九州の大分県と四国の愛媛県に挟まれた、豊後水道(ぶんごすいどう)でキハダを狙ったキャスティングゲームが展開されているのをご存知だろうか。大分県、愛媛県ともに船数が少なく、したがって情報も少ない。]

しかし、その少ない情報から伝わってくるポテンシャルはなかなかのもの、なのだ。本記事では大分県からの出船による豊後水道のキハダキャスティングチャレンジのストーリーを紹介する。

目次

豊後水道のキハダキャスティング、その全体像

まだマイナーな存在であろう豊後水道のキハダキャスティング。しかし、伝わってくる釣果は少ないながらも熱い!

そこでオフショアフィッシングマガジンではその全貌に迫るべく実釣取材を敢行した。釣行に赴いたのは2025年の9月初旬。ともに大分県在住のロコアングラー2人に協力をお願いした。

大分を拠点にヒラマサ道を突き進むチーム「ハマチが好きっ」に所属する中村亮太さん(写真左)とバリバスフィールドスタッフの「巨匠ハヤト」こと松成隼斗さんは、ともに大分県在住。その関係は10年近くになる釣友だ。

ひとりはヒラマサキャスティングフリークであり、豊後水道で何本ものキハダキャッチに成功している中村亮太さん、もうひとりはロックショアに軸足を置くアングラーで、バリバスフィールドスタッフ「巨匠ハヤト」としてヒラマサ、GT、クエなどの大型魚を追っている松成隼斗さん。

まず、中村さんに豊後水道のキハダキャスティング、その全体像について伺った。

中村亮太

豊後水道は大分県と愛媛県に挟まれる水道で、太平洋の黒潮と瀬戸内海の冷たい海水が混ざり合うことでプランクトンが大量に発生し、アジ、サバ、イカやそれを狙う大型魚など多種多様な魚介類が豊富に水揚げされる全国有数の好漁場です。

ヒラマサフリークの中村さんだが、豊後水道のキハダキャスティングへのトライも続けている。近年はイカメタル、カワハギとやりたい釣りが増えてきたのが悩み、とか。
中村亮太

キハダについては、数年前までは僕らも高知方面や宮崎方面など、黒潮の影響が強いエリアに遠征しなければ狙えない魚だと思ってましたが、2023年に豊後水道の中まで大量に入ってきて、実際にキャスティングでも釣れました。

調査をしていくと時期やタイミングさえあえば豊後水道でもキハダを狙えるということが分かってきた、いまのところはそんな状況です。

キハダフィールドとしての豊後水道の基本的な特徴

豊後水道は外海と内海をつなぐ水道とも言えるため、黒潮の影響の大小によってガラッと海の状況が一変する。

中村亮太

基本的には上り潮で太平洋の暖かい潮が入り、下り潮で瀬戸内からの冷たい潮が入ってくる、といったイメージです。

水深としては水道部分では60〜100m前後、水道の出口の棚付近では一気に水深が落ち込み、水深は数100mにも達します。

キハダシーズンの水温は平均25〜26度前後、黒潮の影響が強いエリアだと30度近くまで上がることもあります。

シーズンの目安は8月〜10月末ですが、黒潮の影響が近いエリアまで行けば5月頃からチャンスはあると思います。

上り潮と下り潮でその表情がガラッと変わる豊後水道。キハダキャスティングでの好条件は、間違いなく黒潮の影響が強まる上り潮だ。

キャスティングで狙うアングラーが多く、トリヤマやナブラを見つけて撃っていくか、誘い出しを試みるのがメインパターンのようだ。よく見られるベイトはイワシ、トビウオ、潮目に着くマイクロベイトなどなど

2023年はシイラやカツオといった大型のベイトを捕食する個体も見られたということで、熱い展開もあるようだ。ちなみにパヤオは漁師さんの漁場とされており、遊漁船として釣りすることはできない。

水面まで出てこないキハダを狙うのに効果的な、スロージギングスタイルを基本としたジギング。ジギングでしか釣れなかったということもある、というから、こだわりがなければ必須タックルとも言えよう。

ジギングでの実績もある。反応はあっても魚のレンジが深い時やどうしてもトップに反応がない時はジギングがヒットパターンになることもある、という。

スピニングタックルでワンピッチで狙うよりはスロージギングで、フォール主体にレンジをキープしながら狙う方が反応がいい気がする、とは中村さんの言葉だ。

大分県サイドからの出船では2023年にスタート、という豊後水道のキハダキャスティングだが、キャッチされたキハダをベースにこれまでの実績を振り返ってみると、2023年は30kg前後が平均サイズ、2024年は不調に終わった。

2025年は40~50kgが多く、大型によるラインブレイクの報告も多い、という。漁師の釣果では90kgオーバーも上がっている。当たり年といっていいような状況だ。

チャレンジャー、巨匠ハヤトに豊後水道のキハダが応えた!

釣行について触れていこう。お世話になったのは鶴見沖松浦港から出船する「海峰」。中村さんを始め、所属するチーム「ハマチが好きっ」のメンバーが懇意にする船で、キハダのほかイカメタルやカワハギ狙いで乗船することもある、という。

天候不良により2日間を予定していた釣行は1日に限定された。

巨匠ハヤトのハンドルネームで活動する松成さん。メインスタイルであるロックショアでは多くの実績を積み上げているが、オフショアは専門外。
今回は挑戦者という立ち位置での参加だ。

1時間も走ることなくキハダの群れに当たることも多いというが、この日は愛媛県寄りまで走ってからスタートフィッシングとなった。

チャレンジャー、松成さんに意気込みを訊いた。

松成隼斗

地元の大分県で夢を見たいですね。

大分でもデカいキハダが釣れるんだぞっていうところを見てもらいたいです。もちろん、まだ開拓の段階だと思いますけども。

地域を盛り上げたい思いもありますので、まずは1本を獲りたいですね。

正直、オフショアのキハダキャスティングは初めてなので、わからないことばかりなんですが。

早朝のチャンスタイムに賭け、夜を駆けた。気配こそ濃厚だったが、ヒットまでは至らなかった。

朝一番のトライは空振りに終わった。30分ほど走ったエリアで「海峰」のレーダーと魚探がキハダの群れを捉えた。海上には多くのトリも舞っていた。チャンスだ。

2人のアングラーが思い思いに狙いを定めキャストを始めたが、ほどなく松成さんの引くヘッドディップが飛沫とともに海中に引き込まれた。ほとんどランらしいランもなく船縁まで寄ってキハダは、それでもさすがに旋回を始め、抵抗を見せ始めた。

3周ほどしただろうか、ポロッという感じでフックアウトしてしまった。あー、っと船上ではため息の合唱が起こった。松成さんにとっては初のオフショアでのキハダキャスティングであり、ファーストヒットであり、ファーストフックアウトだった。

ファーストヒットを得たのはチャレンジャー、松成さんだった。フックアップ直後から違和感を訴えていた松成さん、魚はすんなりと寄ったのだが…。
PE6号タックルをしっかり曲げ込んでキハダにプレッシャーを掛ける松成さん。
松成隼斗

結構トリが左右に行っていたので、自分の射程に入ってくるタイミングを見て投げました。

ちょっと深めを泳いでいるのかな、と思ったのでゆっくり目にアクションしていたら、ドンッって食ってきました。

食った瞬間から、これほんとにキハダ? っていうくらい全然引かなくて。走らなかったんですよね。

途中、なにかキリキリしてて、なんか擦っている感じがあって、魚にラインが触れていたのか、フックがズレていってるのかわからないですけど、なんだろうと思ってたら途中からちょっと走り出して。

でも、やはり最後まで完全に走り切らずに寄ったんですが、ポロッとなってしまいました。

船縁でのマグロ回り中にポロッと外れてしまった。一同ガックリという場面だが、船長は動画を回して満喫中!
松成隼斗

正直なところ、悔しいとかそういう感情じゃなくて、あっさり終わっちゃったなっていう感じで実感がないです。

ここからどんどん、悔しい思いが出てくるんでしょうけど。ああすればよかった、こうすればよかったとか。

でも、初めてキハダとのファイトを体験して、なんとなくこういう感じで寄せてきたらいいんだなとか、勝手が分かった気がしています。

ショアでは旋回することはほとんどないので。次はキャッチできそうな感じがします。

ファーストキハダが去ってほどなく、先輩の中村さんがリベンジとばかりにロッドを曲げた。非常に慣れを感じる、スムーズなファイトが展開された。

前向きな言葉ではあったが、キハダキャスティングは1本をキャッチできればよい釣りでもある。バラシのダメージはボディブローのように効いてくるはずだ。

しかし、幸いなことにチャンスは続いた。敵討ちとばかりにすぐさま先輩の中村さんがヒットを得た。安心のファイトで一気に寄せたが、あろうことか、この魚もあっさりフックを外して去っていった。

中村亮太

ちょうどトリが右方向に動いていたので、その進行方向に投げてポッパーで誘い出し、止めていたらドカーンッと食ってきました。

いい感じで寄せられたんですがポロッと外れてしまいました。

姿は見えましたよ。結構よさそうなキハダでしたね。残念です。

船内には微妙な空気が漂い始めたが、船長の汐月二郎さんだけはカラカラと笑って、悔しがるアングラーたちを動画で撮影し、楽しんでいた。

ヒラマサ遠征釣行などをともにする中村さんとの釣友関係が前提にあるものの、この船長の余裕が救いになったのは確かだろう。

中村さんが掛けたこの日2本目のキハダもポロッとフックアウト。天を仰ぐ中村さんと後ろで苦笑する松成さん。このままでは大分の「バラシコンビ」と呼ばれる可能性がある状況だった。

リベンジを果たした2人のロコアングラー

潮が動いたタイミングでは、水面には出なくともトリとともにベイトを追うキハダの気配が濃厚になった。上手く合わせてキャストが決まれば出る! そんな状況だった。
お気に入りというオーシャンレコードショックリーダーを指に掛け、狙い澄ましたキャストを決める中村さん。そのスキルは非常に高い。

船長の明るさが救いになったとはいえ、すぐにヒットが得られるほどキハダキャスティングはイージーではない。この日最初の時合で再びヒットを得ることは出来ず、次のチャンスまでは数時間を要することになった。

15時過ぎ、船長が予告?した通り、上げ潮が効き始めたタイミングでトリが騒ぎ出した。明らかに海が変わり、そこかしこで飛沫が上がり始めた。このチャンスをモノにしなければ終わり、という思いは2人のアングラーに共通していたはずだ。

ロッドを曲げたのは先輩の中村さんだった。思った以上の強さに、最後は少々疲れも出たが、終始安定のファイトを展開。今回は見事にモリが撃ち込まれた。

フックセットからランディングまで、完全にキハダをコントロール下においてファイトを展開。見事なやり取りを見せてくれた。
中村亮太

ナブラにはなっていませんでした。

トリが進んでる方向にルアーを入れて、ちょっとポッパーでジャブジャブ。ショートジャーク中に1度ミスバイトがあって、その後、止めた時にドカーンッという感じでした。

ショートジャーク3回入れてからの短めのステイが良かったように思います。

サードランまで走った強い魚でしたね。

取材だったのでプレッシャーが半端なかったです。精神的に疲れました。これでバラしたらヤバいと思ったので(笑)。

中村さんのキハダレコードとなった44.5kg。まんまると太ったナイスコンディション。アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8 6号にオーシャンレコードショックリーダー120lbのセッティングでキャッチした1本だ。

ハラワタを抜いた後の検量で44.5kg。丸々と太ったグッドコンディションのキハダだった。

後輩であり、チャレンジャーという立ち位置ではあったが、中村さんの1本で松成さんにも火が付いたのは間違いない。オフショアのキハダキャスティングは初めてでも、ショアでは数々の大型魚を仕留めている手練れだけに、しっかりと短いチャンスタイムを活かし、見事に掛けた。

ファーストヒットでは船上ならではの対応に少し戸惑いを見せた松成さんだが、2本目にして見事に対応。経験値の高さを見せつつ、スムーズにランディングまで持ち込んだ。

時合、というのは誰の目にも明らかだったが、その短いタイミングを逃さずにしっかり掛けるところはさすがだ。握ったタックルはPE8号セッティングにパワーアップしていた。
1本目では不安を感じる船縁での攻防だったが、2本目は完璧。しっかりキハダの動きに合わせてコントロールしてリフト、船縁とのラインの擦れへの配慮も完璧だった。
松成隼斗

気配は濃厚だったんですが、実際はけっこうトリの動きが速くて。

最初何投かはその動きに翻弄されてキャストが決まらなかったんですけど、高めにキャストして着水音を出して気づかせるみたいなイメージでキャスト、トリが動いてる方向にうまく決まったら、誘ってすぐにバーンッと食ってきてくれました。

おそらく最初にかかったやつの方がデカそうだなっていう気はしてるんですけど、それでも僕にとっては初めてのキハダなので、サイズではない喜びっていうのはあります。

先輩のファイトを2回も見ていたんで、こうやってすればいいんだ、ということも分かったので、思った以上に冷静にファイトすることができました。

松成さんにとってはファースト「オフショア」キハダ。27kgと決してビッグワンではないが、価値ある1本と言えるだろう。メインラインはアバニ キャスティングPE SMP 8号、ショックリーダーはアバニ ショックリーダーSMPナイロン150lbを使用。

この魚もハラワタ抜きの後検量で27kg。しっかりと結果を残したところが見事だった。

この日はこれ以上のチャンスは得られずに帰港となった。しかし、潮が動いたタイミングで期待通りにキハダが沸いてくれる。そんな豊後水道のポテンシャルを感じさせてくれた1日だった。

豊後水道のキハダキャスティング、これからの将来像

釣行を終え、あらためて豊後水道のキハダキャスティングについて、中村さんに魅力を尋ねてみた。

中村亮太

未開拓の状態、というのが1番の魅力だと思っています。

ポイントが近いことが多いということで、環境的にも恵まれてるのかな、と思います。

とくに今年はアベレージサイズがいい。漁師さんが獲っている最大魚は98kgと聞いています。

1日で80kgと90kgを釣った漁師さんもいる、という話も聞いています。

キャスティングでの現実的なアベレージとしては40~50kgくらい、という印象ですね。

キハダキャスティングって九州ではまだ盛り上がってないイメージがあるんですよね。

四国の高知とか、足摺の方ではけっこう釣ってるみたいですけど。大分はもちろん九州全体でも盛り上がってくれると嬉しいですね。

帰港してキハダを処理する。重い、と言いつつ思わず笑顔が弾けてしまう。大分県の各港でこんな光景がそこかしこで見られる日は、そう遠くはないと思われる。

大分県から豊後水道のキハダキャスティングに出船しているのは5隻ほど、という。しかも、それほど出船回数は多くはないし、釣果情報も少ない。

「海峰」でも4年前から出船をスタートしたものの最初のシーズンは空振り。釣果が得られたのは3年前からと最近のことだ。

しかし、巻き網で漁師が獲っているキハダ情報は数多い、という。これからの豊後水道のキハダキャスティングは、今後どのような盛りあがりを見せていくのか? オフショアフィッシングマガジンでも注視していきたいフィールドのひとつだ。

豊後水道のキハダキャスティング、タックルセッティング例

中村亮太、松成隼斗両氏のタックルを紹介する。

中村亮太さん使用 6号タックル

タックル詳細
ロッドMCワークス/
エクスプロージョン82-6HF
リールシマノ/
ステラSW14000XG
PEライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8 6号300m
ショックリーダー【バリバス】
オーシャンレコードショックリーダー 120lb

中村亮太さん使用 8号タックル

タックル詳細
ロッドカーペンター/
ブルーチェイサー83-40
リールシマノ/
ステラSW18000
PEライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8 8号300m
ショックリーダー【バリバス】
オーシャンレコードショックリーダー 150lb

松成隼斗さん使用 6号タックル

タックル詳細
ロッドシマノ/
オシアプラッガー リミテッド83H
リールシマノ/
ツインパワーSW14000XG
PEライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8 6号300m+ノットプロテクト(プロトモデル)6号
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 120lb

松成隼斗さん使用 8号タックル

タックル詳細
ロッドシマノ/
オシアプラッガー フレックスエナジー83H
リールシマノ/
ステラSW18000+20000MAXスプール
PEライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]X8 8号400m+ノットプロテクト(プロトモデル)6号
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 150lb
中村さん、松成さんともに愛用していたメインラインはアバニ キャスティングPE SMPの6号と8号。
豊後水道のキハダキャスティングでは、6号タックルと8号タックル、この2セットを用意するのが基本だ。
ショックリーダーは中村さんがオーシャンレコードショックリーダー、松成さんがアバニ ショックリーダーSMPナイロンを使用していた。
松成さんは、ウッドブックルアー(プロトモデル)200mm、ウッドブックルアー リード190、オシア スポウター150F、オシア ヘッドディップ140F、175Fなどを使用。
中村さんはコンタクト フィードポッパー175、150、オシア バブルディップ180Fフラッシュブースト、オシア ヘッドディップ140Fなどを使用。

取材協力

取材協力

鶴見沖松浦港「海峰

TEL:090-7433-1100

今回は鶴見沖松浦港を拠点とする「海峰」さんにお世話になった。船長の汐月二郎さんは自身でも玄界灘に赴くほどのヒラマサキャスティング好きだ。
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