トラウト フィールドレポート

黒部源流釣行『憧れのイワナ』-1日目-

北アルプスのほぼ中央部に位置する鷲羽岳に源頭を構える黒部川。急峻な山脈に挟まれ、流域の約8割は山岳地帯に存在し、源頭から日本海に注ぐまでの約85kmで標高差2,800mを一気に駆け下る。

黒部の渓谷といえば、以前は一部の登山者しか入ることが許されなかった山域でしたが、黒部ダムの建設により立山黒部アルペンルートが整備され、現在では外国人も多く訪れる国内有数の観光スポットになっています。黒部ダムまでは比較的アクセスしやすくなりましたが、黒部ダムより下流部の『下ノ廊下』、黒部湖より上流部の『上ノ廊下』、薬師沢から源頭部にかけての『奥ノ廊下』は現在でも登山や沢登りのスキルがなければ立ち入ることのできない山岳渓谷となっており、登山者や渓流釣りを嗜む者の「憧れの地」となっているのではないでしょうか。

ちなみに…両サイドが切り立った岸壁に挟まれた流域を『ゴルジュ』と言い、そのゴルジュが長く続くエリアを『廊下』と言う。黒部川の激しい流れが、何万年もかけて少しずつ岩肌を削ってできたのが黒部渓谷なのであります。

少し前置きが長くなりましたが、今回9月17日~19日の3連休に黒部源流釣行へ挑戦する機会を得ることができたので、2泊3日の行程で挑戦することとなりました。



当初はテント泊での釣行を予定していましたが、立て続けに発生していた台風や本州上に停滞した秋雨前線の影響により、初日は夜から雨。2日目は1日中雨。3日目の最終日は午後から回復する予報。山岳地帯だけに予報ですらコロコロ変わる状況で、降水量もどの程度か予測できない状況だったので山小屋で宿泊しながら釣りをするプランに変更。テントやマット、シュラフなどを装備から省き、少し軽くなったといっても15kgを超えるザックを背負っての出発となりました。扇沢駅から乗車距離、区間で換算すると日本一料金が高いと言われている関電トロリーバスに乗車し、黒部ダムに到着。毎秒10tの放水は圧巻でした。



始発の時間帯は観光客がほとんど居らず、大きなザックを背負った登山者が目立ちますが、その登山者もほとんどがアルペンルートを乗り継ぎ、立山に向かう人ばかり。奥黒部方面に向かうのは、ボクと友人の2人だけでした(笑)




コースタイムでは3時間半ほど湖沿いに林道を歩けば、最初の休憩地点『平乃小屋』へ到着するのですが、徹夜の運転にアップダウンの多い登山道にヘロヘロ状態。



黒部湖を観光する遊覧船が何度も目に入り「乗せて貰えたらどれだけ楽だろうか…」と頭をよぎるも、遊覧船にそんなサービスはありません(笑)

奥黒部から先は、10時間ほど水場もエスケープルートも無い『読売新道』という厳しいルートと、エキスパートの沢屋さんでも突破するのに2日も3日もかかる渓谷『上ノ廊下』が待ち構えている。これくらいのことでヘコたれていては、これから先で遭難するのが目に見えています。



林道の脇に生えるキノコや、カエルのお出迎えを受けながら、慌てずゆっくり進みます。

奥黒部に向かうには、渡し船に乗って黒部湖を一部横断する『平の渡し』に乗らなければなりません。10時の渡し船に乗りたかったのですがペース的に間に合わないので、少し沢を降りて釣りをしてみました。すると、わずか数投でニジマスがヒット!



30cm後半はありそうな良型のニジマスが簡単に釣れて幸先良さそうです。




このまま続けると夢中になってしまいそうなので、早々に切り上げて先に進み、『平の渡し』に到着。12時の渡し船が出るまで、しばらくの休憩。湧き水で冷やしたカルピスソーダがメチャクチャ美味しかったです。



時間になり渡し場へ。丸太で組まれた足場を下り、船に乗り込みます。



乗船名簿に記入し、対岸へ向かっていると…魚がヒット!? 平乃小屋三代目ご主人、渡し船でトローリングしています(笑)



良型のニジマスが2匹釣れていました。



普通に渡れば5分ほどの距離だと思いますが、トローリングしていたので20分近くかかってます(笑)。急いでいる人にとっては「早く進んでくれ~~~」と思うかも知れませんが、登山者の方々への余興でしょうか。みんな笑顔になっており、ボクも見学できて良かったです。

渡し船で対岸に到着すると、本日宿泊する予定の奥黒部ヒュッテまでは約2時間。しかしこれまでの疲労の蓄積、一層アップダウンも多くなり、なかなかペースが上がりません。



何度も崩れては架け直されている丸太橋。整備してくれている方々には頭が下がります。しばらく進むと黒部湖のバックウォーターエリアが見えてきました。



エメラルドグリーンの綺麗な湖。釣れそうな雰囲気が漂っていますが、目指す所はまだまだ先。相変わらず延々と続くアップダウンの激しい足場を何度も越えて行きます。



夜から雨が降る予報でしたが、平乃小屋で得た情報では、雨の予報が早まって15時頃から降り出すとか…

湖からバックウォーターを抜け、やっと渓流らしい雰囲気の所までたどり着いたにも関わらず、無情にも雨が降り出しました。



このまま降り続けば、あっという間に増水するかも知れない…。今日、釣りができなければ、ココまで来て明日も釣りができないかも知れない…。まだパラパラと降ったり止んだりを繰り返している状態だったので、残っている体力を振り絞り先を急ぎます。

何とか本降りになる前に、今回のベースキャンプになる奥黒部ヒュッテに到着。



宿泊の手続きをしている間に雨脚が強くなってきました。荷物を部屋に置き、ダッシュで釣りの準備を済ませ、いざ出陣! 雨脚が強くなったり弱くなったり、不幸中の幸いか雨の止み間にも恵まれました。

沢を少し上がった所に小規模な滝があり、釜場にイワナらしき魚の姿が数匹確認できますが、ミノーでは水深が届かずイワナも頭を上げきらない状況。滝の中に直接5gのスプーンを撃ち込んで、ボトムからゆっくりと巻き上げると魚が追ってくるのが確認できる。スレるのが先か…口を使わすことができるのが先か…ツバを飲むのも忘れるほど慎重にアプローチを繰り返していると…「ククンッ!!」

ヒット!!

水面で体をくねらせながら必死の抵抗をみせるイワナ。手前にある足元の岩をかわして無事ネットイン。



普段はソルトルアーをメインにフィールドテスターをさせて頂いておりますが、渓流の釣りは始めて2年。地元の関西ではアマゴをメインに釣行を重ねてきました。場所を選べばイワナも釣れますが、あえてイワナの多い沢へは行かずに我慢。

怪魚ハンター小塚拓矢さんが「初めては特別」と書いているのを拝見し、その言葉がずっと頭の片隅に残っていました。



一度は黒部の源流で釣りをしてみたい。と渓流釣りを始める前はただ漠然に思っていただけのことでしたが、釣りだけでなく登山や沢登りのことも勉強し、何度か国際山岳ガイドの講習会にも参加し、自分なりの努力はしてきました。どうせ釣るなら最高の思い出にしたい…初めてのイワナは黒部で釣ってやる!という目標の一つが叶いました。



ヤマトイワナとかニッコウイワナとか種類なんてどうでも良いんです。黒部のイワナなんです(笑)

しばらく余韻に浸りながら、まだ暗くなるまで時間があるので釣りを続けます。


上ノ廊下の入り口で釣りをする友人


本来なら翌日は上ノ廊下を遡行し、下ノ黒ビンガあたりまで釣り上がりたかったのですが、自然には敵いません。

明日は結構な雨が降る予報なので、無理は禁物。毎年それで何人もの方がお亡くなりになっているのが現実です。仮に今回全く釣りができない状況だったとしても、また来れば良い話なのですが…。ココまで苦楽を共にしてきた友人も、無事に黒部のイワナと出会うことができました。



その後、だんだん雨脚が強くなっていく中で、ボクが2匹、友人も2匹釣ることができ、初日の釣りを終えました。



山小屋の消灯時間は早く、20時には電気が消えてしまうとのこと。釣りから帰って片付けをし、ご飯を自炊する頃には19時を回ってあと1時間しかない(笑)

山小屋でビールを購入し、収穫することができた黒部のイワナをお刺身で頂く。スマホの電波も届かない山奥で、普段の喧騒から離れた至福のひと時。




体は疲れきっていましたが、心地よい充実感に包まれながら布団に入ると、いつの間にか眠りに就いておりました。

2日目に続く…)


[タックルデータ]
ロッド: 5'1'' 渓流ルアーロッド
リール: シマノ カーディフCI4+ C2000HGM
ライン: VARIVAS スーパートラウトアドバンス マックスパワーPE 0.6号
リーダー:VARIVAS トラウトショックリーダー 4LB.
ルアー: スミス ヘブン 7g

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