対に獲るという思いでやってほしいですね。

蒼井さんはアドバイスに従ってラインシステムを組み直し、タックルすべてをチェックして万全を期した。そして、大移動することなく投げ続けた2日間のラスト1時間を力の限りに投げ倒した。

▲今釣行では多くのものを得た、という蒼井さん。次のチャレンジへの糧を得ていくことがレコード更新につながっていくのだろう。

釣行を繰り返し、投げ続けた先に、レコード更新のチャンスが訪れる

蒼井さや

残念ながらレコードチャレンジは失敗です。でも、昨日、今日とバイト数はかなりもらえましたし、キャッチしきれなかった魚もいました。そのなかにレコードを更新できた魚がいたかもしれません。

やはり20kgを超えるヒラマサは簡単には釣れない、釣らせてはもらえない魚だと思います。

まだまだこれからも頑張りたいと思います。あらためてタックルセッティングからルアーセレクトなどを勉強し直して、この海に戻ってリベンジを果たしたいと思います。

ありがとうございました。

釣行のたびにレコードを更新することは至難の業。始めたばかりのアングラーならともかく、15年以上のキャリアがあり、しかも20kgを超えるヒラマサのレコードを更新するのであれば、なおさらだ。

だが、蒼井さんは諦めてはいない。これまでと同じように前を向くだけだ。蒼井さんは、釣行を繰り返し、投げ続けた先に、チャンスが待っていることを知っている。「蒼井さやのレコードチャレンジ」は続く。

蒼井さやさんの玄界灘ヒラマサキャスティング使用タックル

蒼井さやさんが使用していた、2つのタックルセットデータをご紹介する。

蒼井さやさんのタックルセット1(17kgのヒラマサをキャッチしたタックル)

タックル詳細
ロッドSHIMANO/
オシアプラッガー フレックスドライブS83H
リールSHIMANO/
ツインパワーSW1400XG
メインライン【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー] 8号
リーダー【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー140LB
ルアーIIDA/
WOOD CRAFT ビバーチェ160
フックOwner/
C’ultiva スティンガートリブル 3/0

蒼井さやさんのタックルセット2

タックル詳細
ロッドSHIMANO/
オシアプラッガー リミテッドS83M
リールSHIMANO/
ステラSW14000XG
メインライン【VARIVAS】
アバニ キャスティングPE SMP ヒラマサチューン X8 5号
リーダー【VARIVAS】
オーシャンレコードショックリーダー100LB
ルアーIIDA/
WOOD CRAFT ポコアポコ160
フックOwner/
C’ultiva スティンガートリブル 3/0
SHARE
  • URLをコピーしました!

// WRITER この記事を書いた人

VARIVAS製品の情報や実釣レビューを発信中。皆様に釣りをもっと楽しんでいただけるような情報をお届けしていきます。

目次