黎明期から現在に至るまで、常にマグロキャスティングを牽引してきたアングラー、佐藤偉知郎さん。
ロッド、リール、ルアーにフォーカスした前編「佐藤偉知郎が考えるマグロキャスティングタックル」に続き、後編ではPEライン、ショックリーダーを中心とした佐藤さんのラインシステム、その全体像を紹介する。
佐藤偉知郎が選ぶクロマグロ用メインラインはアバニ キャスティングPE Si-X X8

▲佐藤さんの全面プロデュースによって誕生したアバニ キャスティングPE Si-X X8。数多くのクロマグロとの出会いを通し、佐藤さんのさらなる信頼を獲得しているPEラインだ。
佐藤さんはメインラインとしてアバニ キャスティングPE Si-X X8を使用されています。
アバニ キャスティングPE Si-X X8は、クロマグロとの長時間ファイトを念頭に、耐久性を最優先した佐藤さん全面プロデュースのマグロキャスティング専用PEラインです。
長きにわたり使い続けている中で、あらためてこのラインに対する印象を教えていただけますか?

アバニ キャスティングPE Si-X X8は、長年使い続けていますが、これまで一度も切れたことがありません。
やはり耐久性は凄いものがあります。毛羽立ちもほぼない。
耐久性があり過ぎて巻き替える人がいなくなって売れないんじゃないか、と心配するくらい強いし、耐久性がありますね。


▲クロマグロとの長時間ファイトを想定。PE原糸に特殊耐熱材(Si-X)を練り込むことで超高耐久性を実現しているのがアバニ キャスティングPE Si-X X8だ。



アバニ キャスティングPE Si-X X8を使う前は、一回でもクロマグロとファイトしたら違和感がなくてもPEラインを巻き替えていました。
でも、アバニ キャスティングPE Si-X X8ならちょっとくらいファイトしても毛羽立つことはないので、巻き替えないこともあります。
もちろん魚のサイズによるし、船底に当たったな、という記憶が残っていれば新品でも替えます。
普通に使っていれば全然不具合が出ない、それくらい強いですよ。
PEラインに対するケア、使用上の注意点などがあればお願いします。



高耐久性、ムラのない安定した強度。
この2つが高次元で達成できているし、実績も十分なのでアバニ キャスティングPE Si-X X8を使い続けていますが、素晴らしいPEラインであってもしっかりリールのスプールに巻き込まないと、その実力は発揮できません。
これはクロマグロに挑戦するための最低限のスキルとして必要。
でも、残念ながらこれが出来ていない人が多いのも現状です。ここはしっかりやってほしい、と声を大にしてお伝えしておきたいですね。


▲リールに巻き込むときはもちろん、事あるごとに佐藤さんが手にするのが「PEにシュッ!」 佐藤さんのクロマグロキャスティングには欠かすことが出来ないアイテムだ。



具体的には最初にリールのスプールに巻き込むとき、きちっと巻いておく、ということです。とても基本的なことなんですけどね。
要はふわふわの状態で巻いて魚が掛かったら、PEラインが喰い込んでしまってどんなラインでも切れるよ、という話です。
これで切れるのはPEラインのせいではなく釣り人のスキルの問題です。
基本的な流れとしては、最初にPEラインをしっかり濡らし、巻いた後で乾きつつ締まる状態にしておく。
その状態からスプールの軸にしっかり固定できるよう、巻き結びなどで空回りしないように結ぶ。
ここからスタートしてPEにシュッ!を適宜吹きかけながらきちっと巻く。
ぎゅっと締まる巻き方をしておけば、魚が掛かっても喰い込み切れなどはまず起きません。これはクロマグロ釣りの最低限の問題。スタートの話です。
そこができてないのに無謀に掛けたらたらそりゃ負けるよねっていうことです。
クロマグロキャスティングのラインシステムとして佐藤偉知郎が最適解と考える16ノット


▲佐藤さん考案のオリジナルノット、16ノット。ミッドノットをベースにしながら改良、作成手順にも細心の配慮を加えた、佐藤さんいわく「最強ノット」だ。
佐藤さんが採用しているラインシステム、16ノットについて教えていただけますか?



クロマグロキャスティングを続けるなかで、試行錯誤を繰り返して辿りついたのが16ノットです。
これまで使ってきて、ラインシステムの部分で切れたことはないし、抜けたこともない。
実際にバリバス本社のテスト用機械を使って破断試験を何度もしてもらっていますが、他のノットに比べても明らかに強い、という結果が出ているノットです。
もちろん、メーカーで行う破断強度がノットの強さのすべてではないことは認識しています。
実際の現場では何時間もファイトすることがあるし、いろいろと予期しない事が起こる。
でも、長年の現場の経験の中で抜けたことも切れたこともない。
テストでも現場でも最強となったらこれは最強のノットでしょう、と自分では思っています。


▲佐藤さんのドカットの中には10個に迫る替えスプールが用意されている。すべてパーフェクトなラインシステムを組み込み済み。何らかのトラブルがあっても船上ではスプール交換するだけだ。



唯一デメリットを挙げるなら、完璧に仕上げていること。これが実はデメリットかも知れません。
完璧に仕上げるには時間がかかるので、船上では現実的に難しい。
以前は船でも作っていましたが、中途半端な仕上がりになってしまうので止めました。
自宅で完璧なノットを作り、替えスプールを持って行く。船上ではスプールを取り換えるだけ、というスタイルがベストだと考えています。
自分の性格上、完璧を目指したい。破断強度もライン強度の100%を目指したいから、16ノット以外は考えられないんです。


▲現在は船上でラインシステムを組むことはない。完璧を求めるがゆえの結論だ。
行き着いたシステムは16ノット、アルティメットファイティングリーダー、そしてスペーサーシステムの組み合わせ


▲クロマグロキャスティング用ラインシステムは行き着いた、と現時点での自身のシステムを評価する佐藤さん。
16ノットは変わることのない、佐藤さんの鉄板ラインシステムということですね。



16ノットが完成したのは20年ぐらい前になると思います。それから自分が信頼しているラインシステム自体は変わりません。
現在までにシステム全体で変わったという点では、アルティメットファイティングリーダーを使用するようになったことが変化のひとつです。
使い始めて6~7年になると思います。
より完璧な強さを求めた結果ですが、先端にザイロンノットを使用しているので、飲まれたときのリーダーブレイクを防ぐ役割も果たしてくれます。


▲プロトモデルを含め、6~7年前から自身のラインシステムに組み込んでいるというアルティメットファイティングリーダー。引っ張りに対する強度だけでなく、飲み込まれたときの擦れにまで対応可能。万全に万全を期すためのアイテムだ。



スペーサーシステムの導入も大きいですね。
試行錯誤を経て、いまの16ノット、アルティメットファイティングリーダー、さらにスペーサーシステムを組み合わせた完成形になったとき、クロマグロキャスティングにおいてはもうこれ以上のシステムはないなっていうくらい、行き着いた感覚があります。


▲佐藤さんは数多くの実戦投入を繰り返しているが、いまだ製品化の途上にあるスペーサーシステム、スムーススペーサー(仮名)。
スペーサーシステムの利点はどのように考えていますか?



キャストを繰り返してもノット部分が傷みにくい、ということが一番でしょう。
いままではラインシステムの後ろ、PEラインの部分がどうしてもちょっとへたりやすかった。
でも、それはしょうがないよね、という感じでした。
どんなラインでもどんなラインシステムでも、そこは使っていれば必ず弱るところですから。
でも、バリバスのプロトモデル、スムーススペーサー(仮名)を使い始めてからは、ラインシステム部が弱らなくなりました。エアノットが出来にくいこともメリットです。
トルクのあるリーダー、アバニ ショックリーダーSMPナイロンはクロマグロキャスティングで活躍!


▲2025年のNEWアイテム、アバニ ショックリーダーSMPナイロン。大型キャッチの確率が上がったこと、これに対応しタックルが進化している現在のクロマグロキャスティングでは、より高性能ショックリーダーが求められる、と佐藤さん。
佐藤さんがクロマグロキャスティングでショックリーダーに求める条件を教えてください。



まずは強いことが第一条件。
さらには摩擦系ノットで使用するときに馴染みがいい、つまり締め込んだときの喰い込みの良さを求めますね。
ショックリーダーにPEラインが喰い込むことでストッパーになりますからね。
固すぎてしまうと馴染まない、つまり締め込みが効かず、抜けやすくなってしまう。
クロマグロキャスティングでは、さらに伸びる、粘るようなショックリーダーが理想ですね。
2025年、バリバスから新たなキャスティング用ショックリーダー、アバニ ショックリーダーSMPナイロンがリリースされます。
プロトモデルに対する佐藤さんの評価も高いショックリーダーと伺っています。使ってみた印象を教えてください。





アバニ ショックリーダーSMPナイロンは、キャストもスムーズになるリーダーだと思います。
糸グセが付きにくいし、キャストしたときの嫌な音も出にくい。誰が使っても実感できると思いますよ。



ひと言で表現するならトルクのあるリーダーっていうイメージ。
ビーンって伸びていくだけじゃなくて、踏ん張りつつ伸びる感じの使用感です。反発力がありつつ伸びるみたいな印象。
釣りをする前から、触っただけである程度はこういう特性を感じとれるショックリーダーです。
たとえばロッドをテストする、破断強度を試すためにあえて折ったりするんですが、パチンっと折れるロッドもあれば、折れるまでに粘る感じのロッドもあります。
グラスが入っている割合が高ければ同じ強度だとしても折れるまでに時間が掛かります。今回のSMPリーダーもグラスの割合が高いロッドに似ている感じがあります。
切れるまでにただ伸びるだけでなく反発力がある。
ファイトのときでも魚を弱らせてくれるショックリーダーだと思いますよ。


▲津軽海峡をホームに全国各地、世界各地でクロマグロを追う佐藤偉知郎さん。佐藤さんが切り拓いた道を多くのフォロワーが辿ってきたことで現在のシーンが生まれている。バリバスではこれから先に伸びていく道も佐藤さんとともに一緒に歩んでいくつもりだ。
佐藤偉知郎の龍飛クロマグロキャスティング用タックル
佐藤さんが龍飛のクロマグロキャスティング用タックルとして基本にしているタックルセット。PE8号タックルが1セット、PE12号タックルが2セット、計3セットが基本。
PE8号タックル
タックル | 詳細 |
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ロッド | ソウルズ/ レベルシリーズPS-O80L8S |
リール | ダイワ/ ソルティガ20000-H |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPE Si-X X8 8号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 170lb |
PE12号タックル1
タックル | 詳細 |
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ロッド | ソウルズ/ アシュラPS-O70PCS ASHURA death road |
リール | ダイワ/ ソルティガ20000-H |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPE Si-X X8 12号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン 300lb |
PE12号タックル2
タックル | 詳細 |
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ロッド | ソウルズ/ レベルシリーズPS-O76L14S power slow |
リール | ダイワ/ ソルティガ20000-H |
メインライン | 【バリバス】 アバニ キャスティングPE Si-X X8 12号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 アバニ ショックリーダーSMPナイロン300lb |