福井県小浜新港の「F-CLOUD雲丸」船長、雲智和さんが提案しスタートした「バチコン」は、いまや全国区の人気釣法。自ら考案した「逆ダン」仕掛けを駆使したその釣法は、手軽さとゲーム性の高さで老若男女の支持を集めている。
F-CLOUD雲丸のメインフィールドである若狭大島沖を舞台に、イカメタルタックル兼用の魅力や、40cmオーバーの大型アジが狙える点など、バチコンならではの魅力を雲さんへのインタビュー形式で紹介します。
バチコンとは?
バチコンがスタートした経緯を教えてください。

「F-CLOUD雲丸」をスタートしたのは平成23年です。
いまで言うイカメタルですが、それを「ナイトティップラン」といういい加減な名前をつけてやってブログで発表していたんです。
そうしたら読んでくれたいろいろなメーカーの人が来てくれて。お客さんも来てくれるようになったんです。





それからうちではイカメタルがメインになっていましたが、昔からのスタイルでイカを釣っていた船ではイカをやりながらアジもたくさん釣って来ていたんです。
私は天邪鬼なので、それならうちではアジをルアーで釣ってやろうと思いまして。今でいうジグ単でやったらすぐ釣れたんです。
最初は簡単に釣れた。
そこでイカが釣れないときにアジが釣れたらいいだろう、楽しければいいだろうと提案し始めたんですが、実際はそんな簡単ではありませんでした。
関東への遠征釣行がバチコンスタートの大きな転機と聞きました。



そうなんです。ジグ単ではいまひとつだったので、次はキャロライナリグでやりました。
集魚灯でアジが浮くようなときや場所なども限定的でしたが、タナが20~30mであれば、それでもまあまあは釣れたんです。
他の釣り場でも釣れるだろうと思って、少し調子に乗って関東に遠征しました。関東は昼間の釣りだけど水深は浅いって聞いていたので。
そうしたら周りのエサ釣りの人は40cmクラスを含めバンバン釣っているのに、自分は全然釣れない。出直します!って帰ってきました。





それで本気になって釣り方の研究と釣り場の開拓を始めました。
試行錯誤を重ねて苦節約4年、「逆ダン」という仕掛けを思いつきました。
ほぼ同時に「バチコン」という釣りを確立しました。
逆ダンという仕掛けを考案したのとバチコンという名前を使い出したのはほぼ同時。今年で12年目を迎えます。
バチコンという名称はどのようにして生まれたのですか?



イカメタルをやっていたなかで知り合った釣具メーカー社員の方との会話で、ルアーでアジを釣るこの釣り方に名前をつけようという話になりました。
船でしかできない釣り、深場を基本にした釣りを表したいという思いから「バーチカル・コンタクト」、略して「バチコン」という名前に決めました。
ショアからのアジングとは全く違うんだよ、という定義付けをしたわけです。
逆ダンに関してはすべて自分が考えたんですけど、バチコンはメーカー社員の方と一緒に考えて付けた名前です。
バチコンの魅力、楽しさとは?
あらためてバチコンの魅力はどういったところにあると思いますか?



バチコンの魅力はいくつもあります。
まずは掛けるまでの楽しさですね。
イカメタルにも共通しますが、イカメタルだと隣の人が釣れたら何mでアタったんですか?って聞くじゃないですか。
バチコンだったらそれがリーダーの長さだったりします。
そうやっていると船の中で連帯感も生まれてくるし、みんなで協力してやりましょうっていう部分も出てくる。
カワハギなんかにもいえますけど、アタリを掛けていく釣りっていうのは、みんなジッとして竿先を見ているだけの話なんですけど、実はとても繊細で楽しいわけですよ。





アジそのものの魅力もあります。
アジは引きがとても強い魚です。40cmを超えてくるとメチャクチャ引きます。
数釣りはもちろん可能ですが、バチコンでは50cmオーバーなどのメモリアルフィッシュを狙える点も魅力です。
アジは口が弱い魚なので、やり取り中にバレやすい傾向があります。
よく外れることで、じゃあロッドはもっと軟らかいのにしよう、いや掛けるためにはもっと硬いほうがいい、ハリはこれがいいってなって、沼にハマってくんです。
1尾をどうやって上げるかって沼ですね。
たかがアジですけど、されどアジなんです。バチコンなら昼でも夜でも、浅い場所でも深い場所でも楽しめます。
バチコンはシンプルな仕掛けで、老若男女問わず楽しめる釣りです。
特にイカメタルで使用しているタックルをそのまま使えるという手軽さは大きな魅力だと思いますよ。


F-CLOUD雲丸ではイカメタル&バチコンがメインスタイル
F-CLOUD雲丸さんで行っているバチコン、そのスタイルについて教えてください。



イカメタル&バチコンという看板でずっとやっています。イカメタルをやる人と一緒に楽しむっていうスタイルです。
船上ではイカしかやらない人もいるし、アジしかやらない人もいる。もちろん両方する人もいっぱいいます。
好き勝手にやってもらっていいんですけど、それで隣の人と絡まったら誰もが嫌がりますよね。
船としてもいろんな仕掛けを落とさせたい。
そこで絡んだ時にいかに早く外せるかっていうことを考えるのが企業努力だと思うんです。
そういう意味もあってシンプルな逆ダンなんです。金具は使わないで、と。船全体の釣果も全然違ってきますからね。





うちではイカメタルとバチコン両方が好きな人は逆ダンでしか釣りをしないですよ。
バチコンやっていてイカメタルに変えたいなら、ジグヘッドを切って、そこにドロッパーつけて、下に鉛スッテをつければいい。
イカを釣っていてバチコンに戻したいなら、ドロッパーをジグヘッドにして、鉛スッテをオモリに変えればいい。凄く便利なんですよ。
バチコンで釣るアジのサイズとシーズンについて教えてください。



例年のパターンで言えば、5月から7月、9月から12月いっぱいくらいがシーズンですね。
1月から4月はヤリイカと一緒に狙えます。
基本的には若狭湾の外海を釣ります。水深は50mから110mくらいが多いですね。
10月くらいからは湾内の浅場でも釣れます。湾内は5mから30mくらいを狙う感じです。
それほど大型は出ませんが昼間に釣れるのが特徴です。
湾の中では浅場狙いが中心なので、同じサイズであれば沖の魚より引きを強く感じます。
サイズ的にはケンサキイカと一緒に狙えるゴールデンウィークから梅雨明け頃までがハイシーズン。
35cmから45cmがよく釣れます。この時期はほぼこのくらいのサイズばかりになりますよ。


逆ダンとは?
あらためて逆ダンとはどのような仕掛けを指すのですか?



逆ダンは、ブラックバス釣りのダウンショットリグのワームとシンカーを逆にしたような仕掛けです。
リーダーの先にジグヘッドを付け、オモリをセットした捨て糸はリーダーに直接ユニノットとハーフヒッチで結びます。
ハーフヒッチの部分はスライドできるので、枝スの長さは状況に合わせて自在に調整できます。
リーダーの途中で結びを作らないので、その部分でのリーダーの強度は落ちません。シンプルな構造なので感度が高いのも特長ですね。


雲さんはシンプルにこだわっています。なぜ逆ダンはシンプルさが重要なのでしょうか?



シンプルであることは、釣りの効率を格段に上げます。
ビーズや金具をつけるとそれだけで釣れないこともあります。とくに食いが渋いときは金具のあるなしで確実に釣果に差が出ます。
でも、釣果以上にオマツリしたときの時間のロスが大きくなる方が問題です。
逆ダンは金具を使わないシンプルな構造なので、絡まりにくく、絡まったとしても素早くほどくことができます。
これにより、手返しが早くなり釣果アップに繋がります。
船ではシンプルさが求められるんです。釣果も出るし、トラブルへの対応力も高い。
すべてにおいてシンプルが有利なわけです。
バチコン用おすすめタックル
バチコンにおすすめのロッド&リールを教えてください。



エントリーとしてはロッドは6.5~7ftくらいのイカメタル用でいいでしょう。兼用できますからね。
ほかにはSLJやタイラバ用もいけます。
ただ、やり込んでいくうちにバチコン専用ロッドを使う人が多くなりますね。バチコンを本気でやるようになってくるとスピニングタックルに落ち着く傾向もあります。
理由はリールのドラグ性能の高さ。
デカい魚をいかに早く上げられるかは重要です。早くあげて手返しを上げたいわけですから。
エントリーとしてはベイトタックルでもいいんですが、スピニングに比べるとどうしてもドラグ性能が低いのでなかなかアジが上がってこない、というのがデメリットですね。





リールはスピニングならC3000番がおすすめ。
C2500番でもいいでしょう。0.6号のPEラインが200m以上巻けるものが目安です。
レバーブレーキタイプがおすすめですね。重いオモリを使用するため、C2000番などのオカッパリのアジング用の小型リールでは、ギアがすぐダメになります。
4000番でもいいですけど、重くなってしまいます。軽いタックルでコツッというアタリを取っていくのがバチコンの面白さですからね。
高価なリールでなくても十分機能しますし、手軽にタックルを揃えられるのがバチコンの魅力の一つでもあります。
ベイトリールなら200番クラス。イカメタルとの併用を考えるとカウンター付きがいいでしょう。
メインラインとリーダーについてはいかがですか?





PEラインはイカメタルと併用することを前提として、0.6号以下でお願いしています。
水深を正確に把握できるマーキングがあること、伸びが少ないことが重要です。
深いポイントを攻めるので、伸びが少ない方がアタリを取りやすいですからね。
また、潮の抵抗を受けにくくて張りがあるもの、ピンッとしているものが良いですね。
浮力が少ないPEもいいですね。潮馴染みがよいので釣果に影響してくると思います。
雲さんはイカメタル用のPEラインをバチコンでも使っているんですよね?



近年はイカメタル用PEラインのアバニ イカメタルマックスパワーPE X9をバチコンでも使用しています。
このラインはイカメタル用と謳われていますが、バチコンにもまったく問題なく使えます。
イカメタルとバチコンは、特性が共通している部分が多く、このラインの性能が十分に活かされます。
このラインの最大の特長は、謳い文句通り「伸びの少なさ」にあると思います。
水深60mから80mといった深場での釣りでも、底付近からのアジの「コツン」といった小さなアタリをしっかり手元に伝えてくれます。





水切れの良さもいいですね。
深い場所での使用では、PEラインが潮に流され、引っ張られてフケてしまうと、アタリが取りにくくなったり、オマツリの原因になったりします。
アバニ イカメタルマックスパワーPE X9は水切れが良いので、糸フケが少なく、非常に釣りやすい。
ラインが流されにくく、自分の狙った範囲をキープしやすくいので仕掛けを入れ直す手間も減ります。
結果的に、水中に仕掛けがある時間が長くなり、魚がアタるチャンスも増えるというわけです。
うちのバチコンは夜釣りなので、アバニ イカメタルマックスパワーPE X9の視認性の高さはかなり頼りになります。
1mごとにマーカーが施されており、夜間でも視認性が非常に高いカラーを採用していますからね。
バチコンはスピニングリールを使うことが多いので、ラインマーカーが見やすいというのは、棚の把握やアタリがあった際の距離感をつかむうえで大きなアドバンテージになります。





リーダーについては、私はフロロカーボン製を推しています。
ショックリーダー [フロロカーボン]の12lbをひとつ持っていれば十分です。
高価な仕掛けをたくさん買うよりも、このリーダーだけで完成するシンプルな逆ダンをおすすめします。
逆ダンで十分、というより逆ダンが一番釣れると思っています。





逆ダンではメインのリーダーは3~4ヒロ(約4.5~6m)取ります。
使っていくうちにだんだん短くなっていく感じです。あまり長くすると潮受けしてしまうので要注意です。
捨て糸は1ヒロから1ヒロ半(1.5m~2m強)くらい。これをジグヘッドから15~25cmのところで結節します。
メインのリーダー、捨て糸ともに3号をおすすめしています。
捨て糸の先端を使って、ユニノットでメインのリーダーに5、 6回巻いて、メインのリーダーの方はハーフヒッチを3、4回施す。これで枝スの部分の長さが調節できる逆ダンが完成します。
おすすめのジグヘッドやワームやオモリについて教えてください。



ジグヘッドは0.2g~0.9gを使い分けます。
太軸じゃないとダメです。細いとすぐ伸ばされたり、折られたりします。
ワームは基本的に2.5inchから3.5inchのリング系ワームが強いと感じています。
カラーはグロー系、黄色系、クリアが定番ですね。うちではグロー系、特に黄色いグローカラーの人気が高いですね。







オモリは、皆さん高価なものや特殊な形状のものを持ってくる方が多いのですが、私としてはそこまでこだわる必要はないと思っています。
ナス型オモリ、六角オモリで十分です。
普通のもので問題ありません。湾外での使用を前提にした重さは20号から30号です。
バチコンの基本釣法は「ゼロテン」と「底トントン」
F-CLOUD雲丸さんでのバチコン基本釣法を教えてください。



うちでやっているバチコンの基本的な釣り方は「ゼロテン」と呼ばれる釣り方です。
東京湾や大阪湾でも主流になっていると思います。
オモリを底につけてオモリの重さを感じるか感じないか程度に、ラインを張ったり緩めたりするのが基本動作です。
ワームのジグヘッドの重さだけで魚を誘います。





ワームとジグヘッドだけでのアピール力は小さいので、ときおりオモリで底を叩くアクションも加えてアピールもします。
いわゆる「底トントン」と呼ばれる釣り方です。
アタリがなければ大きく移動させたり、5mほど巻き上げたりすることもありますが、基本的には底付近でゆっくりと誘います。
アジからのバイトの捉え方とアワせ方
バイトはどんな感じで出ることが多いのですか?



バチコンでは「コツン」という小さなアタリが出ることが多いですね。
アタリがあったら、ゆっくりハンドルを巻いてあげるくらいの巻きアワセがおすすめです。
なるべく「急」のつく動作はしないのが肝心です。
車で例えるなら、雪道での運転。急ハンドル、急ブレーキは厳禁です。大きくバシッと動かすような動作は避けた方が良いですね。





釣り人としてはバシッと合わせるのが気持ちいいんですけどね。
アタリがあったら、まずは軽くリールを巻いて「巻きアワセ」する。
それでアジが持っていったら、そこで大きくアワせるくらいのほうがいいですね。
こうすることで、確実にハリ先をアジに掛けてからアワせることができるので釣果アップに繋がります。
大きくアワせてしまうとワームもズレちゃいます。
バシッとアワせてワームがずれ、それで掛からなかったら次のバイトチャンスがなくなってしまいます。
ワームがずれてしまうとアタリが遠のく大きな原因になります。
しばらくアタリがないなと思って巻き上げてみたら、ワームが曲がっていたということはよくあることです。
ワームは常にまっすぐ刺すことを心がけてください。これはバチコンの基本中の基本です。





バチコンは、最初に難しく考えすぎると楽しめなくなってしまうかもしれません。
まずは「仕掛けを沈めて、底をトントンしていたら釣れちゃうよ!」くらいの気持ちで気軽に始めてみるのが良いと思いますよ。
雲船長のバチコンタックル
雲船長のバチコン用タックルデータをご紹介。
タックル | 詳細 |
---|---|
ロッド | ジークラック/ 泥棒竿スパイダー S68UL、S603L(スピニング)、B610UL、B603L(ベイト) |
リール | シマノ/ エクスセンスLB C3000MPG(スピニング) ピュアフィッシング/ MAX DLC(ベイト) |
メインライン | 【バリバス】 イカメタル マックスパワーPE X9 0.6号 |
ショックリーダー | 【バリバス】 ショックリーダー [フロロカーボン] 12lb |
ジグヘッド | ジークラック/ ギガアジフック ヤリエ/ アジメバガチヘッド |
ワーム | ジークラック/ピクピクピンテール、ウネウネスティック ジャッカル/ペケリング クレイジーオーシャン/海毛虫 レジットデザイン/スクアド スイスイGIGA |


取材協力
福井県・小浜新港「F-CLOUD雲丸」

