カンパチ泳がせ釣り徹底ガイド|齋藤裕紀が語る、大型カンパチ狙いのタックル&仕掛けとテクニック

東シナ海に浮かぶ絶海の孤島・男女群島。

秘境と呼ばれるアングラー垂涎のこの海で、バリバスフィールドスタッフであり、遊漁船・サンライズのスタッフでもある齋藤裕紀さんが、泳がせ釣りで大型カンパチに挑んだ。

ここでは、30kgオーバーカンパチを見事釣り上げた齋藤さんが使用したタックルや仕掛け、そして釣り方を解説する。

目次

泳がせ釣り、そしてカンパチの魅力

SUNRISEをバックに、遊漁船サンライズで男女群島へと向かう。約5時間の船旅。まさに秘境だ。

まずは泳がせ釣りの魅力や、今回のターゲットであるカンパチ釣りの魅力について聞いた。

泳がせ釣りというのはルアーゲームとは違い、基本的に魚やイカなど生きたエサを使う釣りですが、その魅力を教えてください。

齋藤裕紀

フィッシュイーターが普段食べているであろうエサを、眼の前に落とす――。

それは一番効率のいい釣り方ともいえますし、自然界の食物連鎖を利用した、ごく自然な釣り方であるといえると思います。

自らが落としたエサがカンパチやクエなどに追われ、逃げ惑う様子が手元に伝わって来る。

このエサが逃げている感覚が手に伝わるというのが泳がせ釣りの大きな魅力ですね。

「逃げてる、逃げてる!」となったときのドキドキ感。

そして、自分の仕掛けの周囲には、とんでもないサイズのカンパチやクエがいるかもしれないという妄想。これがたまらないです。

キャスティングゲームでいうと、ナブラを追っている瞬間と似たような感覚だと思います。

次に、カンパチという魚の魅力を教えてください。

齋藤裕紀

カンパチの魅力といえば、何といってもやっぱり引きの強さですね。

カンパチは根ズレする魚。それを根で釣るんです。

カンパチが有利なポジションからファイトがスタートするので、どれだけ早く底を切ることができるか。どれだけ早く巻くことができるか。

その攻防がいきなり始まるわけです。そのスリル感がたまらないですね。

タックルも強いし、糸も太くて強い。まさに力対力の真っ向勝負。ある意味究極の釣りだな、と思います。

“男と女が群れる島”男女群島の特徴と魅力

長崎県五島列島から西へ約60km。東シナ海に浮かぶ絶海の孤島・男女群島。2024年には64kgというサンライズ男女群島記録のカンパチが釣り上げられている。

次に、男女群島の概要や魅力について、サンライズの田代誠一郎船長に聞いた。

男女群島の概要やポイントの特徴を教えてください。

田代誠一郎

“男と女が群れる島”と書いて男女群島です。携帯の電波も通じません。

このことは絶対に恋人やパートナーには言わないほうがいいですよ(笑)

それはさておき、男女群島はまさに絶海の孤島です。人は住んでいません。無人島です。呼子からは片道5時間かかります。

“夢がある”とよく言われますが、案外夢を裏切る島として釣り人たちには有名ですね。期待を裏切る男女群島です(笑)。

なぜなら、“絶海の孤島=凄く釣れる”というイメージが強いと思いますが、意外と釣れない日も多いです。

基本船中泊するので、行ける日も限られてしまいます。

ただ、当たるととんでもなく当たる。

その当たりを味わった人はここの虜になってしまいます。爆発力は凄いですね。

泳がせ釣りのポイントの水深は150mから30mで、地形はフォークのような形をしているところも多く、“根掛かり群島”とも呼ばれるほど根はザクザクです。

男女群島におけるカンパチ泳がせ釣りのシーズンを教えてください。

田代誠一郎

男女群島におけるカンパチの泳がせ釣りのシーズンは、年によっても異なりますが、例年3〜11月頃です。

アベレージサイズは15kgぐらいで、20kgオーバーは割と釣れます。

男女群島でのサンライズ記録は2024年に釣れた64kgで、2024年は50kgオーバーが4本上がっています。

もちろん、上がらない魚もたくさんいます。

それぐらい強烈なインパクトがある島で、何回行っても飽きないですね。

男女群島に行って、帰るときにはもうまた男女群島に行きたいな、って思います。なにか不思議な魅力がありますね。

相手は50kg、60kgというカンパチ。次に来る魚が一生に一度の大物かもしれないのだ。タックル選び、そして仕掛け作りには万全を期したい。

カンパチの泳がせ釣りの仕掛けとタックルの選び方

50kgオーバー、さらには60kgオーバーという大型カンパチが狙える男女群島。釣り人にとっては魅力いっぱいの、まさに憧れの秘境だ。

そんな海域ではどのようなタックルや仕掛けで臨めばよいのか、齋藤さんに教えてもらおう。

ハリスはバリバスのビッグゲームリーダーSMPナイロンの60〜80号(220〜250lb)を使用。しなやかなので仕掛けが作りやすく、エサの動きがいいという。

カンパチの泳がせ釣りで使用するタックルや仕掛けについてお聞きします。まずはハリスについて教えてください。

齋藤裕紀

ハリスは、バリバスのビッグゲームリーダーSMPナイロンの60〜80号(220〜250lb)を使っています。長さは1ヒロ半(1ヒロ=約1.5m)取っています。

このハリスはしなやかなので、エサの動きが非常にいいように思います。

カンパチは活きのいいエサのほうが圧倒的に食いがいいと感じていますので、この性能は泳がせ釣りにおいては重要な要素と感じています。

ハリスがしなやかなことのもうひとつのメリットは、仕掛けを作りやすいということです。

泳がせ釣りでは一回の釣行でかなりの数の仕掛けを使いますので、準備にかなりの時間を要します。

80号の太いハリスでも結びやすいというのは大変ありがたいです。準備の時間を大幅に減らすことができます。

そして、根ズレ=擦れに対しても非常に強いことも釣り人にとっては嬉しい性能ですね。

とくに男女群島は根がザクザクのポイントも多く、まさに根ズレとの戦いです。

カンパチはヒットすると根へと向かおうとします。その安心感が釣り人には心強いです。

さらに、このビッグゲームリーダーSMPナイロンには適度なクッション性があり、このことによってほんの一瞬ですがファイトの際に釣り人側に構える時間、準備する時間ができます。

ハリスがもう一本の竿の役割をしてくれるわけで、非常にファイトしやすかったです。

リーダーは何を使い、長さはどれぐらい取っていますか?

齋藤裕紀

リーダーは、ハリスと同じバリバス ビッグゲームリーダーSMPナイロンの60〜80号(220〜250lb)を使っています。長さは10mです。

10m取る理由は、男女群島はカケアガリの角度が非常に急なので、リーダーの長さが5mでは間に合わない、つまりPEラインが根ズレしてしまう可能性が高いんです。

5m、10m一気にカケアガることはよくあります。

極力リーダーを長めに取っておき、PEラインを守るという考え方です。

リーダーはハリスと同じバリバス ビッグゲームリーダーSMPナイロンの60〜80号(220〜250lb)を使用。PEラインを根ズレから保護するという意味で、長さは10m取っている。

PEラインの性能が泳がせ釣りの釣果を左右する

カンパチの泳がせ釣りにおける、道糸とハリの選び方について齋藤さんに聞いた。

道糸は何を使っていますか?

齋藤裕紀

泳がせ釣りでは、とくに男女群島は根掛かりのリスクが圧倒的に高いので、道糸の性能は非常に重要だと思っています。

私はバリバス アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9の12号を使っています。300m巻いています。

泳がせ釣りでは水切れがよく張りのある糸のほうが、糸フケが少なく底ダチが分かりやすいので、この糸一択です。

同様の理由でエサの挙動も明確に伝えてくれますし、アタリの感度もいいですね。

実は、泳がせ釣りにおいては、“エサの挙動が分かる”というのは非常に重要で、「エサの周囲にカンパチがいるな」とか、「エサが弱ってきたな」とか、道糸から水中の様々な情報を得る必要があります。

道糸の性能が、釣果を大きく左右すると言っても過言ではありません。

PEラインとリーダーの結束は、私はFGノット。これは各自が一番自信のある方法でいいと思います。

道糸のPEラインはアバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 12号を300m巻いている。水切れがよく張りがあるので、糸フケが出にくく、感度もいい。

ハリは何を使っていますか?

齋藤裕紀

ハリはスーパークエで、ハリの大きさは、エサの大きさによって25〜35号を使い分けています。

ハリを結ぶ際は坂本結びで、締まり切れ防止の強化チューブを入れています。

ハリとハリスの結びは坂本結び。結び目には強化チューブを入れて締まり切れを防止している。時合を逃さないためにも、仕掛けは船上で作るのではなく、できるだけあらかじめ用意しておくようにしたい。オモリも多めに用意。300号前後を使用する。

カンパチ泳がせ釣りの手順とエサ確保のポイント

カンパチ泳がせ釣りにおける手順とエサ確保のポイントについて、齋藤さんに聞いた。

泳がせ釣りの流れや手順を教えてください。

齋藤裕紀

泳がせ釣りは、生きた魚やイカなどのエサがなければ始まらない釣りです。

そこでまずは、そのエサを自分たちで釣って確保することから始まります。

今回のエサはムロアジやサバで、それらはサビキで釣ります。

サビキの性能は大変重要で、釣れるサビキと釣れないサビキの差は歴然。サビキなら何でもいいというわけではありません。

どのような物がいいかは、現場の船長やスタッフに聞いて購入するのがいいと思います。

エサが確保できたら、ハリにエサを付けて投入します。ここからようやく泳がせ釣りが始まるわけです。

いま釣ったムロアジやサバの下にそれらを狙うカンパチがいるわけですから、すぐに投入となることも多いです。

したがって、泳がせ釣りのタックルや仕掛けの準備はあらかじめしておいてください。

泳がせ釣りは、まずはサビキでエサとなる魚を釣ることから始まる。エサが確保できなければ泳がせ釣りは始められないのだ。
サビキは釣れる物と釣れない物の差は歴然。船長やスタッフにどのような物がいいか聞いてから購入するのがおすすめ。

エサはどのように付けますか?

齋藤裕紀

エサの付け方は目通しです。その理由はエサ持ちのよさ。

これにはふたつの意味があって、ひとつはエサへのダメージが少ないこと。もうひとつは、カンパチなどが捕食ミスしたとしても、エサが残りやすいからです。

エサが抜かれて完全になくなってしまうよりは、残っていたほうがチャンスはあるということです。

ハリは目通しという方法でつける。エサが十分に確保できた場合は鼻掛けもアリ。素早く付けられるので、チャンスを逃さない。

仕掛け投入の際の注意点はありますか?

齋藤裕紀

投入は、エサ→オモリの順番です。

仕掛けを落とす際は、船長からアナウンスがあった水深をしっかりと意識して、オモリ着底の準備をします。

仕掛けを落とす際は、私はドラグのプリセットを利用して、着底する少し前になったら少しずつ締めていき、着底したらプリセットを締め込んでドラグを入れるようにしています。

こうすることで余分な糸フケも出にくくなり、着底時のバックラッシュも防ぐことができます。

ドラグの設定し忘れもなくなります。

仕掛け落下中は忙しくなりますが、道具の性能を最大限引き出して釣りをするよう心がけています。

オモリ着底の瞬間は最大のチャンスタイム。仕掛け落下中の違和感やアタリにも神経を集中したい。

泳がせ釣りのタナの取り方と根掛かり回避方法

無事投入が完了し、オモリが海底に着いたら、そこからカンパチが泳いでいるところ(タナ)を探っていく。

タナは海底から何メートルに設定しますか? また、誘いは何か行っていますか?

齋藤裕紀

オモリが海底に着いたら、糸フケを取って3〜5m上げてアタリを待ちます。

アタリがなければ再び底を取ってタナを取り直しますが、このときそのままリールをフリーにして着底させると、道糸は斜めになっていることが多く、船が流れて行く方向はどんどん浅くなるので、根掛かりしやすくなります。

そのときはいったん5〜10mほど巻き上げて、できるだけ道糸が船に対して垂直になるようにしてから落としてやるとよいでしょう。

こうすることで、根掛かりのリスクは圧倒的に減らすことができます。

また、この動作が誘いにもなります。

船長が言う水深と、道糸のマーキングが示す水深があまりにも違い過ぎていれば、糸フケがかなり出ていることになります。

とくに潮の流れの速いときは根掛かりしやすいので、こまめな底取りを心がけていただきたいと思います。

このようにして、海底の起伏に合わせて仕掛けをトレースしていければ理想的です。

タナは海底から3〜5m。こまめに底取りを繰り返し、海底の起伏に合わせて仕掛けをトレースしていく。

根掛かり群島というほど根掛かりが多いそうですが、その他にも極力根掛かりさせないようにする方法はありますか?

齋藤裕紀

男女群島はとくに根掛かりに注意が必要ですので、前述したこまめな底取り以外にも、オモリと海底との距離感を常に把握することも大切です。

手元に伝わる感触が魚のアタリなのか、根なのかも分かると、根掛かりしづらくなります。

根掛かりすればハリスやリーダー、さらには道糸に傷がつくことになり、そうなると次の流しに投入できなくなる可能性があります。

魚にもプレッシャーが入ってしまいます。

何一つとしていいことはないので、できるだけ根掛かりはさせないよう気を付けてください。

泳がせ釣りのアワセのタイミングとファイトのコツ

泳がせ釣りにおけるアワセとファイトのコツを、齋藤さんに聞いてみた。

アワセのタイミングとファイトのコツを教えてください。

齋藤裕紀

アワセのタイミングは、私は竿が完全に海面に刺さるまで待ちます。

そこまでググッと持っていってから、しっかりとアワセを入れるようにしています。

アワセが決まったら、とにかくリールを巻けるだけ巻いて、できるだけ早く根を切るよう心がけます。

ドラグは私はかなり強め、フルまで入れるぐらいに設定しています。

道糸は12号、ハリスも80号と太めなので、“走らせない”“完全に止める”ファイトをしています。

根に行かれたら終わり。“走らせない”“完全に止める”ファイトスタイルの齋藤さん。まさにガチンコ、力対力の真っ向勝負だ。

撮影を終えての感想と田代船長からのアドバイス

見事30kgオーバーのカンパチを釣り上げた齋藤さん。今回はアングラーとして男女群島のカンパチ泳がせ釣りに挑んだわけだが、その感想を聞いた。

撮影を終えて、いかがでしたか?

齋藤裕紀

久しぶりにアングラーとして男女群島で釣りをさせていただきましたが、お客様をサポートしているだけでもドキドキしますが自分で竿を持つとその比ではないほどにドキドキしました。

やっぱりカンパチは強いですね。

男女群島は50kgオーバー、60kgオーバーのカンパチが生息している海域ですので、夢があります。

男女群島は島自体もカッコいいですし、海の青さ、潮の速さ、どれを取っても本当に夢の海域だな、憧れの地なんだな、と思いました。

そこで釣りができるというのは、本当に幸せな時間でした。

エサのムロアジやサバを見るだけでもデカいと思うのに、それを食ってくるんですからね。

自然の強さ、逞しさを感じます。夢がありますね。

30kgオーバーを筆頭に、20kgオーバーもキャッチした齋藤さん。タグを打ち、素早くリリースする。
水深が浅いので、30kgオーバーのカンパチもリリース可能。元気に戻って行った。この海では60kgオーバーが出ている。
30kgではまだその半分。まだまだ大きく育つ。
見事30kgオーバーをキャッチし、撮影は大成功となった。齋藤さんが田代船長とグータッチしようとしたところ、「まだまだだな」と言わんばかりに田代船長はスルー。船はサンライズ。ここは男女群島なのだ。

最後に、田代船長から、男女群島のカンパチ泳がせ釣りに挑戦するアングラーにアドバイスをお願いします。

田代誠一郎

ありきたりな事柄ですけど、やっぱり“いかに時合を逃さないで釣るか”ですね。それが大きなキーワードになります。

その時合を逃さないようにするためにはどうしたらいいかというと、やはり“準備”です。その一言に尽きると思います。

大事なときに仕掛けを作っていたり、ラインシステムを組んでいたりしては、釣れる魚も釣れません。

一番いいタイミングのときに、確実にエサを落とせるようにしておきたいですね。

魚が掛かったあとのことも考えておくことが大切で、ラインブレイクしないようしっかりとドラグを調整しているか、常にチェックしてください。

案外根掛かりさせたらドラグの設定を変えてしまう人は多いので、とくに根掛かり後は要注意です。

何か一つでもミスすれば、とくに魚が大型になればなるほど絶対に上がって来ません。

頭の中でとにかくいろんなことをもの凄くシミュレーションして、抜け目なく準備しておく必要があります。

常に自分のなかでパーフェクトと思われることをすべてやっておくようにしましょう。これができていない人が非常に多いです。

掛かる魚のサイズは60kgや70kgです。とくにドラグ調整ミスは非常に多い気がしますね。

いくら魚影が濃い男女群島といっても、デカい魚が釣れる時間は限られています。

行くのに5時間かかりますので、その間にバッチリと準備をしておいていただきたいです。

齋藤裕紀使用 泳がせカンパチ用タックルデータ

齋藤裕紀さんが今回の釣行で使用していたタックルのデータをご紹介する。

タックル詳細
竿シマノ/
チェルマーレHH170
リールシマノ/
タリカ20
ライン【バリバス】
アバニ ジギング10×10マックスパワーPE X9 12号
リーダー【バリバス】
ビッグゲームリーダーSMPナイロン
60〜80号(220〜250lb)10m
ハリス【バリバス】
ビッグゲームリーダーSMPナイロン
60〜80号(220〜250lb)/1ヒロ半
ハリオーナー・スーパークエ 25〜35号
オモリ300号前後
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