憧れのジギングターゲット、カンパチ。いつかは膝乗せサイズを釣ってみたい、と願うジギングファンは多いだろう。今回はそんな憧れの魚を釣りまくっているアングラー、蛯子嶺樹さんに、三宅島を舞台にしたタックルセレクト、攻略の基本などを伺った!
三宅島のカンパチジギングについて
蛯子さんが考える、三宅島のカンパチジギングの魅力は?


三宅島のカンパチジギングは狙う水深が浅いので、10kgクラスになってくると、本当に殴り合いみたいなファイトになってくる。ここがものすごく面白いんです。
三宅島は火山島で、島一周全部がなだらかに落ち込んでいく形の島で、基本的には島周りの浅いところを狙っていくスタイルが中心です。
そのため港から船を出して10分という近場ですごくいいポイントがあったりします。
ポイントは島回りのあちこちにいくらでもあります。
もちろん、その中でもやっぱりここだよね、っていうところはありますけどね。





ヒレナガカンパチがメインになる、というところも魅力です。
体感的にカンパチに対してヒレナガカンパチの方が引く印象なんですよね。
カンパチは地形をかなり把握してるんです。だからすごい嫌なところで喰ってくるし、ヒットしたあとは根に走る。
緊急避難ができるところで喰って来てギュンギュンって一気に行くんですよね。
いつでもチャンスがあるところも魅力的かな、と思います。
三宅島は黒潮海域にあるので潮の流れがすごく複雑。
流れないときもありますし、流れすぎるときもあります。仕掛けが立たないくらい走るときもあります。
潮の速さや向きはポイントに行ってみないとわからない。ピンポイントでどんどん変わるんです。
船長としては大変なんですけど、変化が激しい反面チャンスがいつでもある。ここは魅力ですし、面白さだと思いますね。
三宅島のカンパチジギングでのゲストはどういった魚が多いですか?



まずは赤い魚たちですね。キントキ系、アカヤガラとかです。
あとはヒラマサ、キメジ、キハダ、カツオなどの回遊系。
ヒラマサは堤防や磯からは出るんですが、船からでは狙って獲れるほどは喰ってこないですね。


三宅島のカンパチジギングのシーズンや遊漁船の利用形態は?
三宅島のカンパチジギングは周年楽しめるのですか?



オフシーズンはあります。
基本的にシーズンは例年3月末ぐらいから始まり11月くらいまでになります。
ハイシーズンはやはり春。4月頭から梅雨明けまでがベストです。夏は水温次第です。
冬は天候の影響で出船機会が減ることもありますが、釣れなくなるんですよね。
面白いぐらいピタッと止まって、じゃあまた来年ね! となる。
そんなイメージがありますね。どこかのタイミングでその年のフィナーレを迎えるっていう感じです。


カンパチジギングを楽しめる遊漁船はどのくらいありますか?



遊漁船は島に数隻あります。すべてジギングに対応しています。
宿泊施設を経由して予約するのがスムーズで、それ以外では常連になって直接連絡を取るかのどちらかですね。
各船は電話番号を公開していますが、漁の関係で電話が繋がらなかったりするので(笑)。
三宅島のカンパチジギングでのサイズや数のイメージ
カンパチジギングでのレコードや平均サイズは?



僕自身がキャッチしているのは17kgが精一杯ですが、それ以上の魚は数多くいると思います。
2025年はジギングでも30kg前後のサイズが上がっています。
僕も遊漁船の乗り子をやっていて20kgジャスト、というカンパチを確認しています。
かなり昔の話ですが、70kgに迫るカンパチが釣れたという話もあります。
最近ではジギングで30kgクラスは年に1回聞くかどうか、みたいな感じです。やはり掛かっても取れないことが多いんですよね。
ジギングでの壁は15kgから20kgくらいだと思います。





ジギングでのアベレージサイズは3〜5kgくらい。
数はこのくらい、とは言いにくいですが、釣れるときはひとり10本くらいキャッチできることもありますよ。
三宅島のカンパチジギング用タックル
蛯子さんが三宅島で使用しているカンパチジギング用タックルを教えてください。



いつも3セット用意しています。
それぞれの役割としては「勝負どころのスピニングタックル」「喰わせ用のスロージギングタックル」「お楽しみ用のフルソリッドタックル」です。
具体的な製品名はタックルデータをチェックしてもらうと分かりやすいと思います。





殴り合い用のヘビータックルはもちろん必要ですが、勝負用のゴリゴリのPE4号タックルしか持ってない、シャクるジグは200から300gオーバーだけ、となると、釣果的にも体力的にも絶対に厳しいんですよね。
上げで喰わないときに落としで喰ってくることも多いので、スロージギング用タックルもほしい。
それに、お楽しみ用のPE2号タックルもあったほうがいいと思います。
大型を取れるか取れないかっていうところは一旦置いておいて、やはりどうしても喰わないというタイミングはあります。
PE2号タックルであればシャクったときのラインの波動をかなり抑えられますし、ジグの動きもよりナチュラルになります。結果、釣れます。





PE2号と3号ではガクっと太さが変わってくる、と僕は思っています。
どうしてもお土産を釣りたいとか、なんか釣りたいぞっていう時用にPE2号タックルがあると、何かしら釣果につながることが多いですよね。
あとは疲れてきたときにもおすすめです。
休んでもいいとは思いますけど、お楽しみタックルだったら楽にシャクれるし、なおかつ釣れる、という意味でも用意することをおすすめしますね。
メインラインはアバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9を使用
使用しているメインラインについて教えてください。



メインラインはバリバスのアバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9をタックルに合わせて4号、3号、2号を使い分けています。





カンパチジギングで使用するPEラインの選択で一番重視しているのは信頼性です。
カンパチとのファイトでは、ヒット直後は耐えて、耐えて、となるのが基本です。
ここでPEラインに信頼が置けないと強いドラグはかけられません。
とにかく自分が信じられるラインで、出来る限りのトルクをかけて耐える。そのためにもラインの信頼性は大切です。
アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9は発売する前から使わせていただいていますが、とにかく引っ張り強度が高い。
従来のPEラインよりさらにドラグを気持ち1kg、2kg、手元で強く締めても弾けることがない、という安心感があります。
強度以外ではいかがですか?



ラインの直進性が高くてたわみが少ない点もジギングX9の強みです。
船で使うと明確に分かるんですが、ジギングX9を使ってる人と使ってない人で横一列に並んで釣ると、同じウエイトの同じジグを使っていても、ジギングX9の方が速くボトムタッチするんです。
誰が使っても明らかに潮馴染みが良くて、すっと入っていくメリットを感じることができると思いますね。





三宅島のように黒潮の影響を大きく受ける海域のジギングの難しいところは、二枚潮とか、場合によっては三枚潮になったりで、途中で潮に取られて、ラインがたわむことがすごく多いんです。
複雑な潮流の中で当たり前のように釣りをしなければいけない。
そういった時でもジギングX9は他のPEラインに比べて潮馴染みが良く、可能な限りまっすぐになるような形で使うことができるので、ジグアクションにもいい影響があると思っています。
ショックリーダーはアバニ ショックリーダーSMPナイロンを使用
使用しているショックリーダーを教えてください。



ショックリーダーは新しく発売されたアバニ ショックリーダーSMPナイロンを使用しています。
もう少し使い込まないと明確なところまでは分からないんですが、いままでのところの所感としては、伸び率がすごくいい感じです。
オーシャンレコードショックリーダーと比べても、手元で引っ張っただけで感じられるくらい伸びる。
ドラグをグッと締めて思いっきり引っ張った時に、魚が頭を振ってギュンって潜り出すと、瞬間的なパワーがすごく掛かるんですが、そうしたショックを吸収してくれるショックリーダーです。





PEのジギングX9は強いし、アバニ ショックリーダーSMPナイロンはショックをしっかり吸収してくれる。
トータルで強いんです。
ドラグ負荷をしっかり掛けて、体重を掛けたファイトを展開できるので、これまでのタックルセッティングよりも、パワーをゴリゴリに掛けて綱引きができる、そんなラインシステムが組めるようになった印象です。
さらに1歩大きいカンパチキャッチに近づけるようになったと思っています。
ラインシステム、リーダーと接続金具の結節について教えてください。



ラインシステムはFGノット、ソリッドリングとの結節は漁師結び(パーフェクトノット)です。
ノットはスピーディにできる点と、ごちゃごちゃさせないことを重視しています。
なるべくジグをナチュラルな状態で動かしたいので、ソリッドリングも今回は6番を使用しています。
大物狙いのジギングでは、ごついリングを使う方もいらっしゃるんですけど、僕はなるべく抵抗を作りたくないのでギリギリの大きさで調整しています。
ショックリーダーの結節に関しても、歯が鋭い魚を狙わないときはなるべく結び目を小さくできるようパーフェクトノットで結んでいます。


使用ジグのウエイトは150〜400g。厳選ジグを数多く!が蛯子流
蛯子さんが使用しているジグは?



大まかなくくりで言うと、鉛製と鉄製、両方を使っています。
ウエイトは下が150g、上は400gまでを用意しています。





僕のセッティング例ですと、ダイワのスイムチョッパーの230g〜300g。
PE4号のスピニングタックルで使ってもそんなにキツくない。おすすめです。
鉄製ではネイチャーボーイズのウイグルライダー、160g〜300gくらい。あとノーマルのスイムライダーの180g〜230gくらいまでを多用します。
種類の多さより数を揃えたいですね。
当たりカラーとか当たりの重さ、その日その時に釣れるね、っていうジグは絶対にあるので、それが1本なくなった時に釣りが成立しないってことはあるあるなんです。
だから、いろいろなメーカーのジグをあれもこれも、と揃えるよりは、信頼のおけるジグを中心に揃えるほうがいいと思っています。
鉄製ジグは必要ですか?



用意した方がいいと思います。鉄の方に反応が集中する日があるからです。
たぶん比重の軽さによる、喰わせの間の取りやすさだったり浮遊感だと思うんですけどね。
たくさん用意しろってわけではないんですが、そういう日もあるので2〜3本くらいは持っていた方がいいですよっていう感じです。
ジグのことについて質問されるお客様にはそういう説明をしています。





スリムタイプのロングジグもマストですね。
活性のいい時にはこのタイプが一番ハマるので用意してほしいですね。
さらにスローのタックルも持っていきますよとか、そういうちょっとテクニカルなこともできる方であれば、後方重心系、リア重心のバックスライドするタイプのジグをおすすめしています。
メーカーは好みでOKなんですけど、バックスライドが効くんですよね。
失敗することが少ない選び方だと思っています。鉛製はロングジグとバックスライド系って感じです。
2つのタイプの使い分けは?



ロングジグのアゲアゲの釣り、上げて上げて上げての横っ飛ばしで喰わない日は上げてから落とすバックスライド、ギュインていう感じの動きが効くので、上げで喰わせるのか、落とし、バックスライドの落としで喰わせるのか、この2つを基本に考えていくといいと思います。
おすすめのジグカラーなどはありますか?



ゼブラグローはおすすめですね。なぜかは分かりませんが釣れます。
ゼブラは必須ですが、ゼブラではなくてもグローは入っていた方がいいですね。
僕自身、比率的には発光系のジグ7割、光らないジグ3割ぐらいで揃えています。
グローが嫌われる日はもちろんあります。でも、三宅島の場合、それは10回出船して1回か2回くらい。
反対に日によってはゼブラグローしか喰いません、という日もあるので、やはりグローを主体に用意することをおすすめします。


アシストフックについての思い入れが強いようですが。



アシストフックは自分で巻いて、ギリギリのところで調整しています。
なるべくフックで抵抗が生まれないように、結び目も大きくせず、出来るだけ小さくなるようにコーティングしています。
使用しているアシストラインはアバニ オーシャンワークス アシストリーダーSMP。
硬すぎず柔らかすぎずですごく使いやすい。アシストフックの数も大型を狙う場合にはシングルにしています。





ツインフックを使わない理由は、第一に根掛かりが増えるからです。
三宅島は地形がぐちゃぐちゃですごいんです。
いいフィールドなんですけど、海底の地形が複雑で、潮も速くて二枚潮にもなりやすい。着底してもラインは大きくたわんでいたりする。
ジグが海底で揺られてる感じになることが当たり前のフィールドなので、フックを2本とかにすると露骨に根がかり率が高くなってしまうんです。
アシストフックを1本だけにしている理由は?



やはりファイトの時に変なところに掛けたくない、ということが大きいですね。
とくに僕のスタイルだと、ドラグはガチガチでスプールを押さえることもあります。
こういうやり取りをしていくうえでは、フックが2本だと変なところに掛かることは避けたいですからね。
スローの場合でもフロントフック1本だけにしています。カンパチジギングに関してはハイピッチも多用するからです。
スローのタックルでもややハイピッチ気味で動かしたりすることがかなり多い。
やはり前後両方に付けてしまうとエビってしまうことが多くなりますからね。





やはり黒潮海域なので潮に揉まれることも頻発するので前後のフックをセットしてバランスをとった方がいい部分もあるんですけど、それよりも「いまいい反応出てるよ」って言われたときに、しっかり落としてシャクって、エビらずに釣りができる、ってことの方が大事。
トラブル回避のためにもフロント1本でやっていますね。
最終的にはスピリチュアルな話になるんですけど2本あると邪魔なんですよね。
1本で勝負していた方が集中できるんですよね、なぜか。
フックはオーナーカルティバのファイアーフックの6/0、5/0です。
タックルを問わずに使っています。ライトタックルでも喰ってくる魚は変わりませんからね。
一本を釣るためのカンパチジギングの基本
カンパチジギングのベーシックなロッドワークを教えてもらえますか?



魚の機嫌が良ければ、ワンピッチジャークを基本に忠実にやるというのが一番いいですね。
コンビネーションジャークとか、複雑なことは考えずに、きちんとボトムを取って、すぐに底を切って巻き上げ、根がかりを回避してワンピッチジャークをする。
どの釣り、どのジギングであっても共通することをまずきちんとやることです。





具体的な狙い方としては、経験のない方、あんまりやったことないって方は、必ず着底したらハンドル10回転、ハイギアであればだいたい10mくらい底を切る。
底でデカい魚を掛けたらよほどのラッキーでない限り獲れないので、底から10mはなるべくスススッとあげることをおすすめします。
ジグが落ちて行くときにやる気のあるカンパチはついて行っているんですよね。「お、なんや?」って言って出てくる。
それで着底してからの動き出しでスイッチが入ったりする。
逃げるものは追いかけるんでしょうね。その時に下でのんびりシャクっていると、ドンって掛かってプチンッと切られる。
必ず10mくらい底切りをして、そこからワンピッチジャークを始めましょうっていうのが基本的な狙い方になります。これだけで全然釣れます。
初心者、初めての方でもだいたいこれで釣っています。
ハマったぞ、ってなったらいろいろ動画を見たり、自分で試したりとかしながら、誘い方を研究していくといいと思いますよ。
でも、あえてお伝えするなら、まずはきちんとワンピッチジャークをマスターしましょう、ってことですね。
ワンピッチジャーク以外にもひとつくらいはマスターしておいたほうがいいアクションパターンはありますか?



これで喰うなっていうパターンはあって、下から10m、ハンドルただ巻きでもいいですし、ちょっと慣れてる人は超ハイピッチでキュンキュンキュンキュンッて10回上げて、底切りと同時に誘いも入れます。
そこからパーンって飛ばして誘ったり、ちょっとスローテンポでポンポンポンッと左右にジグを飛ばすと、ワン、ツー、スリーでドンッと来ることが多いので試してほしいですね。
オレはシャクりには自信があるぜっていう方には、このハイピッチの後のスローの見せ方を意識してあげることをおすすめします。
スピードの緩急にカンパチは敏感ですからね。
お手軽テクニック、という感じですね。スリムタイプの潮抜けのいいジグが動かしやすくておすすめですね。


蛯子さん使用のカンパチジギング用タックルデータ
実釣取材時に使用した蛯子さんのタックルを紹介!
勝負どころのスピニングタックル
タックル | 詳細 |
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ロッド | ネイチャーボーイズ/ アイアンウィルIWPS-595W+PF |
リール | 25ソルティガ8000-H(ロングハンドル) |
メインライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 4号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 120lb |
喰わせ用のスロージギングタックル
タックル | 詳細 |
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ロッド | ヒシモ/ ソルダムゴーストSOMG-B586 |
リール | シマノ/ オシアジガー2000HG |
メインライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 3号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 80lb |
お楽しみ用のフルソリッドタックル
タックル | 詳細 |
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ロッド | ダイワ/ ソルティガLJ 62XXHS TG |
リール | シマノ/ ツインパワー4000PG |
メインライン | 【バリバス】 アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 2号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 60lb |
遊漁船の問い合わせ
民宿「いけ吉」
TEL:04994-8-5743