佐藤偉知郎が考えるマグロキャスティングタックル(前編)

マグロキャスティングシーンを常にリードしてきたアングラー、佐藤偉知郎さん。変化しつづけるシーンを前提に、佐藤さんが考えるベストタックルを紹介する。

前編はロッド、リール、ルアーにフォーカス。とりわけ重要なPEライン&ショックリーダーについては後編で展開していく。

目次

龍飛でクロマグロを狙うためのキャスティングタックルとは

▲近年、日本各地でクロマグロがキャッチされるようになった。キャッチされるサイズもデカくなっている。それでもやはり津軽海峡、龍飛岬を舞台にした釣りは特別感がある。

龍飛でモンスターサイズを狙うためのタックルセッティングについて、基本的な考え方を教えてください。

佐藤偉知郎

自分のマグロキャスティングはサイズだけを追い求めることが目的ではありません。それでも常に最大サイズは想定しています。

掛けたら獲れる、というタックルを準備しています。ラインで言えば「アバニ キャスティングPE Si-X X8」の8号、10号、12号が中心になります。

事前情報やその日の状況に応じて持ち込むタックルのセットを変えています。これはずっと変わることのないタックルセッティングの基本です。

クロマグロ用タックルのベースとなるのはPE8号、10号、12号タックルでよろしいですか?

佐藤偉知郎

そうですね、全体的なタックルセッティングはここ数年、大きくは変わっていないと思います。

釣行日の魚のアベレージサイズを中心に変えますが、ロッドだけ替えることも多いですね。

モンスタークラスを前提にパワータックルを増やす場合と、ライトな方向に振る場合があります。

それでも龍飛周辺での釣りを前提にするなら、12号タックルはなくなることはないですね。

8号・8号・12号になるか、8号・10号・12号になるか、8号・12号・12号になるかっていう感じが基本になると思います。

▲2024年10月のモンスターハンティングに準備したのは3タックル。8号タックルワンセット、12号タックル2セット。絶対の信頼を置くタックルセットだ。

クロマグロキャスティングのための理想のロッドとは?

佐藤さんの理想とするクロマグロキャスティングロッドを教えてください。

佐藤偉知郎

ロッドは自分のところ(ソウルズ)のものを使っています。

ロッドのセレクトはファイトスタイルで大きく変わってくると考えています。いまのマグロ釣りでは、いくつもスタイルがあります。

そうしたなかで自分が目指しているのは、ロッドを曲げて真っ向勝負でファイトすること

どうにもならなくてロッドを寝かせてまっすぐにするとか、休憩することはもちろんありだと思いますが、基本的には正面突破のファイトスタイルを目指しています。

そうしたファイトを展開するための性能を持つロッドを作ることを目指しています。ひと言でいえば『曲げて獲れる』ロッドです。

がっちりファイトして獲れることが理想で、そのためのロッドを作っていますし、使っています。

繰り返しになりますが、最初から直線ファイトを考えているわけではないので、ある程度は短いですが、人間が耐えられて、曲げてファイトできるロッドを目指しています。

▲ロッドを曲げて獲るファイトを信条としている佐藤さん。アングラーへの負荷を考えるとやや短くなる傾向があり、多少飛距離は犠牲になるが、ロッドを立ててファイトすることの利点は大きい。

クロマグロキャスティングタックル、船上での選択基準は?

2024年10月の釣行では3セットのタックルを船に持ち込みました。8号タックル1セット、12号タックル2セットです。実際にどのタックルを握るかの判断は何を基準にしているのですか?

佐藤偉知郎

50、60kgの魚が見える状況ではPE8号タックルを握ることが多いと思います。

50、60kg クラスが見える状況では、これまでの経験上、80kgくらいまではヒットしてくることが多いイメージがあります。

80kgくらいまでだったら対応できる、という判断で握ることが多いのがPE8号タックルです。

魚のサイズだけでなく、どうしても飛距離が足りない、届かないという場面で握ることもあります。

実際は、使用頻度はとても少ないんですけどね。とくにマグロのサイズがまあまあ大きいときは登場機会はほとんどありません。

▲クロマグロの大きさを一番の基本にタックルを握り分ける。大型になればなるほどファイトの観点からタックルをセレクトする傾向が強くなる。

クロマグロキャスティングロッドのセレクト基準

ロッドセレクトはどのような観点から行っていますか?

佐藤偉知郎

モンスターサイズを狙うときに、出来ればこのロッドで掛けたい、というのはアシュラシリーズのPS-O70PCS ASHURA death roadをセットした12号タックル

短いので取り回しがいいし、100kg、掛かり方によっては150kg、200kg近くてもフルファイトで獲れるロッドです。

フルファイトは難しいけれどPE12号で飛距離も稼ぎたい、という時に握るのが曲げて獲れるレベルシリーズのPS-O74L14S power slowをセットした12号タックル

飛距離とファイト性能を兼ね備えた、74というレングスが特徴的だと思います。

タックルデータに記載されているロッド以外にも、105gのモグラッパーを使うときなどはレベルシリーズのPS-O83LN8S、PE10号のセッティングではレベルシリーズのPS-O78L10Sを使うこともあります。

またアシュラの3本は、状況によっていつでも投入することがありますね。

クロマグロキャスティング用リールの理想形

クロマグロキャスティング用リールに求めることは何ですか?

佐藤偉知郎

壊れない、耐久性の高いリールというところが一丁目一番地。ここが最重要です。

壊れなくて、ドラグがしっかり効く。調整のイメージがしやすいドラグ、つまりラインの出方がはっきりわかるリールが理想ですね。

それはたとえば、ラチェットのキッチリさが条件だったりするんですけど、ドラグが効いているのかどうかということがはっきり認識できて、アングラーサイドで変化させやすい性能を重視しています。

細かいことはいろいろあっても、とにかくの1番は壊れないところ。具体的にはダイワのソルティガを使っています。

▲壊れないこと。リールに対して求めることは? との問いの即答した佐藤さん。獲るための最低条件でありながら、満足できるモノがなかった、というのがクロマグロキャスティングの歴史だ。

クロマグロキャスティング用リールとして番手のセレクトに対する考え方を教えてください。

佐藤偉知郎

20ソルティガの時代には、国内で使用する分には20000番で十分という考えでした。

ただ、近年のように規制が入ってマグロのサイズが上がり、日本各地で200kgオーバーの魚がヒットしてくる状況になってくると、20000番以上のサイズもありだと思います。

強さやパワー、ラインキャパシティにしてもリールに余裕があるに越したことはない。選択肢があるに越したことはないですからね。

25ソルティガがリリースされることもあり、現時点ではPE8号、10号を使うときはソルティガ20000-H、12号を使うときはラインキャパシティを優先してソルティガ25000-Pを使うことになると思います。

ただ、自分の釣りとしてはPE12号を使うときでも龍飛や伊豆大島以外のフィールドではソルティガ20000-Hを使うことが多いかも知れません。

これらのサイズセレクトは魚の大きさだけでなく潮流の速さや水深を考慮して決めることになると思います。

佐藤偉知郎が生み出すクロマグロキャスティング用ルアー

佐藤さんのクロマグロキャスティングに欠かすことが出来ないルアーについて教えてください。

佐藤偉知郎

僕の釣りではルアーセレクト、ルアーローテーションは簡潔ではありません。

常にプロトモデルを持ち込んで、常にテストしている、というスタイルはずっと変わりませんしね。

製品化しているソウルズのルアーに限定して話すならば、ソウルズのプラグはすべて僕のマグロキャスティングに必要なルアーです。

▲クロマグロを釣るために必要だから作っている。それがSOULSのルアーたち。佐藤さんの釣りを実現するには欠かせないアイテムだ。

佐藤偉知郎

モグラッパーは、ノーマル、スリムともに必要。

もちろんダイナマイトドンドン、コムソー、そして新作にあたるシビヤマも欠かせません。

コムソーもマストルアー。シイラナブラの時には圧倒的に強いですからね。

ルアーを使い分ける目安について教えてもらえますか?

佐藤偉知郎

モグラッパーは、ノーマル、スリムともに基本的に水噛みが良く、どんな状況でもちゃんと水に絡んでくれる、使いやすいルアーだと思います。

シーンを選ばないルアーなので最初にセットすることが多いですね。

▲捕食されているベイトに合わせるのはもちろん、掛けたあとの展開まで含めてセレクトの判断を行うのが佐藤さんのスタイルだ。

佐藤偉知郎

モンスタークラスが見えるのであれば、できればノーマルのモグラッパーで掛けたいですね。スリムに比べてノーマルのほうが太くて短いですから。

どちらでも喰ってくるような状況であれば、ノーマルで掛けたほうが安心感があります。

長めのシルエットのルアーを泳がせて喰わせてもいいんですけど、どこに掛かるか分からないという不安要素があります。

変なところに掛かると外れやすいですし、ファイトがキツくなってしまうときもありますからね。

フッキングのところまで考えて、理想を言うのであれば、太くて短くて、相対的にフックが大きくなるノーマルのモグラッパーのほうが、アングラーにとってプラスになると考えています。

佐藤偉知郎

少し泳ぐようなタイプのルアーでなければ喰ってこないシチュエーションでは、モグラッパースリムかな、という感じです。

さらに渋い、厳しい状況、魚が出にくい状況になると、ダイナマイトドンドンかシビヤマですね。

なぜ厳しい状況になるとダイナマイトドンドンかシビヤマをセレクトするのですか?

佐藤偉知郎

サウンドですね、基本的には。

強いサウンドと強い泡を出したい、という理由でモグラッパーを進化させたルアーがこの2つなので。

ただ、勘違いする人はいまでもいるんですが、モグラッパーとかダイナマイトドンドン、とくにダイナマイトドンドンは勘違いされがちなんですけど、カップがでかいのでポッパーだと思う人がいるんですよね。

ダイナマイトドンドンとシビヤマ、この2つのルアーはポッパーではありません。カップは水噛みさせるためにあります。

だからポッパーのようなバーンッというか、ズボンっていうような低音を出さない意識を持って使って欲しいんですよね。

▲ナブラや跳んでいる魚体を見つけてからルアーチェンジをしている余裕はない。フィールドを観察する目を養い、常に万全の準備をしていることが重要だ。

佐藤偉知郎

マグロに効くサウンドっていうのはGTポッパーが出すようなポップ音じゃないんです。

目指しているところはポップ音ではなく、マグロが寄ってくる音。これは自分の中にしっかりあるんです。

周波数というかなんというか言葉では説明が難しいですが、そのサウンドによるアピールを目指して作ったルアーがダイナマイトドンドンとシビヤマなんです。

コムソーはとくにシイラパターンに強いということですが。

佐藤偉知郎

一日中マグロがシイラを追っている、という状況だったら、コムソーに付け替えちゃった方がヒット率が高いと思います。

なぜそんなにシイラパターンに強いのか、と言われても自分もよく分からないんですけどね。でも、実績がものすごく高いのは確かです。

リリース前のプロトモデルを使ってもシイラパターンにはものすごく強かったし、製品としてリリースしてからも皆さんがすごく釣ってくれた。

自分では泳ぎというよりは着水したときの動きだと思っているんですけど、本当のところは分からない。

作った本人にもわからない魔力を秘めているルアーなんですよね。

佐藤偉知郎が考えるマグロキャスティングタックル(前編)に続き、後編ではPEライン&ショックリーダー、そしてスペーサーシステムなどについて紹介する予定だ。

佐藤偉知郎さんの龍飛クロマグロキャスティング使用タックル

10月の釣行に持ち込んだタックルは3セット。PE8号タックルがワンセット、PE12号タックルが2セット。2025シーズンからは12号タックルで使用するリールはソルティガ25000-Pが中心になる予定。

※PEラインはいずれもアバニ キャスティングPE Si-X X8

PE8号タックル

タックル詳細
ロッドソウルズ/
レベルシリーズPS-O80L8S
リールダイワ/
ソルティガ 20000-H
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE Si-X X8 8号 400m
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 170lb

PE12号タックル1

タックル詳細
ロッドソウルズ/
アシュラPS-O70PCS ASHURA death road
リールダイワ/
ソルティガ 20000-H
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE Si-X X8 12号 300m
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 300lb

PE12号タックル2

タックル詳細
ロッドソウルズ/
レベルシリーズPS-O76L14S power slow
リールダイワ/
ソルティガ 20000-H
メインライン【バリバス】
アバニ キャスティングPE Si-X X8 12号 300m
ショックリーダー【バリバス】
アバニ ショックリーダーSMPナイロン 300lb

▲船上に持ち込んだ厳選の3タックル。リーダーをセット済みのスペアスプールも豊富に用意している。

▲メインラインは自身がプロデュースに関わり、長年使い込んでいるアバニ キャスティングPE Si-X X8。トラブル知らずで絶大な信頼感、とは佐藤さん。

▲佐藤さんのクロマグロキャスティングに欠かせないのがアルティメット ファイティングリーダーシステム。アバニ ショックリーダーSMPナイロンにザイロンを組み、使用。

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