一瞬で、しかも一発で正確なキャストが要求されるキハダのキャスティングゲーム。その成功の鍵を握るひとつの方策として、“いかにライントラブルを起こさせないか”が重要となる。
そのためにアングラーは、「ライン」に関することだけでもいくつもの注意すべき要素があるという。そこで、キハダキャスティングタックル準備の基礎知識|糸巻編では、準備の際に知っておくと有益なラインに関する様々な知識を椙尾和義さんに紹介してもらった。
キハダキャスティング 糸巻きの基礎知識

昨年12月の冬のキハダ釣行「冬の南房沖~相模湾|サンマパターンの激アツキハダキャスティングゲーム!概要とタックル、実釣編」で、見事一瞬のチャンスをモノにした椙尾和義さん。
「釣行したのが本格シーズン前ということで、状況的にチャンスは一瞬であり、しかも一日に一度あるかないか程度と覚悟していましたので、絶対に一発で掛けなければならないし、バラしてもならないと思いました。ヒットさせ、キャッチできたのは信頼できるライン、ノット、タックルと、すべての準備を確実に行ったおかげだと思います」と語る。
準備は、その釣行の成否のかなりの割合を決めると言っても過言ではない。とりわけキャスティングゲームにおいては、ラインの重要度は高い。
クロマグロやヒラマサなど数々のビッグフィッシュと渡り合ってきたVARIVASフィールドスタッフ椙尾和義さんに、PEラインのリールへの巻き方について聞いていく。
まず、ラインを巻く際に気を遣いたいのは、テンション(力)の掛け方と、テーパー形状だという。

PEラインをリールに巻く際、掛けるテンションはどれぐらいが適正?
椙尾和義PEラインをリールに巻く際に適正とされるテンションは、PE5号以上であれば“号数×500g前後”です。
これを目安にテンションを掛けて巻けば、ベストな状態でラインを巻くことができると思います。
その際、製品(PEライン)のスプールとリールのスプールの間に、テンションを掛けられる器具(IK500/スタジオオーシャンマーク、カチカチテンショナー/第一精工)などを入れているとよいでしょう。

適切なテンションで巻くための器具。左がIK500、右がカチカチテンショナー。

製品(PEライン)のスプールとリールの間に、テンションを掛けられる器具(今回はカチカチテンショナーを使用)をセットする。

PEラインを巻く際に適正とされるテンションは、PE5号以上の場合は号数×500g前後。今回は6号を巻くので、6号×500gで3㎏となる。

PEを巻く際は、必ず最初にラインコーティング剤でラインを濡らす(PEにシュッ!プロ仕様がおすすめ)。こうすることによって、巻き上がり時にラインが締まってくれる。

濡らす際は大量にスプレーするのがコツ。そして、しばらく放置して中までしっかりと浸透させる。

ラインの中間あたりまで浸透しているのがお分かりだろうか。もうしばらく放置して、しっかりと下まで浸透させよう。

巻くときは慌てず、焦らず、ゆっくりでいいので、一定のテンション&一定のリズムで巻くことを心がけよう。
PEラインをリールに巻く際に注意すべきことは?
椙尾和義リールにPEラインを巻く際に必ず確認していただきたいのは、スプールに巻かれたラインの形状です。
普段使っているラインの号数を、たとえば5号から6号に、6号から8号に変えるとします。
そのとき、巻き形状が変化してしまうことがあります。
つまり、テーパー形状、逆テーパー形状にならないようにしてください。理想はフラットです。
これは、糸巻きの途中で常に形状を確認しながら、リールに付属されているワッシャーを抜いたり足したりしながら整えます。
これはぜひしっかりとやっていただきたいと思います。

リールには必ず糸巻き形状を調整するワッシャーが付属している。くれぐれも間違って捨ててしまわないように!

ワッシャーは厚みの異なるものが入っている。この微妙な厚みの違いを利用して、適切な巻き形状へと仕上げていく。
糸巻き形状の調整方法
糸巻き形状の調整方法は、状態によって対応が異なります。
ラインがテーパー形状(台形)になってしまうときは、スプールの根元部分に巻きすぎて膨れてしまうという症状。このときはワッシャーを抜きます。ワッシャーを抜くと、スプールが奥まで沈む格好となるので、スプール前部にまでラインが巻けるようになります。
逆テーパー形状(逆台形)、つまりスプールの前部にラインが巻かれすぎてしまう症状のときは、スプールを前(上)のほうに持ち上げたいので、ワッシャーを足します。
ワッシャーの種類についても、厚いもの、薄いものとありますので、テーパーのつき方を見ながら調整するとよいでしょう。
また、ショップで巻いてもらう場合も、必ず巻き上がりをチェックしましょう。もし、巻き形状が適正でなければ、巻き直しを依頼したいですね。
一番よいのは、巻いてもらっているときにその場に自分もいて、巻き形状を一緒に確認することです。

ラインを50mほど巻くと、適切なテーパー形状にならない場合はその予兆が出てくる。付属のワッシャーで調整しよう。

糸巻きを進めていくと、リールのスプールが太くなることによってテンションが強まってくる。時々テンショナーの強さを調節しながら作業しよう。
なぜ糸巻き形状に気を遣う?
椙尾和義糸巻き形状が整っていなければ、キャストした際にトラブルが起こりやすくなります。
代表的なのは、エアノットができやすくなってしまうことです。
または、ラインの放出がイレギュラーを起こしてしまい、ガイドに絡みついてしまうことも起きやすくなります。
さらには、スプールにラインが収まらずに、スプールの外にラインが巻かれてしまうこともあります。
ラインがリールに適正に巻かれていなければ、こういった症状が起きやすくなりますので、貴重なチャンスをモノにするために、糸巻き形状にも気を遣っていただきたいと思います。


意外と見落としがち? ロッドガイドとラインローラー
釣りの準備において、意外と見落としがちな事柄がふたつあると椙尾さんは言う。それが、ロッドガイドにクラックが入っているか、そしてラインローラーがきちんと回転するか、のチェックだ。
どちらもライントラブルに直結する。ぜひ釣行前には行うようにしたい。

ロッドガイドの傷は指で触っただけでは分からないことも多い。準備の際にカッターの刃を当ててチェックしよう。

ラインローラーはラインを通して引っ張ってみて、スムーズに回転すればOKだ。
ロッドガイドとラインローラーはどうやってチェックする?
椙尾和義ロッドガイドのクラックはいつの間にか入ってしまっていることがあり、案外気がつきません。
そのまま釣りをしてしまうと、キャストしたり魚がヒットしたりした瞬間にラインがスパッと切れてしまうことがあります。
釣行前などタックルの準備をする際、カッターの刃でガイドの内側をなぞって傷などが入っていないかチェックするとよいでしょう。
傷は指で触っても分からないことが多いので、必ずカッターの刃で行うことをおすすめします。
ラインローラーは、ラインを通して引っ張ってみて、ローラーがスムーズに回転すれば問題はありません。
ただ、シャリシャリといった異音がする場合は、オイルが切れていたり錆びていたりすることがあるので、点検や交換することをおすすめします。
不具合がある場合はメーカーへ修理またはオーバーホールを依頼しましょう。

替えスプールがあると超便利
今回、椙尾さんはタックルを予備含め3セット持参した。だが、そのように何セットも用意することは難しいという場合もある。そんなときにおすすめなのが、「替えスプール」だ。
替えスプールを持参するメリットを教えてください。
椙尾和義タックルは予備を含め何セットか用意できればいいですが、なかなか簡単ではないと思います。
そんなときは「替えスプール」があると非常に便利です。
何台もリールを購入するより経済的ですし、現場でライントラブルに遭ってしまったときにもスプールだけを交換するだけですので素早く対応可能です。
また、予備という意味でのメインと同じ号数を巻いた替えスプールはもちろんのこと、ラインの号数を変えた替えスプールも用意できれば、跳ねが大きそうだから6号から8号にして大型に挑む、といったことも現場で即座に対応できます。
そして、その替えスプールは、バリバスからスプールケースが発売されていますので、それに入れておけばラインやリーダー、そしてスプール本体を傷や衝撃から守ってくれます。
絶対必須! ノットの練習と確実な習得
準備において、絶対に外せないのが「ノット」。これができなければ、釣りそのものが始まらないと言っても過言ではない。

どんなノットがおすすめ? その習得方法は?
椙尾和義ショックリーダーを繋ぐノットは私の場合はFGノットですが、FGでも16ノットでも、ミッドでもPRでも、自分の好きなもの、作りやすいもの、自信が持てるものでいいと思います。
そういうノットをひとつ確実にマスターしておきましょう。
ノットを確実に習得するためには、とにかく練習するしかありません。
バリバスではノット大図鑑を展開していますので、そちらをぜひ参考にしていただければと思います。
どんなに高性能なPEラインやリーダーを使ったとしても、ノットがラインに適した強度が出ていなければ、その性能を活かすことはできません。
またノットは、風が吹こうが雨が降ろうが波を被ろうが、いかなる状況であっても船上で組めるようにしておく必要もあります。
いくら替えスプールを持参しているとしても、それをすべて使い尽くしてしまったらノットを組まざるを得ないからです。
ラインにちょっと傷が付いていて、これでいいかな、と投げてしまう人は、これでいいかな、までの魚しか釣れません。
そのときにしっかりとラインシステムを組み直せる人が、デカい魚を釣ることができる人だと思います。
釣りは、道具選び、準備から始まっています。それが成否の8割を占めると言っても過言ではありません。
そこも楽しんでいただけたらと思います。釣りの準備って、ワクワクして楽しいですからね!

