宮城県牡鹿半島で挑む、春のヒラマサキャスティング開拓釣行 最前線

年を追うごとに北限が上昇するヒラマサキャスティングフィールド。宮城県牡鹿半島周辺も今後の展開が注目される有望フィールドのひとつ。

本記事では新規ポイントの開拓とサイズアップをテーマに、2回目となるチャレンジを敢行。釣行の模様をレポートする。

目次

【前回の回想】2024年11月の宮城県牡鹿半島ヒラマサキャスティング開拓釣行

宮城県牡鹿半島沖のヒラマサキャスティングを取り上げるのは今回で2回目となる。下記1回目の釣行では8kgのヒラマサをキャッチしている。

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まったくの未開拓フィールド、というわけではない。10年以上前から乗合船の出船はあり、3~5kgクラスと小型ながらも実績は多数あった。

しかし、全体として出船回数が多いとはいえず大型が頻発しているわけでもない。10kgオーバー、15kgオーバーがキャッチされた、定置網に20kgクラスが入った、という「話」はあっても手応えの薄い情報ばかりであったのも事実だ。

前回の釣行でキャッチした約8kgのヒラマサ。「翔英丸」のヒラマサキャスティングレコードというが、
ルアーにアタックしてきた15kgクラスと思われる魚体も確認できた。

ならば挑戦してみよう、と前回挑んだのが2024年11月初旬のこと。アングラーは椙尾和義さん。牡鹿半島の北側のエリアを中心にトライした。翔英丸の佐藤英治船長によれば当地のヒラマサキャスティングは春が中心で秋は初挑戦に近い、とのことだった。

悪天候もありワンデイでの挑戦となったが、それでも3~5kgは多数。連発する場面もあり、最大で約8kgをキャッチすることに成功した。

しかし、それ以上の収穫は明らかに15kgクラスと思える魚がダイビングペンシルにアタックする姿を確認できたこと。この魚は残念ながらフックアップしなかったが、ビッグサイズの存在を目の当たりに出来た事実は大きかった。

手応えを感じたのは佐藤船長も同様だった。我々の挑戦後、冬が訪れるまでに数回、ヒラマサキャスティングで出船。

3~5kgが中心ながら7~8kgクラスもまじえ、秋シーズンの手応えを確実にした、という報告も得ることが出来た。

前回の釣行では実績ポイントを中心に、ヒラスズキを釣るようなイメージでシャローエリアを攻めていった。
今回はより深場へのアプローチがテーマのひとつだった。
椙尾和義

フィールド全体のイメージとしては至るところがポイントだらけ、開拓の余地がありすぎる、という気がしました。

今後、やればやるだけ、どんどん良くなっていくのかなと思います。 今日以上にバイトが出る日もあると思いますしね。

浅いところを中心に、比較的沿岸部、陸地の近くを流してもらいましたが、少し離れた沖の方に根があるなら、そちらもやってみたいですね。

前回の釣行後、上記のような感想を口にした椙尾さん。そこで、我々としては初となる、春シーズンに牡鹿半島を再訪することになった。

牡鹿半島周辺のポイント開拓&ヒラマサのサイズアップが目標に2回目の挑戦

釣行前、椙尾さんに今釣行における彼自身のテーマを確認した。

椙尾和義

前回やった牡鹿半島の北側エリア、その深場のポイント開拓。それに前回、手をつけられなかった近場、仙台湾のポイント開拓ですね。

前回は初めてのフィールドだったこともあり、反応が良かったほぼ同サイズのルアーばかり使ったので、今回は少し大きめのルアーや潜航レンジを変えたルアーも試してみたいですね。

ルアーメーカー、サプライズを主宰する椙尾和義さん。キャスティング&ジギング、海水&淡水と守備範囲が広いマルチアングラーだ。
ヒラマサキャスティングも得意ジャンルのひとつ。

釣行初日は牡鹿半島の先端周りを釣った。港から1時間ほど走り「網地島」を望むポイントから流し始めた。

水温は13度台と低かった。佐藤船長によれば、より北側に位置する昨年のメインエリアはさらに低く、11度から12度台ではないか、ということだった。

今回は椙尾さんに加え、仙台市の「キャスティング 泉バイパス店」に勤務する、鷲尾優樹さんも参加した。マグロ、ヒラマサキャスティングに熱くなっている若きアングラーだ。

地元の仙台市から参加してくれた鷲尾優樹さん。近年のメインターゲットはクロマグロ&キハダ。ヒラマサ狙いでは日本海側へ向かうことが多い、という。

流し始めのポイント、船下の水深は60m~70m台だった。ここからトップ30m台の根に船を流し込んでいく。以前はジギングでよく釣果を得たポイント、という。翔英丸としてはキャスティングでは初挑戦だ。

状況はいわゆるベタナギ。潮なく風なく。まったりとした時間が流れていく。2人がキャストするルアーに反応はない。ポイント移動を繰り返すが、柔らかな日差しが注ぐ海上では、静かに時間だけが過ぎていった。

釣行初日は牡鹿半島先端に点在する島周りを釣った。沈み根の周囲をダイビングペンシルをキャストして誘い出す、定番のスタイルだ。
椙尾和義

それほど潮が流れている感じでもないので、いろいろ試しています。

ちょっと早めに引いたり、ルアーが泳ぐスピードギリギリくらいで遅く引いたりとか、スピードを変えたりしています。

タックルセレクトも含めて、何が正解かわからないのでいろいろやっている状況です。

開拓的な釣りなので、ひたすらやり続けるしかないですね。

春の代表的ポイント、仙台湾の大根でキャッチしたヒラマサ

午後になり、船長は牡鹿半島先端エリアに見切りをつけ、水温が高いという仙台湾へと戻った。

実績大のポイント「大根」の水温は17度前後をキープしていた。このときには北よりの風が強さを増していた。

微風で潮もほとんど流れなかった初日の前半戦。ラフコンディションが吉と出ることが多いヒラマサキャスティングでは悪条件と言えた。

佐藤船長によれば当地の春ヒラマサは大根に群れが入るのがスタートの合図という。

佐藤英治

大根が一番可能性あるかも知れませんね。大根が17度前後なら七カ浜沖にも入っているかも知れません。

有名ポイントなので開拓、という感じではないですが、まずは魚の顔を見たいですからね。

大根は相応の規模がある根だ。船長によれば3~4mのトップが2つある、という。

船下11m前後から根のトップに向かって流し始めた。ひたすらキャストを続ける2人のアングラーに変化があったのは、夕陽を浴び始めた頃だった。

突如、という感じで鷲尾さんのロッドが絞り込まれた。小型ではあったが今回初のヒラマサが無事ネットに収まった。一時的に強まっていた北東風が止み、船の流れ方が変わったタイミングでのヒットだった。

何の前触れもなく…、という感じでヒットした待望の1尾目。オオマサに備えたタックルには役不足、でも嬉しい1尾だった。
鷲尾優樹

ソウルズのデビルワン、145mm48gをロングジャークしていました。

ちょっと目を離したタイミングだったので、勝手に掛かった感じです(笑)。

割と近く、おそらく自分から20mくらいのところでヒットしたと思います。

使用したPEラインはアバニ キャスティングPE SMP X84号、ショックリーダーがアバニ ショックリーダーSMPナイロン80lbです。

このリーダーは柔らかくてすごく結びやすい。誰でも扱いやすいショックリーダーだと思います。

小さいですね、と言いながらも貴重な1尾に思わず破顔の鷲尾さん。ひたすらキャストを繰り返して手にした、安堵をもたらしてくれたヒラマサだった。

夕マヅメに向かってのチャンスタイムか? と期待が膨らんだが、それからの反応はなく、ストップフィッシングを迎えた。

椙尾和義

前半戦に釣った牡鹿半島の先端付近は海底の形状もかなりゴツゴツしていて、条件さえ合えば期待できそうなところだな、と思いました。

水温が低くて厳しい状況でしたが、上昇すれば、夢があるところだと思いますね。

後半戦に釣った仙台湾は水温も高くて、前半戦とはまったく違う環境だったと思います。

サイズはともかく、唯一魚を見ることができたということはプラス要素だと思いますね。

明日は仙台湾を中心に釣る、ということなのでガンガン投げていきたいと思います。

日没近くまでキャストを繰り返した。可能性のあるポイントは絞られた。明日はその周辺を叩きまくるだけだ。

ラフコンディションに期待が膨らんだ2日目だったが…。

釣行2日目は初日にヒラマサの反応があった大根から攻め始めた。

佐藤英治

ある程度分かってはいましたが、やっぱり牡鹿半島周りはまだ水が冷たくて、シーズン的に早いのかなって印象です。

本当はこれまでやったことがない、水深の深いポイントで魚を出したかったんですけどね。

でも、仙台湾は水温もありますし、とりあえず魚はいたので、ヒットしたポイントの周辺をみっちりやりたいと思います。

今日は北東風が強い予報なので牡鹿半島周りは厳しいですしね。

2人のキャスト回数はどれほどだったろうか? 大きな移動を繰り返したわけでもないので、相当な回数であったことは間違いない。

初日は後半戦こそ風が吹くタイミングもあったが、基本的には穏やかな一日だった。しかし、2日目の天候は一転。ときおり10mに近いと感じるほどの北東風が続き、雨もまじる展開だった。

ただ、ヒラマサキャスティングに関してはラフな状況はプラス要因と言える。一般的にベタナギより荒れ模様のほうが期待が高まる、という感覚にうなずくアングラーは多いだろう。

穏やかな海況とラフコンディション、椙尾さんは釣り方に関して注意している点があるのか、尋ねてみた。

椙尾和義

波っ気のあるときはルアーを引くタイミングに気を配りますね。波のピッチに注意します。

波のトップにルアーがあるときに強く引くと水面から飛び出ちゃいますからね。まあ、飛び出るのもアクションのひとつ、とも言えますけどね。

それでも、波のリズムを見ながらルアーの動きのペースを変えないようにするのが基本でしょう。

逆に昨日のようにぺったりした海面の状況で、潮が流れていないときなどは、強く引きすぎちゃうと変にルアーだけが動く感じになります。

とくに止水状態になったときはルアーのいいアクションが出せるように、引く力の調節は注意していますね。

ルアーをどう引くかっていうよりも、ルアーがどう動いているのかを考えることが一番大事。

強く引くか、弱く引くかは別にどうだっていい。ルアーがしっかり動いていれば引き方はなんでもいいですね。

ルアーが自分の理想通りに動くのがベスト。動きはルアーが教えてくれる。

引き方はルアーに教わってくださいって感じです。

ロッドワークはあくまでもルアーを動かすための手段。ここを忘れてしまっては機械的な動きを繰り返すだけになってしまう。要注意と言える。

試行錯誤を繰り返した。考えられる手は尽くした。そのうえで休むことなく投げ続けた。

シンキングペンシルに3尾のヒラマサがチェイス!

スタートしてほどなく、椙尾さんがキャストしていたシンキングペンシルに、ヒラマサからの反応があった。小型ながら3尾が競うようにルアーをチェイスしてきたのだ。

椙尾和義

ミディアムスピードくらいですかね、場所が良かったのか、スピードがよかったのかは分かりませんが、とにかく3尾ついてきた。

いい傾向ですね。潮がけっこう濁っているのではっきりは見えませんでしたけど、ヒラマサだと思いますよ。

トップにあまり反応がない、または波っ気があるときに多用するというシンキングペンシル。今回の釣行でも登場させる機会は多かった。

初めてのヒラマサからの反応に、船上は活気づいた。しかし、それからまた沈黙が続いた。そしてその沈黙はとても長いものになった。

厳しい状況でも2人のアングラーはキャストの手を止めることなかった。試行錯誤を繰り返した、ということだが、椙尾さんがシンキングペンシルを多用していたことが気になった。

シンキングペンシルを使ったパターンは近年、ヒラマサキャスティングで欠かせない攻略法のひとつになりつつある。

椙尾和義

シンキングペンシルはトップに出づらい状況や、ちょっと波っ気があるときにいいかなと思っています。

使い方の注意点としては巻くスピード。ルアーが自分の理想通りに動くスピードを見つけてもらいたいですね。

このスピードは潮流の速さなどによって全然違ってきます。

同じペースで巻いていても自分に向かって流れる潮流の向きなのか、離れていく潮流の向きなのかでルアーの動きは変わってきます。

このあたりの調整はぜひやって欲しいですし、ジャークなどを加えるのも全然ありだと思います。

プラグだからとかジグだからって気にする方もいらっしゃいますが、魚にとってはただのルアー。

だからシンキングペンシルをメタルジグみたいに使ってもいい。

ジャークしてもいいし、ジャカ巻きもあり。プラグだ、ジグだ、と分けるのではなく、ひとつのルアーとして使ってもらうといいと思います。

水深に関してもとくに目安はありません。

100m沈める、というのは現実的ではないと思いますけど、表層や中層を引いてもいいわけで、何mでも自由に使っていただければと思います。

ときには本降りの雨に叩かれた釣行2日目。諦めない2人のアングラーの姿勢には脱帽。

大根周りを中心にしつこく、しつこく攻めた。群れが岸寄りに入っているかも、と七カ浜沖も探ってはみた。

しかし、2日目は午後になり鷲尾さんがバイトを得たのみで、ストップフィッシングを迎えてしまった。結果、2日間を通してヒラマサからの反応があったのは大根のトップ周りのシャローエリアだけだった。

椙尾和義

2日間、投げ続けましたが、期待したような展開にはなりませんでした。船長にもしつこく、いろいろやってもらったんですけどね。

2日目はラフコンディションではありましたが潮はあまり流れていませんでしたし、北東風の影響が大きかったのか水温も昨日より下がってしまいました。

ただ、ベイトはいっぱいいたし、もうちょっとすれば群れがしっかり入ってくるのかなと思いました。全体的にはヒラマサの数が少ないような感じがしましたね。

鷲尾さんが釣ったヒラマサや自分のルアーをチェイスしてきたヒラマサのような小型サイズであれば、シーズン的にはワーッといてもいいようにも思うんですけどね。

黒潮の大蛇行が収まりつつある影響かどうかは分かりませんが、ちょっと遅れているのかな、って印象です。

でも、魚がいないわけではない。これから群れが入ったり出たりするのでしょう。

いいタイミングでやれれば深場のポイントも面白いんじゃないかな、とは思いますね。

外房や常磐沖などのヒラマサフィールドで春の主役となることも多い小型のヒラマサ。
数釣りが楽しめることも珍しくないが、今回は単発で終わってしまった。

2024年、1回目の挑戦は短時間の釣りながらも上々の首尾だった。ただ、時間の制約もあったため、探り切れなかったポイント、獲り切れなかったサイズといったテーマは残った。

心残りを解消するため、異なるシーズンの手応えを感じるために、今回2回目のチャレンジを実行した。結果は望んだものに遠く及ばなかったことは事実だが、釣れないということ自体はとくに珍しいことではないだろう。名手の椙尾さんをしても毎釣行釣りまくり&記録更新というわけではもちろん、ない。

遊漁船が用意してくれたプランを利用して釣るのはもちろん楽しい。釣果も安定感があるだろう。

しかし、それだけでは見逃してしまうフィールドの魅力もある。バリバス オフショアコンテンツで、船長を口説いてまで開拓釣行を繰り返すのはフィールドの可能性を(再)発見し、その魅力を拡げたいから。

バリバス オフショアコンテンツではこれからも牡鹿半島に限らず、開拓的な釣行を続けていく予定だ。また、宮城県をはじめ東北在住のアングラーも積極的に牡鹿半島のヒラマサキャスティングに挑戦していただきたいと考えている。

そして、釣果があれば報告いただきたい。我々はまだ同地のヒラマサキャスティングの魅力を伝えきれずにいる。ともにフィールド開拓を行っていただけると幸いだ。

椙尾さん使用のヒラマサキャスティング用タックルデータ

実釣取材時に使用した椙尾さんのタックル。今回は3セットを使い分けた。

とくにメインとしたタックルはなかった。ヒットへの手掛かりを得るためにも次々と持ち替えていたのが印象的だ。

宮城県ヒラマサキャスティング用 タックル1

タックル詳細
ロッドシマノ/
オシアプラッガー ライトコンセプトS83ML
リールシマノ/
ステラSW8000HG
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMP X8 3号
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 60lb

宮城県ヒラマサキャスティング用 タックル2

タックル詳細
ロッドシマノ/
オシアプラッガー フルスロットルS83M
リールシマノ/
ツインパワーSW10000HG
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMPヒラマサチューン X8 5号
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 100lb

宮城県ヒラマサキャスティング用 タックル3

タックル詳細
ロッドシマノ/
オシアプラッガー リミテッドS83MH
リールシマノ/
ステラSW14000XG
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMPヒラマサチューン X8 6号
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 100lb
メインラインはアバニ キャスティングPE SMP X8、アバニ キャスティングPE SMPヒラマサチューン X8を使用。
マグロ狙いなどでも使用し、絶大な信頼を置く相棒たちだ。
今回使用したショックリーダーはリリースされたばかりのアバニ ショックリーダーSMPナイロン。
椙尾和義

しなやかで伸びがあって扱いやすく、ノットもキマりやすいショックリーダーです。

直線強度はもちろん結節強度も非常に高いので、ヒラマサキャスティングでも安心して使用できるショックリーダーですね。

今回、椙尾さんが使用したルアーたち。
サプライズのスギペン160F、185F、スギペン シンキング150S、シマノの別注平政145F、160Fフラッシュブーストなど。

取材協力

取材協力

塩釜「翔英丸」(TEL 090-5189-7243)

塩釜を拠点にルアーゲームを中心に出船する「翔英丸」。カツオ、キハダキャスティングも人気看板のひとつ。

丹念に、丁寧に流してくれた佐藤英治船長。感謝!

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