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フライ 吉田 俊彦

激戦区での超ショートヘッドという選択肢

さて今回はVARIVASフライラインを使ったちょっとした裏ワザのフライフィッシングを公開します。それは本来ダブルハンドのスペイキャスティング用に創られたスペイティップをシングルハンドの4.5mのシューティングヘッドとして使った超実践的な釣り方です。そしてこれからお知らせするシステムは特別なロッドやリールなどなくてもバックスペースの取りにくい湖や管理釣り場で底を徘徊する大物を狙うことができるラインシステムなのです。使用するタックルは皆さんがお持ちの#5から#8程度のシングルハンドロッドで十分フルラインのシンキングラインに匹敵する距離を投げることが可能です。
静かに釣りたい時、私がよく使用している組み合わせは#5のタックルならスペイティップ#7/8のINT.とT3。同じスペイティップ#7/8でもT6とT8は一番手あげて#6のタックルで使っています。また飛距離を重視する場合は#8のロッドに#9/10を使っています。これはあくまでも私がフィールドでの実践から学んだ裏ワザですから、皆さんの練習と独自の工夫次第でもっとライトなタックルとの組み合わせも十分に可能だと思います。
実はこのスペイティップをヘッドとして使うという発想のヒントはお客様の言葉がきっかけでした。2年前のパシフィコ横浜でのフィッシングショーでのこと。私がエリアで有効なストリーマーのタイイングデモをしていると展示してあったスペイティップをご覧になった一人のお客様が「おお、バリバスでもシューティングヘッド出すんですね!」とおっしゃいました。私はこの商品がスペイラインの先端につなげるスペイキャスティング用に設計されたティップであることを説明しました。しかし「確かにこれはシングル用の超ショート(約4m50cm)のヘッドとして使うことができるかもしれないですね。今度試してみます。」と付け加えました。そして私のフィールドでの試行錯誤が始まったのです。

スペイティップをシングルハンド用のシューティングヘッドに転用した場合、一番の問題点はフライがターンオーバーし難いという点です。抵抗の少ない細いランニングラインを使用するほどその傾向は顕著になります。最初試しに#8のロッドで#9~10・T6のスペイティップを軽くシュートしてみると30mも弾丸のように飛んでいき、フライは手前にある状態で水面に落下しバシャンと石を投げ込んだような波紋が広がりました。距離が出てもこれでは釣れる魚も逃げていきますよね。
そこでモノフィラのランニングラインの代わりに2番のフローティングラインをつないでみると、飛距離は落ちるもののスルスルと良い感じで飛んでいき綺麗にターンオーバーさせることができました。近くの川越水上公園のプールでテストしてみると20mほど先にあるマスの集団を散らさずにたった2回のフォルスキャストで狙えました。その後ダークグリーンのチェコニンフで入れ食い状態になりこのシステムの実践での有用性を確信したのです。
実釣でフォルスキャストの回数を減らしコンスタントに中距離を投げることは様々なメリットがあります。まず魚が驚かないこと。そして風の影響も受けにくいのでライントラブルも減り結果的にフライを水中に置く時間を長くとれるのです。このメリットは管理釣り場だけでなくバックスペースの制約や風に悩まされることの多い芦ノ湖や本栖湖、中禅寺湖などの自然のフィールドでこそ発揮されました。そのなかでもひときわ熱狂的マニアが多く日本のルアーフライの聖地と言われる日光の中禅寺湖の国道側の岸からの釣りを例に使い易い超ショートヘッドシステムの具体例を紹介しましょう。

中禅寺湖は東日本大震災以降、現在もマス類のすべてがキャッチ&リリースのレギュレーションになっているため決して魚は少なくありません。フライの対象魚もホンマス、ブラウン、レインボー、レイクと豊富です。しかし依然として中禅寺湖で岸からフライで魚を釣るのは難しいとされています。

何故なのでしょうか。まず第一に水位の増減によってポイントが変動し、増水時はバックスペースが取れないことです。第二の理由としてまる2シーズンリリースを繰り返された結果スレた利口な魚も増えたことがあります。スレた魚はラインに敏感になり、不用意に水面を叩いてしまうとすぐに移動してしまいます。そのような状況下では無理にヘビータックルを振り回すよりもライトライン・ライトタックルで静かに釣ることができればヒットの確率は確実に増加するでしょう。私は#6番9フィートのロッドに#7~8番のスペイテップ、リーダーは杉坂隆久氏考案のテーパードリーダー [レイクリトリーブ フロロカーボン]を使用しています。

さて、この超ショートヘッドシステムでは後方にだいたい7メートルの空間が確保できれば20メートルは射程圏内です。でもいざ岸から大物を狙うとなると少しでも距離が欲しくなるのが人情です。昨年そんな私の悩みを一気に解消できる素晴らしいランニングラインが発売され射程が5メートルほど伸びました。それは2ウェイ マスター ランニングラインです。

飛距離もさることながらこのランニングラインの良いところは基本構造がフローティングラインと同じなのでハンドリングが抜群でアワセ損ないが激減したことです。このシステムでは迷わずにスローシンキングの側をスペイティップに繋いでください。そしてキャスト時のコツがひとつだけあります。フィニッシュでは「ロッドを押し出すようにタメを使う」ことです。ロッドティップよりバッド部分の反発を使うことでループが少しワイドになりテーリングなどのライントラブルを解消することができるでしょう。

もしあなたが中禅寺湖のレイクトラウトを釣ってみたいなら、ストリーマーやニンフで底をトレースしなければなりません。そんな時キールのバーブレスフックは根掛かりが少なくとても実用的です。もしも根掛かりで針先が鈍くなってもシャープナーで砥ぎ直すことが容易です。大物こそ一発でベントまで貫通させなければ勝負になりません。レイクは基本的にイワナの仲間ですが、顔つきがちょっと爬虫類的で独特な雰囲気をもっています。


小型のうちはライズすることもありますが大型になればなるほど底中心の食性に変化していく魚のようです。
どこか神秘的な湖のトラウトたちをあなたもこの超ショートヘッドシステムで狙ってみてはいかがでしょうか。

[フライレシピ]
サスペンド・スイマー 
フック:2510WB #8
ヘッド:スチロールボール
ボディ:ラビット・オリーブ
テール:マラブー・オリーブ
リブ  コパーワ

過去のフィールドレポート記事中で掲載している製品は、
廃盤品として現在取り扱いを終了している場合がございますので予めご了承ください。